手紙183 WHO・6 援助問題とお買い物
こんにちは。
ここ数回は、ベトナムの話をしています。
WHO(世界保健機関)などが定めた、
「2005年末までに
300万人にHIV治療薬を届けよう」という
「3 by 5計画」が進められていたのと並行して、
「薬が届いたときにきちんと診療活動ができるよう、
ちゃんと準備しておこう」
と、援助対象になっている国々は
それぞれの取り組みを始めました。
その一例として、
ベトナムの南の街、ホーチミン市では
医療従事者への勉強会が開かれたり、
町の中にさりげない形で診療所が作られたり、といった
準備が進められていったことについて
ご紹介してきました。
ホーチミンで初めて顔を合わせた、
カンボジアのWHOから来たフランス人のミッシェルは
わたしと同い年でした。
彼女は長いこと国境なき医師団の一員として
アフリカで仕事をしてきて、
カンボジアに赴任してからはまだ一年くらいでした。
新しい生活はどう?と尋ねたわたしに、
「国境なき医師団のときには、
お金のこととか、人の手配とか、
いろいろなことが、ぎりぎりで大変なこともあったけど、
WHOは、その点余裕があっていいかな。」
「でも、WHOっていうのは、良くも悪くも
官僚の集まりとしての特徴が
とても強く出ている、と思う」
と彼女は答えました。
いろんな細かい決まりがあるのは、
どの国も、どの国際機関でも、同じようでした。
フランス人の医師の友達ができたのは初めてで、
わたしはうれしくなって、いろんな話を聞きました。
学校のことや、病院のこと、患者さんのことなど
臨床医が経験したり、感じたりすることは、
米国でも、ヨーロッパでも、日本でも、
あまり変わらないのだ、と改めて思いました。
ベトナムは、その歴史的な経緯から
フランスの影響がいろんなところに残っていますが、
お料理に関しても例外ではありませんでした。
生粋のベトナム料理だけでなく、
西洋料理のレストランもたくさんあって、
どこも、とてもおいしい料理を出していました。
わたしたちは、仕事が終わると
よく連れだって食事に出かけました。
食事の間は、今の仕事の話をしたり、
わたしがよく知らない、国際医療援助についての話を
教えてもらったりして、とても楽しく過ごしました。
表通りのレストランからホテルまでの道すがらには、
洋服屋さんが何軒も続いていました。
店先に並んだ服を見ながら、どちらともなく
「服を買うとき」についての話になりました。
カンボジアも、ベトナムも、
衣料品はどれもとても安いと思います。
そんな、安くてかわいいお洋服や小物を買うときに、
「一応、値段がもう少し安くなるかどうか、聞いてみる」
かどうか、ということに話が及びました。
わたしも、彼女も、
「もちろん、聞く」と意見は一致しました。
さっきまで、途上国の経済格差とか、医療問題とか
この地域の人に何か役に立てることはないか、という
話をしていたのにもかかわらず、
自分の買い物に関しては、
現地の人に、「安くなりませんか?」と聞く態度は
果たしていかがなものか、と
二人しておかしくなって思わず笑ってしまったのですが、
ミッシェルの
「これを向こうの言い値で買っても、
少しまけてもらって買っても、
末端で働いている縫子さんたちのお給料には、
絶対に変わりはないはずだから、大丈夫だ」という意見に
わたしも、そうだろうな、と同意して
以降の買い物も、一応、
安くなるかどうか聞いてみることにしています。
今日は、全然WHOの活動については
ご紹介することもなく、終わってしまいました。
すみません。
みなさま、どうぞお元気で。
来年も、どうぞよろしくお願いします。
本田美和子
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