PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
ニューヨークの病院からの手紙。

手紙137 家庭内暴力・8 被害者を知る人の経験


こんにちは。

家庭内暴力に関する
「彼女の経験」について、
今日は、
被害を受けた人を間近に見る機会のあった方からの
メールをご紹介します。

最初は
家庭内暴力の果てに
夫に殺されてしまった女性の家族を
個人的にご存知だった方からのメールです。

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<被害者の家族を知る人の経験>

相談電話のことでメールしました。
24時間体制でそれも無料電話で対応しているのは
宮城県警だけとおっしゃいましたね。

ご存知かもしれませんが、
その理由を推察すると、
去年か一昨年に宮城県内で起こった
事件がきっかけかと思います。

やはり、家庭内で日常的に暴力を振るわれていて、
何度も実家に帰ったり、別居したりしていた奥さんが
夫に殺害されてしまいました。

当時、亡くなった方は娘二人を連れて、
実家へ帰って来ていました。
もう限界で、最後の離婚の話合いをしに
夫の元へひとりで出かけて行ったのだそうです。
その時に刺されてしまいました。

お父さんはじめ家族の方々は大変な後悔をしました。
どうしてひとりで行かせてしまったのだろうかと。

このご家族は、沈黙しているのではなく、
「娘のような人をもう二度とつくりたくない」
という一心で
さまざまな方面に働きかけているのでしょうね。
本田さんの「宮城県警のみ」という一文で推察できました。

こういった事件は、
被害者の家族が表立って声をあげにくい性質の事件です。
残された子どものこともありますから。

でも、声をあげていくことが大切なんだなあ、と、
改めて思いました。
その方の勇気に影ながら拍手を贈りたいと思います。

匿名希望

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次は、県の女性センターに
お勤めになっていた方からのメールです。

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<つぐみさんの経験>

昨年まで、県立の女性センターに勤務していました。
DVに関しては
本当にひどい話がいっぱいあるんです。

それで、記事に少しだけ加えさせてください。

「相談先の電話番号は
 絶対に
 パートナーの目にふれるところに置かないこと」

これを発見して逆上し、
さらに暴力がひどくなることがあります。

でもあわてて逃げたときに
連絡先の電話番号がみつからないと困るので、
履いて逃げる靴の中にかくしておくとか、
とにかく最悪、子どもと着の身着のままで逃げたときでも
連絡先の電話番号だけは持って出るようにしてください。

それから、子どもは置いていかないでください。
実子の場合は、親権でもめることがあるし、
あとで引き取ろうとしても
なかなか返してくれないことが多いようです。

あと10歳くらいの女の子だと性的虐待の心配もあります。
妻がいなくなって、
子どもに暴力が移行する場合があるので、
どうか子どもを置き去りにしないで!

つぐみ

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最後は
カナダのシェルターで
働いていらっしゃる方からのメールです。

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<Mayumiさんの経験>

わたしは現在、カナダの田舎町にある
Transition House と呼ばれるシェルターで働いています。

わたしのクライアントさんたちは、
パートナーの暴力から逃れてきた女性と子供たちです。

シェルターの住所は秘匿義務で守られているため、
多くのクライアントは
警察経由または病院経由で
警官の保護のもと送られてきます。

なかには全身あざだらけ、
骨折やひどい怪我を負わされて
運び込まれる方々も少なくありません。

このあたりはオイルが主産業のため雰囲気が荒っぽく、
またお金と人材の出入りも激しいため、
アルコールとハードドラッグが引き起こす問題も深刻です。
ゆえに家庭内暴力に苦しむ
女性や子供たちがたくさんいるわけですが、
実際にシェルターを訪れる方たちの数は
ほんの氷山の一角と思われます。

そして驚くことに、
小さな町なのに
「こんな施設があるとは知らなかった」とか
「わたしのような目にあってる女性が
ほかにもいるなんて」という
被害者の方が多いのです。

とても悲しいことに、被害にあっている女性たちは
どうやってヘルプを求めていいのか
最初の一歩を踏み出すのがとても大変なんですね。
だから本田さんの病院の先生がつけておられるバッジ
とても大きな意味を持つと思います。

わたしもDVに苦しむ母に育てられました。
母が舐めた辛酸は
そのままわたしの成長過程に影響しています。
日本とカナダという違いはあれど、
クライアントの小さな子供たちに
どうしても自分の過去を重ねあわせてしまいます。
決して消えない悲しい記憶です。

母の時代には「我慢すべきこと」だったのが、
いまようやく
「暴力はいけない、被害者は我慢しなくていい」と
叫んでもよい時代がきたのですね。

Mayumi

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いただいたメールを全部ご紹介できなくて残念です。

わたしの知らなかったことを
たくさん教えてくださって、
どうもありがとうございました。

みなさま、どうぞお元気で。

本田美和子

2002-03-11-MON

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