「私は、こちらのものが最良とかんがえます。」
おお! こちらは、先日、本上まなみさんが
こちらにもってきてくださったものではないか!
「そうなんですか? こちら表紙の保存状態の良さといい、
退色の少なさといい、ベストです。」
あれ? 藤井さんこの黄色がかったのは、
日焼けしちゃってこうなっているわけではない?
「違いますね。こちらは、印刷の中の黄色の成分が、
紫外線によって失われているという状態が、
この水色のものです。」
逆なのか!
「そうですね。よく美容院の窓とかに、
昭和のポスターがはってありませんか?
あれって、妙に青みがかっていますよね。」
はいはい。ありますあります!
「日光による紫外線で最後まで残るのが、青色です。
黄色はもっと先に退色してしまうのです。
この本上さんの絵本の表紙をルーペでみてみると、
黄色のインクがみえますから。」
なるほど〜〜〜。
そうやって、当時の版のことを知るというわけだ!
そして、永田がある重大なことに気がついた。
「藤井さん、本上さんのも、バラバラに?」
「あはははは。こちらは大丈夫です。
こちらは、カバーが分厚くて、
解体してもドラム式のスキャナーでは
スキャンができません。
こちらは、平らなスキャナーをつかって工夫しますので、
解体は免れます。」
あああ、なるほど。
では、解体するのは1冊で済むということだろうか?
「そうなりますね。」
ちょっと、安心をした。
もちろん、解体させてもらうのを前提で呼びかけてはいるが、
それでも、解体するならば、できれば最小限にとどめたいと思う。
本の状態が美しければ美しいだけ
その本は「大切にしまってあった」ということに
他ならないのである。
たくさん読んで愛着をもって保存されていた本も解体しづらいが、
美しい本というのも大変バラバラにしづらい。
持ち主の、高木さんにお知らせせねば。
はたして‥‥。
(つづく) |