PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙89 Sing-a-long Sound of Music

こんにちは。

昨年の暮れに妹が遊びに来てくれたので
何か面白いところに一緒に行こうと
フィラデルフィアやニューヨークでの
催しを探していたところ、
あるレビューを見つけました。

Sing-a-long Sound of Musicと題したそのパフォーマンスは
イギリスで始まったものだそうですが、
その後カナダやアメリカにもやってきていて
秋から暮れにかけてはニューヨーク、
さらに2月には
フィラデルフィアでの公演が予定されていました。

説明書きを読む限りでは、この催しは
「観客が意欲的に参加する、
 映画サウンド・オブ・ミュージックを観る会」
という感じで、
内容を読み進めるうちに、すごく行きたくなってきました。

この催しで、パフォーマンスを求められているのは
観に来ている観客です。

映画「サウンド・オブ・ミュージック」は
ご存知のように、
「ドレミの歌」や「エーデルワイス」、
「独りぼっちの羊飼い」など
今でも広く歌われている歌をたくさん生み出しました。

観客は映画を観ながら
劇中の人物と一緒にミュージカルナンバーを歌う、
というのがそのパフォーマンスの骨子で、
さらに好きな人は、登場人物の格好をして参加するらしい、
ということがわかってきました。

以前にも少し触れましたが
わたしは学生の頃は歌うことがとても好きでしたし、
高校1年生の時の文化祭で
どうしてそうなったのか、その経緯は忘れてしまいましたが
わたしのクラスの演目は
「サウンド・オブ・ミュージック」となったので、
映画の中の歌は今でもだいたい覚えていて、
そらで歌えます。

妹をどこかに案内する、という
当初の目的を忘れて、自分が行きたいがために
妹だけではなく、
ニューヨークに住んでいる友達も強く誘って、
一緒にニューヨークの初日の夜に行くことになりました。

わたしの説明の仕方が悪かったらしく、
友達は、この日に備えて
映画のサウンドトラックのCDを買って毎日聴き、
さらに、その歌詞を書きとって覚えようと
1週間ほどすごい努力をした、ということが
直前になってわかりましたが、
映画の上映時には、下に歌詞の字幕が出るので
もちろん、歌を暗譜して行く必要はありません。

当日、ニューヨークの劇場街・ブロードウェイの一角にある
映画館に行くと、入り口で袋をひとつずつ渡されました。

中には、舞踏会の招待状、一輪のエーデルワイス、
四角く切ったカーテンの切れ端、クラッカーなどが
入っていました。

上映の前に、修道女の格好をしたお姉さんが出てきて
ウォーミングアップの歌を観客と歌ったり、
袋の中の道具の使い方を説明してくれました。

物語の進行に合わせて、袋の中の小道具を
まるで自分が映画の中にいるように使う、というのが
歌と並んで、
この観客参加型のパフォーミング・アートの
大切なところなのですが、
これはたとえば、
マリアがトラップ大佐に
子供たちの遊び着を買って欲しい、と
申し出て断られるエピソードの前後に、
彼女が窓のカーテンに触るたびに
(本当に、この前後には
 彼女はカーテンを触りまくっています)
「マリア、カーテンを利用して
子供服を作れることに気付いて。」と
観客は、マリアが「気がつくように」客席で
カーテンの切れ端を振りまくるのです。

マリアとトラップ大佐の結婚が決まった時に
クラッカーを鳴らしたり、
トラップ一家が音楽祭で「エーデルワイス」を歌う時に
エーデルワイスを一緒に振ったり、というように
最初の説明で教えられた、参加のポイントを逃さないように
みんな真剣に楽しんでいましたし、
もちろん、歌も、力の限り歌っていました。

ニューヨーク、フィラデルフィアでの公演はもう終わって、
現在はボストンで公演中です。
その後、米国ではミネアポリス、シカゴ、
サンフランシスコ、と巡回するようですし
イギリス、ノルウエー、アイルランド、カナダ、
オーストラリアでもやっているそうです。

ご興味のある方は、
公演サイトをご覧になってみてください。

観客参加型映画、というと
ロッキー・ホラーショーが有名ですが、
それと比べると、かなり穏やかな仕上がりの
Sing-a-long Sound of Music 。

とても楽しい夜になりました。

では、今日はこの辺で。
みなさまどうぞお元気で。

本田美和子

2001-04-08-SUN

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