糸井 |
若者たちがやってきたニュースについて、
話を戻しましょう。
上勝はどうですか、50人の若者がやってきて。
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横石 |
変わってきましたねぇ。
ほんとうに実感が出てきました。
たった50人でも
町全体に与えている影響というか、
訴えてるものというのは、
すごく大きいものがありますね。
たった50人なのに。
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糸井 |
でも、その50人は、
みんなが見ている50人なんですよね。
だから、量で計れないなにかで、
戦えるというか、試合ができるというか‥‥。
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横石 |
そういう時代がきたと思います。
「量」とか「理論」ではない部分への
意識が育ってきたことが、
ぼくはものすごくうれしいんです。
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糸井 |
もしかしたら、あれですね。
この流れでいうと、
ほんとうに上勝だけで成り立つ部分が
どんどん増えていきますよね。
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横石 |
そうなんです。
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糸井 |
若い人たちそれぞれの
「技術」なり「思い」が、
成り立つようになるでしょう。
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横石 |
そこが変わってきました。
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糸井 |
あ、もうすでに始まってますか?
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横石 |
始まってます。
「起業」のムードが。
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糸井 |
そうかですかぁ。
うーん、おもしろいですねぇ。
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横石 |
こういうことが、
今の地方では、なかなか。
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糸井 |
ないですよ、なかなか。
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横石 |
ないですね。
ありがたいことです。
それぞれがちゃんと成立するまでには、
まだちょっと遠いとは思いますけれども。
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糸井 |
いや、でも、そんなに遠くないと思いますよ。
土地代はそんなにかからないし、
店を建てなくてもネットでもできますから。
だいいちあれでしょう、
子どもを作る能力がある人が来てますからね。
まず人口が増える。
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横石 |
ええ、増えています。
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糸井 |
子どもが生まれるという現実について、
町がどういうふうに受け入れるかとか、
託児所はどうする? とか。
そういうことを考えると、
町そのものが様々に
起業しやすい方向へ変わっていくはずですよね。
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横石 |
ええ、そこはたのしみな部分です。
──で、そうだ、糸井さん、
今年の小学生の入学者数が
17人だったんですよ!
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糸井 |
ほぉー、17人。
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横石 |
2000人の町で、
小学校の入学式に
17人の新入生がやってくるっていうのは、
これ、すごいことなんです。
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糸井 |
そうですか。
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横石 |
ふつうだったら、
2人とか3人の世界なんです。
そんな現象も出てきたんですよ。
17人の新入生が並んで‥‥。
うれしかったですねぇ。
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糸井 |
もう‥‥
たまんないですね、
またそんなグッドニュースを(笑)。
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横石 |
いやぁ(笑)、
ほんとに、よかったなぁと思って。
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糸井 |
すばらしいです。
──それから、あれですよね、
これは強く言っておきたいんですけど、
上勝にやって来た若い人たちはみんな、
来たくて来てますよね?
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横石 |
と、言いますと?
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糸井 |
若い人が田舎の町に入ってくるときって、
来たくて来たんじゃなくて、
しょうがなくやって来るケースも
すくなくはないじゃないですか。
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横石 |
ああー。
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糸井 |
しょうがなく来た人は、
前からいる人たちと、
いさかいも起こしやすいものですけど、
上勝ではきっとそれがないですよね?
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横石 |
ないです。
そう‥‥そうですね、
この子らはみんな、
上勝に「来たくて来た」子たちです。
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糸井 |
その違いは大きいと思いますよ。
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横石 |
ええ。
みんな、ほんと、
東京で生きていく選択肢もきちんとありながら、
自分の価値観で上勝を選んでくれてます。
大学でトップクラスだったような子が、
そんな子が、来るんですねぇ。
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糸井 |
いいですねぇ。
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横石 |
今まではそんなこと、なかったですから。
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糸井 |
流通したんですよ、人が。
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横石 |
ああ‥‥。
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糸井 |
下半身のあるお金のように
どっしりとした若い人が、
上勝の町に巡ってきたんでしょうね。
(つづきます) |