手紙55 胸が痛いとき5
どんなふうに痛むのか
こんにちは。
「胸が痛いとき3」でご紹介した、
虚血性心疾患という
心臓の血の巡りが悪くなるために起こる
病気についての話の続きです。
心臓への血の巡りが悪くなると、
心臓の筋肉に運ばれる酸素の量が足りなくなるため
筋肉が呼吸できなくなって
(呼吸をしているのは肺だけではないんです)
最後には筋肉細胞が死んでしまいます。
狭心症や心筋梗塞の症状は
この心筋細胞が死に行く過程のなかで起こります。
今回は、このとき
実際にどんな痛みがわたしたちを襲うのか、
ということについて
ご紹介していきたいと思います。
典型的な狭心症・心筋梗塞の症状は
運動に伴って起こることが多いのですが、
じっとしているときや寝ているとき
また、急な感情の変化があった時にも
起こる可能性があります。
心臓は、左胸にあるのですが
そこがきゅーっと締めつけられるような感じがして
思わず手で押さえてしまうような痛みを感じる、
というのが、
教科書で紹介されるような、よくある症状です。
でも、大切なのは
そんな小説やドラマでよく見かけるような
わかりやすい胸の痛みだけが
虚血性心疾患の症状ではない、ということです。
なんとなく胸が重い感じがする、とか
胸が焼け付くような感じがする、
またはなんだか胸に食べ物がつかえた感じ、
といった症状が、狭心症や心筋梗塞の
最初の症状である可能性は十分にあります。
先日、心筋梗塞で入院した患者さんは
そのときのことを、
「急に胸の上に象がすわったような感じがしたんだ」
と、表現して
面白い人だなあと思ったのですが、
この人は入院中にもう一度発作を起して
このときには
「今日の象はこの間のよりも小さい」と
言っていました。
そういった症状を感じる場所も
ふつう胸の真中からちょっと左寄り
ということが多いのですが
もちろんそこだけではなく、
右寄りの胸や首のあたりに感じることもあります。
さらに、その胸の痛みが
顎や左腕、さらには左の指先まで、
または背中の方へ
つき抜けて行くように感じることもよくあることです。
このような胸の症状に伴って
動悸がしたり、息苦しくなったり
めまいや頭痛を起こすこともありますし、
冷や汗をかいたり、吐き気を催すこともあります。
虚血性心疾患の症状は、このように多彩で
とくに初めてのときは
自分に何が起こっているのか、
わかりにくいかもしれません。
でも、そこで
「これは狭心症(または心筋梗塞)かもしれない」と
ちょっと思いつくことで、
最悪の事態を防ぐことができるかもしれないのです。
では、
「これは狭心症(または心筋梗塞)かもしれない」と
幸運にも思いついたとき
次にすべきことは何か、ということについて
次回はお伝えしようと思います。
みなさま、どうぞお元気で。
本田美和子
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