|
糸井 |
今日は、テーマがございまして。
|
赤瀬川 |
はい。
|
|
糸井 |
「お金」なんですけど‥‥。
|
赤瀬川 |
ええ、(FAXに)書いてあったね。
|
糸井 |
こんど、6月6日の「ほぼ日」創刊記念の日に
矢沢永吉という人と
日経ホールで、トークイベントをするんです。
|
赤瀬川 |
その‥‥「お金」についての。
|
糸井 |
はい、その日をひとつのピークにしつつ、
「お金」について考える特集を
「ほぼ日」の創刊12周年の記念企画として
やっていこうと思ってるんです。
|
赤瀬川 |
ええ、ええ。
|
糸井 |
で、そもそもの話をしますと、
ぼく自身「お金に頓着しない」って「フリ」を
していたなぁ‥‥ということに、
あるときに、ふと、気がついたことがあって。
|
|
赤瀬川 |
フリ。‥‥いつごろの話?
|
糸井 |
40代に入ったくらい、だと思います。
それまでは
「オレはカネに頓着しない男だ」って
無理やり思い込んでたんですよ。
|
赤瀬川 |
はい、ええ。
|
糸井 |
と同時に「スケベ!」って言われようが
「バカ!」って言われようが
平気なんだけれども、
「ケチ!」って言われるのだけは
イヤだなってことにも、気づいたんです。
|
赤瀬川 |
うん、ケチって言われるのはイヤだよね。
|
|
糸井 |
ぼくがまだフリーのころの話ですけど、
請求書一枚出すのにも、悩んじゃうわけです。
「自分の仕事をいくらだと思ってるって、
思われるんだろう」みたいな。
|
赤瀬川 |
「ケチ」の反対側には「見栄」があるんだよね。
|
|
糸井 |
そうそう、そうなんですよ。
で、誰も見てないところで裸になるみたいにして
ひとりで考えてみたら、
結局、ぼくは「お金」が好きだし、
同時に「お金」を怖がってたんじゃないかと。
|
赤瀬川 |
糸井さんが40代っていうと、いつごろかな。
|
糸井 |
時代としては、約20年前です。
1990年ぐらいですね、バブルのころ。
|
赤瀬川 |
ああ‥‥。
|
糸井 |
赤瀬川さんが「路上観察学会」をはじめて
ちょっと経ったくらいじゃないですかね。
※路上観察学会
1986年、赤瀬川さんを中心に結成された、
「路上」を観察し、写真に収めて鑑賞などする団体。
メンバーは、南伸坊さん、建築史家の藤森照信さん、
筑摩書房の編集者・松田哲夫さんなど。
|
赤瀬川 |
そうかもしれない。
|
糸井 |
そのころから「お金」についてきちんと考えないと、
なにか違ってきちゃうぞって、思いはじめまして。
|
赤瀬川 |
うん‥‥うん。
|
糸井 |
つまり、お金のことから「逃げて」いたんです。
そこで、
「こういうとき、オレはケチなんだな」とか、
「こういうとき、
お金のことはどうでもいいのか」とか、
そのつどそのつど、
なるべく正直に、考えるようにしてきたんです。
|
|
赤瀬川 |
うん‥‥うん。
|
糸井 |
そんなときに、10年くらい前かなぁ、
邱永漢(きゅうえいかん)という人に、会ったんです。
|
赤瀬川 |
ああ、はい。邱永漢さんね。
|
糸井 |
この人、「お金の神様」と言われるだけあって、
話を聞いてると、本当におもしろいんです。
まず、お金のことを考えてきた「時間」が長いし、
それも、切迫したところで、
本気で「お金」を考えてきている人ですから。
|
赤瀬川 |
その人の言葉でね、こういうのが、あったでしょう。
「お金っていうのは寂しがり屋だから、
大勢いるところに、集まりたがるんですよ」って。
あれ、真実だなあと思いましたね。くやしいけど(笑)。
|
|
糸井 |
ええ、で、そのあたりから
自分ひとりで、つまりフリーでやる仕事じゃなくて、
「ほぼ日」というチームプレイに
仕事の軸が、シフトしていったんです。
そうすると「オレは金なんて、要らないよ」なんて
自分ではどんなに見栄を張れても、
チームの仲間に
同じことを言わせるわけには、いかなくなる。
|
赤瀬川 |
そうでしょうねぇ。
|
糸井 |
ますます、
お金に対して「どう考えたらいいか」の「練習」を、
するようになってきたんですね。
|
赤瀬川 |
なるほどねぇ。
|
糸井 |
そういう目で、まわりを見渡してみると
「お金というものは、ちょっとでも多くほしいんだ」とか、
「持ってるやつはいいよ、要らないだなんて言えて」とか、
そういう言いかたばっかりで。
|
赤瀬川 |
うーん、それはまぁ‥‥どうしてもというか。
|
糸井 |
その一方で、
「お金じゃないよ」って簡単に言いすぎる人も
これまた多かったんですよ。
|
赤瀬川 |
どっちも極端なんでしょうね。
|
糸井 |
そう、どっちも違うって思ったんです。
そこで、12周年といういい機会でもあるし、
あらためて「お金」について
すこし「ぐずぐず」考えたいなぁと思って‥‥
赤瀬川さんに、ご足労いただいたわけなんです。
|
赤瀬川 |
ぼくでいいのかな?(笑)
|
|
糸井 |
だって、赤瀬川さんは、邱永漢さんとかとは
また別の方面から
ずっと「お金」を見つめてきた人ですから。
|
赤瀬川 |
まぁ、そうかもしれない。
|
糸井 |
あの「千円札を印刷」して起訴された
有名な「千円札裁判」の話は
おいおい、出てくると思うんですけど、
いちばん「赤瀬川さん」で思い出す「お金の話」は、
(南)伸坊に聞いた‥‥。
|
赤瀬川 |
んー‥‥と?
|
|
糸井 |
赤瀬川さんが
「お金をばら撒きながら歩いてた」って話。
|
赤瀬川 |
ああ。 |
|
|
<つづきます!> |