葉っぱを お金に変えた人。  「いろどり」の横石知二さんから、グッドニュース。
第9回 「異物」を入れる。
糸井 何か事業をはじめようと思ったら、
当然のこととして
「人」と「箱」が必要になりますよね。
横石 ええ、そうですね。
糸井 上勝ではまず、人は集まった。
次は箱。
箱っていうのは、お金が要りますよ。
だけど上勝でやるならば、
土地代はそれほど要らない‥‥?
横石 要らないですね。
まったくと言っていいほど要らないです。
糸井 そうすると、起業っていうことが
ふつうに考える難しさの
10分の1くらいでできちゃうんですか。
横石 もっと低いです。
東京にくらべれば、
100分の1とかじゃないでしょうか。
食費なんかは月に1万円かからないですよ。
ぜんぶおばちゃんがくれるから。
糸井 そうかぁ‥‥。
‥‥あれですね、
「都市部の会社が、
 事業のひとつを上勝で起業する」っていう、
ベンチャー村みたいなのは、ありますよ。
横石 ありますか。
糸井 あると思います。
うちからも誰かひとり行かせたいくらい。
横石 そうですか(笑)。
糸井 いや、どうしてぼくが
それを言いたいかっていうと、
そういうことが起きれば
違う種類の人が集まると思ったんです。
今の上勝にはきっと、
似ている若者が集まってますよね?
横石 あ、正解です。
糸井 自然の好きな。
横石 山が好き、田舎が好き、
人と関わることが好きなタイプですね。
みんな非常によく似てます。
糸井 それはもちろん悪いことじゃなくて
そうなるのは当然なんです。
でも、違うタイプと組み合わせるとね‥‥
またグンとおもしろくなりますよ。
横石 ああー。
糸井 うち(ほぼ日)は最近、意識的に
コラボレーションをやるようにしてるんです。
よそと組むことで
学んでいる最中なんですよ。
横石 組んで学ぶ。
糸井 ええ。
そうしないと中が変わらないから。
混成チームをつくって1個の仕事をすると、
勝手が違うことにぶつかります。
「わぁ、苦手だ。でも行くわ」
そこで学べるんですよ。
横石 なるほど。
糸井 あとは、互いのお客さんが重ると、
観客が増えます。
観客が増えれば、
自分たちを知らない人たちに向かって
伝えることの練習ができたり‥‥。
横石 見えてくるものがたくさんある。
糸井 ありますねぇ。
──ですから「いろどり」も、
今は無意識にその準備をしている季節
なのかもしれないですよね。
横石 そうかもしれないです。
次のステップは、きっとそこなんでしょう。
糸井 最初は、よく似た人たちが集まるんです。
横石 住み心地も、居心地もいいし。
糸井 そう。
で、やがて「上勝的な」
っていう言葉が言われるようになりますよね。
「それはちょっと上勝的じゃないな」とか。
うちの場合も「ほぼ日的」っていう言葉が
わりとよくつかわれているんですけど、
ぼくはそれが、邪魔なんです。
横石 そうなんですか?(笑)
糸井 まあ、いいんですけど、
あんまり言うべきじゃないよなぁと。
横石 わたしらも「上勝的」とか「上勝らしさ」とか、
たしかに言ってるかもしれない。
糸井 「それがぼくらの個性だから」っていうのは、
言いすぎないほうがいいんです。
いまのかたちで止めてしまいますから。
だからその意味でも、
意識的にコラボをしようと思ったんです。
横石 なるほど。
糸井 やっぱりなんかね、こう‥‥
違和感のあるもの、
「異物」を入れるっていうかね。
横石 異物を入れたほうがいいかもっていうのは
なんとなく感じていました。
でもそれがどういう人たちなのかは、
正直まだ見えてないんですねぇ。
糸井 うーん‥‥どういう人でしょう‥‥。
たぶん、あれですね、
「上勝のファンなんだけど、
 上勝ではない場所で一所懸命やってる人」
と考えを広げれば、いっぱいいますよね。
横石 ああー、はい。
糸井 たとえば、ぼくらだってそうじゃないですか。
ぼくの頭の中でやってることは、
都会でしか成り立たないんですよ。
でも、上勝ファンなんです。
だからこうして、やりとりはできる。
横石 やりとり、させてもらっています。
糸井 ですからやっぱり、
そういう人たちと出会うんじゃないでしょうか。
横石 なるほどねぇ。
糸井 あと、あれですよね?
上勝にやってきた若い人たちって
組むのが好きですよね?
横石 それはもう、あの子たちは、
すっごい好きですね。
そういうコミュニケーション能力が
高い子たちだと思います。
糸井 ああー、じゃあ、きっとね、
横石さん、近いうちに面倒くさいことを
注文されますよ。
横石 そうでしょうか(笑)。
糸井 「こういう人たちと組みましょう」って。
横石 そうか‥‥それはたのしみです(笑)。
  (つづきます)
2010-06-22-TUE
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