本日はデリーから車で4時間半走り、
アグラに向かいます。

番長、おはようございます。
あ、シタールも。

「目が覚めて、あ、インドか、と思って、
 体を起こしたら、
 すぐ横にシタールがあってね」

正直言って、この大きさは滅入りますね。
でも、運転手さんが
車の上にくくりつけてくれましたよ。



4時間半、シタールを膝に抱えなくてすみました。
番長、よかったですね。

「アグラまで4時間半か。
 寝かせないよ」

知ってますよ。

「寝るか、なぁ〜? という瞬間に
 意味のない話題を振るからね」

わかってますよ。

「しかし今日は、4時間半移動のあと、
 すぐに夜行列車で移動でしょ?
 そういう強行スケジュールになったのは、
 無理矢理アグラを
 旅程に組み入れたからなんでしょ?
 ま、ダジャレのためにはそのくらいしなきゃね。
 ああ、街のクラクションのドップラー効果がすごいな」



インドではみんな、クラクションを
ひっきりなしに鳴らしますね。

「日本のクラクションとは
 意味合いがちがうんだろうね。
 “はい、ここ通りますよ〜”ってなかんじ?」

日本の車は、40km/hなら40km/hで
速度がなんとなくそろいますけど、
インドはバイクあり、
自転車あり、トラクターあり、牛ありで‥‥あ、
言ってるそばから、目の前。





「すご!」

さて、我々は、おととしから
ずっとめぐっている状況です。
何をめぐっているかというと、田島をです。
田島めぐりの終着地点を、めざしているのです。

「わたくし、タージマハルオでございます。
 『王将』を唄います」

『王将』はちがうんじゃないでしょうか。

「『東京音頭』だっけ?」

いや、どちらかというと
こんにちは〜こんにちは〜、の。

「『こんにちは赤ちゃん』だっけ?」



いえ、ちがいます。
世界の国から‥‥

「ああ、なるほど。
 ハァァァア〜♪ じゅんでーす、長作でーす、
 タージマハルオでございます!」

ジャスミートさん
「タージマハールと田島さんは似てるね」

あ、やっぱりインドの人でもそう思いますか。

「転校したとき、“田島か。タージマハールだな!”
 と、先生に言われる確率は、80%くらい」

じゃ、タージマハールは、
日本のダジャレ界に浸透してるんですね。

「オレの終着駅、タージマハール。
 何かを期待されてるような気がするんだけど、
 やっぱり顔マネかな?」

ご自分でハードルを上げて
どうするんですか。



などということを、言ってるうちに
いよいよタージマハールのある
アグラに近づいてきました。

「だんだん田島ランドに近づいてきたね!
 いったい何キロあると思ってるんだ、日本から!」

アグラに到着しましたが、
すぐタージマハールに向かうのは
あれだけ「田の田島」を経験した我々としては
何やら悔しいので、
ダジャレついでに、アグラ城に寄って
あぐらでもかくことにします。

「いいね。唄うのもいいね」


いいですね。

「じゃ、これは?」

何ですか、それは。

「ケンタウルス」

‥‥流れでいま、掲載してしまいましたが、
ほんらいは不採用です。

「最終回ってのは、いいもんだな」

ところで番長、アグラ城は雰囲気が
万里の長城に似てますね。
やっぱり軍事的な役割が
あったからでしょうか。

「オレもそう思ってた。あのへんの門とかな。
 こういう会話は、
 オレのニュース読者の方でないとわからんぞ。
 じゃ、長城恒例のマラソンだ! ついてこーい」





長城‥‥じゃなくて、アグラ城の頂上にのぼると、
川を隔てた向こうに
我々の目的地であるタージマハールが見えました。





タージマハール上空に、
大きく「ゴール」
書いてあるような気すらしますね。

「よし!
 じゃ、このあたりであぐらをかいてみよう」



スキップで、城内の広場中央に
進みます。


こうして、
ダジャレの予行演習は終わりました。
覚悟を決めて、いざ本丸へ‥‥あ、サル。

「あ、リス」



あ、馬。

さまざまな動物に「がんばって」と
見送られながら、
(馬には、タージマハール入口まで
 乗せてもらいました)
我々は、田島めぐりのゴールまで
ゆっくりと進んでいきました。
白亜のタージマハールが
夕暮れの空を背負って、
近づいてきます。

「田島濃度が増してきてるね」


おおー!



「おおー!
 あの田島駅との出会いから、
 オレもここまでになったんだな。
 一句詠んでいい?

 タジマハル
 田島が来たよ
 こんにちは」

‥‥‥‥‥‥。



「白いんだね!
 オレは上の屋根が金色かと思ってた。
 みんな、田島を詣でているよ。
 まいったなぁ。
 何のお礼もできないよ」

やっぱり、同姓‥‥ということで、
感じるものがありますか?

「ウーン、ちょっと気持ち悪い感じ。
 オレのなかの小さな自己矛盾。
 この小さな照れはなんだ?」

照れるんですか?



「ね、これって、ダジャレ的にどうなのよ」

どうでしょうか。
しかし、平日とか関係ないんですかね、
人がいっぱいですね。



「あの田島駅からはじまり、
 何千キロも超えて
 見てよ、いま、このクラウド。
 オレはもうさみしくないよ!
 ‥‥でもな、群衆の中の孤独っつーのも
 あるからなぁ」

では、今日のこれまでのところを
動画でごらんください。

それから、我々は
人でいっぱいのタージマハールの中に
足を踏み入れてみました。
何と言ってもタージマハールはお墓ですから、
内部はじつにあっさりしていました。
番長も、中身は意外に
あっさりさっぱりした方だと思います。





日が沈んで、月が出て、
我々は広場に腰掛け、
長いことタージマハールの白い影を
見つめていました。
ダジャレのために日本をまわった
あの一日を思い出しながら。

「去りがたいよ。ああ、
 オレの、終着駅だ」

番長、いままでありがとうございました、と
半ば終わった気分になっていたのは
大間違いでした。

これから夜行列車に乗って
最終地点のバラーナシに向かうことになるのですが、
それは、「オレのニュース」シリーズで
もっとも緊迫する体験でした。

(緊迫は次回です。おたのしみに)



今回のインドの連載がはじまってから
あまり食事のことをお伝えしてきませんでしたが、
それは、カレーのおいしさが
あまりにも当然すぎたせいかもしれません。



今回、オレのニュース一行が訪れたのは、
インドの北部ですので、
味つけはマイルド。
主食はおもにチャパティーかナンです。



どれもこれもおいしくて
毎回、各自の食べ過ぎ信号が点灯するまで
ナンをおかわりしていました。
番長はチーズとほうれんそうのカレー
「サーグパニール」が、
スタッフはチキンカレーがお気に入りでした。
ガイドのジャスミートさんは
もっぱら豆のカレー「ダール」でした。



ラッシーは、“氷なし”を注文すると
比較的おなかに安心です。
「グラブジャムン」というシロップ漬けの
ものすごく、脳が揺さぶられるほど甘い、
あたたかいお菓子があり、
カレーのあとにはうれしいデザートでした。





そして、道中もっともお世話になった飲み物は、
「チャイ」です。
お店ごとに味がちがいましたが、
ショウガがたっぷりきいたチャイが
番長のお好みでした。


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