MONEY IS... Vol.00 ほぼ日刊イトイ新聞12周年記念企画
『お金のことを、あえて。』 糸井重里によるイントロダクション。
 
最終話 グッドニュースを。
まさにいま再流行中のドラッカーが、 「利益は手段であって目的ではない」 ということを言ってますよね。
最近、このことばが、自分にとってすごく 重みをもって感じられるようになってきました。
利益が目的だっていう形を取ると 組織の結束は、たぶん、固くなるんですよ。
売上、利益、営利、 いろんな呼び名になるかもしれませんけど、 お金を増やすことをいちばんの目的にするのは 企業にとって非常にわかりやすいことだと思いますが、 利益自体を目的にするのは違うんだと、 ドラッカーは言ってるんですね。
つまり、目的っていうのは、 もっと違うところにあるのだと。
人間がやりたいこととか、 人がやってほしいこととか、 社会に望まれてることというのが、 まさに目的というものである、と。 あなたが得たその利益を手段にして、 目的を実現していくんだろう? というふうに問いかけたわけです。
その意味では、当たり前のことですけど、 ドラッカーっていう人は、 お金についてちゃんと考えた人なんです。
お金が欲しい、お金を稼ぎたいって、 始終、みんなが言ってるのを コンサルとして聞きながら、 「そこが目的じゃない」っていうことに 辿りついているわけですから、 やっぱりすごい人だなあと思うんですね。
そんなことばを手に入れるとね、 お金だと思っていたぼくらの目的というのは いったいなんだったのか。
あるいは、お金じゃないとは思うけれども いったんお金だとか、 仮にお金としようだとか言ってきた 現代に生きているぼくらの考え方というのは、 目的を失ってたなぁ、というふうに気がつくんです。
ですから、ほぼ日刊イトイ新聞が 12周年をむかえるこの2010年に、 あらためて「お金」をテーマにするということは、 お金を考えることであると同時に ぼくたちの目的というものについて 本気で考えていくということでもあります。
組織のトップとして固い言い方をすれば、 自分たちが生きる目的とはなにか。 あるいは組織が生きていく目的とはなにか。
自分たちはなにをしたくてがんばるんだ っていうことを考えることと、 お金という魔物について、 ちゃんと距離を置いてじっと見つめることで、 お金で攻撃されても負けない、 ゆるがない資質のようなものを獲得できたら、 チームも自分も強くなるだろうなぁと思って、 そんなテーマを考えたんです。
そして、ぼくらがお金に取り組む象徴として、 創刊記念日の6月6日に、 日経ホールで矢沢永吉さんと対談をします。 これは、ユーストリームをつかって生中継して、 テレビやツイッターなんかもどんどん入れ込んで メディアをごちゃごちゃにしようと思ってます。
お客さんの数は、最大で600人くらいです。 このイベントでも利益を出すことが 最終目的ではありません。 じゃあ、なんだろうと考えていたときに、 ひょいと出てきたキーワードが 「グッドニュース」ということばでした。
このイベントがあること自体が 他の人に触れまわりたくなるような 「グッドニュース」であってほしい。 だからこそ、こういうことを 企画しているんじゃないかと思うんです。  だから、お金を払って会場に入れる人は 600人しかいないかもしれないけれど、 600人の向こう側にいる何千人、何万人の人に この6月6日のイベントが 「グッドニュース」として伝わってほしい。 もちろん、赤字でいいなんて絶対思いませんけど、 目的は、「グッドニュース」の伝播のほうです。
「日経」という、いわば、お金を考えることについて メインストリーム側にいる会社と、 「ほぼ日刊イトイ新聞」という お金についてのサブカルチャー側にいるぼくら、 IT時代のガラパゴスみたいなぼくらが、 共同して「お金」についてのイベントをやる。
そこで、矢沢永吉っていう意外性のあるBOSSが 素人社長として出てきて、ぼくと対談する。
それ全体の「なにそれ?」っていう組み合わせのなかに、 もしかしたら、みんなが行き詰まってることに対しての ちいさなヒントがあるかもしれない。 その「グッドニュース」な成分を、 このイベントで人に伝えていきたいなと思っています。
最後に、ぐるっと戻って、もう一度、 12周年をむかえるほぼ日刊イトイ新聞の話になりますが、 ぼくらが取り組む重要な仕事のかたちを こんなふうに言ってもいいんじゃないかと思う。 ぼくらにとって、目的というものも、 こんなことなのかもしれない。
「みんなもよろこぶ(ぼくらのうれしい)  グッドニュースを生みだし実現することです」
おわり
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2010-05-19-WED
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN