みうらじゅんに訊け! お金篇  ことあるごとに みうらじゅんさんのもとへ 何かを訊きに行く「ほぼ日」ですが、 今回のテーマは、お金です。 笑っているつもりが役に立つ‥‥かもしれない。 もしかしたら、ほんとのほんとはそうなのかも、 と思えてくるような すばらしいみうらさんの「お金論」、 短期集中毎日連載です!
第7回 人にはなぜ名前があるのか?

ほぼ日 では、たとえば
ソフトバンク社長「孫交差点」とか‥‥。
みうら いいんじゃないでしょうか。
iPadとか売られたけども、
ほんとうはそれだけ払ってらっしゃって
みなさんに貢献してるんだ、
ということを言わないといけないと思います。
やっぱり、現在の状態だと、
「孫なのに損してねぇじゃねぇか」
ということになってしまうわけですよ。
得の部分ばっかり目立っちゃって
損が目立ってない。
ほぼ日 税金面をはじめ、いろんなことの損が‥‥。
みうら 人間て、ほんとうは
トントンなんですよ。
儲けてる人は何かしら取られてます。
それを、
「あいつ、儲けやがって!」
と言ってしまうのは、
損の部分を知らないからです。
突然金入ったやつは、
突然金が入ったぶん、
嫌な目に遭ってます。
ほぼ日 うーん、そうですね。
みうら 毎日、金髪の女の人と
キャデラックとかには乗ってません。
それこそ他人から
「金儲けやがって」と言われたり、
嫌なことは、きっと稼いだ分、ありますよ。
その「トントン」が見えない日本の社会に、
一石投じたいとぼくは思います。
ほぼ日 信号機に名前を入れる方式で、
まずは損を浮き彫りに‥‥。
‥‥みうらさん、年金は、
いまのシステムだと
若い世代がいまのお年寄りを支える、
という考え方になってるらしいんです。
みうら ええ。
ほぼ日 ですので、
「あのおじいさんを支えてるんだ」
ということが個人的にわかれば
いいんじゃないかと思うんですが‥‥。
みうら あ、そうです、そうです。
あの島根県のゴンザブロウさんは、
実はこの若者たちが
生活を見ています、とかね。
ほぼ日 そうそう、そうです。
みうら あの人のはいてるステテコは
この若者たちが買ってるんだ、っつったら、
そのおじいさんも、
「あっ、ありがたいなぁ、いまの若者は」
とおっしゃるでしょう。
いま、有機野菜の売り場の札に、
「私が育てました」と
丸く抜いた写真がついてたりしますけども、
そのゴンザブロウおじいさんだって、
若者たちの名前がびっちり入ったステテコを
着てもいいじゃなですか。
ほぼ日 は‥‥はははは。
みうら こんな名前の若者に
支えられて生きてるんだと思えば
ハリもありますよ。
ほぼ日 そうですね。
そうしたら、年金を収める若者も
やりがいが出てきます。
みうら その人たちは、若いときに
おじいさんを食わしてたという、
自負があるわけですから、
30ぐらいになったときに、
ゴンザブロウさんを
探してみようという気になります。
「生きてるかな、まだ」
なんて言ってね?
政府のどっかに電話したら、
「あ、それは島根県の○×さんですよ」
と、すぐにわかるシステムになってて。
ほぼ日 はい。
みうら 訪ねていって、生きてらしたら
うれしいじゃないですか。
「ぼくですよ、あんときのステテコ!」
「あーんたやったんかいな、
 1回もお礼できへんだけど悪かったなぁ」
というお話で、とてもいいと思います。
ほぼ日 ではあの「ねんきん特別便」も
自分のためじゃなくて、
記録をつなぐための郵便である、と。
みうら そうですね。
「誰々の税金だ」という
名前ぐらいは出てたほうがいいと思います。
ほぼ日 うーん、いまはちょっと
匿名化が進み過ぎてますね。
みうら 「個人情報、個人情報」言い過ぎててね。
そういうときにこそ、名前じゃないですか。
何のために人は
名前をつけられてるんですか、

というところですよ。
感謝されるためですよ。
あの人がやってくれたんだ、の
「あの人」のとこに
「タカハシ」と入れることによって
ぐっとよくなりますでしょ。
ほぼ日 おっしゃるとおりです。
しかしいまは、さきほどのお話と
ちょっと重なるんですが、
ご高齢のみなさんの
上手なお金の使い道がない、
とも言われていまして‥‥。
みうら そうでしょ。
ご老人のサークルとか、
あるのかもしれませんけども、
そういうところでは
大量にお金を使うノウハウ
教えてないと思います。
お手玉やりましょうとかいっても、
お手玉は、安いですよ。
100個買ってもぜんぜんいい。
色紙も、折ったりなさってるけど、
そうじゃなくてキャバクラ遊びとかね、
どすっと金がなくなる方法を、
みなさんご存じないんです。
ほぼ日 ああ、そこですか。
みうら それは、自分も知りませんでした。
知らないくせに
否定してはいけないと思ったので、
さきほども申し上げましたが、
ぼくはいっときキャバクラに行ってました。
そして「こんなになくなるんだ」
ということがわかりました。
ほぼ日 ははははは。
みうら それまでは、ただ
「いいじゃん、自分が楽しくて行ってんだから」
なんて思ってたけど、
あそこまでごっそりなくなるとは
思っていませんでした。
ですからみなさんも、あのように、
ごっそりお金を持っていっていただける場所を
知っとくべきだと思います。
セスナ機買ってとか、ヨット買えばいいとか、
そんなのはデカ過ぎてわかりません、
免許もないし。
ほぼ日 はい、はい。
みうら 免許がないと使えない、
ましてや、土地とか持つと、もめるんでしょ?
金使う場所、おじいさんは知らないんだから、
連れていってあげるのもまた、
ひとつの方法ですよね。
「ほらこんなになくなってますよ、おじいさん」
と。
ほぼ日 ‥‥ははは。
みうら みんな、自分の「好きなこと」ではもう
お金は使い切れないと思います。
そんなに好きなこと、残ってないでしょう?
「まあまあ楽しく」て、
「まあまあ好き」ぐらいのことで
びっくりするほど金がなくなる、
ということが
世の中にはありますからね。
「延長します?」と言われたら、
「はい」って言えばいいだけですよ?
「はい」「はい」「はい」「はい」
言ってれば、ごっそり金がなくなる。
そんな楽なシステムございません。
そういうことを、
若い人も痛い目に遭って
学んでいくといいと思いますし、
そういった、ごっそり使えるパンフレットなどを
作るべきだと思います。
ほぼ日 そうですね、お金の印刷が
消える前に‥‥。


それではみなさん、
本日の力強い動画を
おたのしみください。


また明日お会いしましょう。

(つづく)


2010-08-16-MON

HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN