葉っぱを お金に変えた人。  「いろどり」の横石知二さんから、グッドニュース。
第3回 横石さんはストーリーテラー。
糸井 これはぼくの印象なんですけど、
横石さんはお金のことを大事に思いながらも、
基本的にあまりご自分から
お金のことを話そうとはされせんよね。
横石 そうですね、
あんまり表に出したいとは思いません。
糸井 わかります。
でも、やっぱりね、すごいんですよ。
たぶん無意識なんだろうけど、
お金に対する「健康的なテクニック」が。
横石 そうですか。
糸井 なにせ、タヌキが葉っぱをお金に変えてる絵が、
町の入り口にあるんだから。
横石 はい、はい(笑)。
糸井 トンネルをくぐったら
あの絵があったんで、びっくりしたんですよ。

横石 あのタヌキは、ぼくがモデルなんだそうです。
糸井 それを最初に言っちゃったことは、
すごく後をらくにしましたよね?
横石 おっしゃるとおりです。
すごくらくになりました。
糸井 「あの絵を描いて」と言ったのは、
横石さんなんですか?
横石 いやいや、おばあちゃんたちが言ったんです。
糸井 おばあちゃんたちが!
横石 最初はぼくにお説教してたんですよ。
「葉っぱをお金に換えるのは、横石さん、
 タヌキかキツネの、おとぎ話だ」
「あんたは仕事を真面目にせにゃあかん」って。
そしたらある日‥‥あの絵を。
糸井 それはまた痛快な(笑)。
横石 びっくりしましたよ。
ぼくの顔を描いてる!(笑)
糸井 (笑)
横石 しかも町の入り口に。
糸井 いやぁ、肯定的にそれを描こうと思った
おばあちゃんたちの、素朴で率直な感性が、
ほんとに横石さんを
後で助けてくれましたよねぇ。
横石 助けてもらいました。
糸井 つまり、
「おばあちゃんを元気にしたいんです」
とかね、
「お金じゃありません!
 村を活性化させたいからやってるんです」
ということばっかりを盛んに言って、
あの絵がなかったとしたら‥‥。
今ごろは違う見方をされていたかもしれない。
横石 そうですね、もしかしたら。
糸井 だから、道具として上手にたのしく
お金を扱うことの意味っていうのが、
上勝を見てるとほんとうによくわかるんです。
──たとえば、
パン食い競争でね、
「パン」って書いてある紙がぶら下がってても
競技は成り立つかもしれないけど、
そこはやっぱり、
ほんもののパンじゃなきゃだめでしょ?
横石 それはそうですね(笑)。
糸井 生々しい物をぶら下げるから盛り上がるわけで。
つまり、
この「パン」に当たるものが、
「お金」っていうものだと。
横石 そうなんだと思います。
糸井 あとね、
横石さんは意識してるかどうかわからないけど、
登場人物とか、キャラクターとか、
ストーリー設定が上手なんですよ。
「人はこういう話が好きなんだ」
っていうのをわかっている気がする。
横石 そうでしょうか。
糸井 葉っぱのビジネスはFAXでも成り立ったのに、
かなり早い時期にパソコンでやりましたよね?
横石 ええ、そうでした。
糸井 あれは、
パソコンを入れなきゃだめなんです。
「おばあちゃんがパソコン」
というニュースにしないと。
横石さんは、そういう勘がいいんですよ。
横石 あれは、そうですね、勘でした。
そっちのほうがいいと思ったので。
糸井 じつはぼくも、
そういうことをやってるんですよ。
ぼくの場合は、自分の80代の母親に
パソコンを急に送ったんです。
で、「80代からのインターネット入門」
というコンテンツを始めました。
たしか10年以上前のことです。
横石 その時代に、80歳でインターネット。
糸井 はい。
誰がパソコンを始めてもニュースにならないけど、
80歳ならニュースになると思ったんです。
まあ、身内のことで恥ずかしいんですけど、
しばらく会ってない母親とのコミュニケーション
というテーマもぼくとしてはありました。
でも、ニュースになるのは、
「80歳でインターネット」だったんです。
横石 いいニュースですよね。
糸井 要は、「おもしろいじゃないか!」なんですよ。
たとえば、75歳の人が
「80代からのインターネット入門」を読んで、
「俺はまだまだ若いなあ」
って言ってくれたら、おもしろいですよね?
横石 おもしろいです。
糸井 横石さんがされている活動も、
けっこうそういうことが多いんですよ。
若い人を引きつける理由も、
ストーリーが魅力的だからじゃないでしょうか。
で、さらに今度はまた、
「若い人がやってきた!」
という物語が生まれてきている。
横石 たしかに、そういうのは好きですね。
糸井 好きですよねぇ。
横石 めちゃめちゃ好きです(笑)。
糸井 それはもう、
小説を書くのと同じですよ。
横石 そんな大層なことではないですけど(笑)。
なぜか好きですね、
そういうストーリーをつくるのは。
糸井 だから、横石さんがしていることは、
「マーケティング」じゃなくて、
「ストーリーテリング」なんですよねぇ。

(つづきます)
2010-06-14-MON
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