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第12回 新しいもの

「インターネットによって
 まったく新しいビジネスが可能になる。
 インタラクティブなネット社会が来たことで、
 もはや従来のブランド的な商売は不毛になる……」

こうしたことがよく言われがちなままに、
ずいぶん長く日が経ってきたように思います。
ネットは確かに一瞬でひとに情報を伝えてくれるし、
規模の面でも何でもできるような気にしてくれますね。
実際にこれからぼくたちはインターネットを使って、
ずいぶんいろんなことをできるようになるのでしょう。
新しいものがどんどん出てくるのは
そりゃあぼくもすっごく楽しみです。
実際わくわくするじゃないっすか、何だか。
新しくて内容のあるものって、ぼくは大好きです。

ただ、新しければいいってもんじゃないよね?
インタラクティブで新しいコミュニティを生むぜ、
なんて言われても、そこで新しいように見えるのは
実は用語だけじゃない?みたいなときもあるでしょ。

「ひとはインターネットに個人として接する。
 だから、従来型の大がかりなテレビ的宣伝は
 もはやまったく効果をあげることができない。
 今必要なのは、個人と個人とが出会うことなのだ。
 時間のないひとどうしが会えるような宣伝が必要だ。
 だからネットを利用して売ったりするには……」

こういうことを言ってるひとがいて、
その考えをもとにビジネスチャンスを
いっそう拡大しようとしてたりしますよね。
でも、あれ? これ、ちょっと待ってみて。
例えば映画時代の途中でテレビが出たときとかも
何だかこんなこと言われてたって前きいた気がするし、
つまりぼくとしてはどうも座りがわるい話なのです。
新しいものが出てきているのはよくわかるんだけど、
その新しいものを使ってやるものが、
例えば「ビッグになる」とかいうように
ひとことで結論づけられちゃえるんなら、
それなら売れてしまえば終わってしまって、
他にやることがもうなくなっちゃうよね。
すでにその「ビッグ」って発想が新しくなくない?

そもそも、新しいものって何でしょうか。
何のための新しさで、何を生めるのかな。
昔っからいろんなひとがさんざんいろいろと
考えているのに「新しいもの」ってまだあるのかな?
そのへんを陰気にぐちぐち思っていたのが、
フランス人のパスカル(1623〜62)なのでした。

「わたしが新しいことをしゃべらなかったとは、
 言わないでくれ。材料の配置が新しいんだ。
 テニスをするふたりはおんなじ球をつかうけど、
 それでも片方がよりうまく球をさばくでしょう?
 『古い言葉を使った』と言われると、
 わたしはむしろうれしくなる。
 おんなじ言葉がちがった配列で
 ほかの考えをつくるというのは、
 おんなじ考えがちがった配列で
 ほかの言葉の数々を生むのと似てないかな?」
 
おんなじ言葉がちがう考えを生んだり
その逆だったりというのに、なるほどと思いました。
新しさのための新しさっていうんじゃいやだもんな。
このひとがどういう風に新しさというか
何かが生まれるのかと感じているかを見てみるよん。

「じょうずに話すけれど
 うまく書けないひとたちがいる。
 しゃべるときには場所や聞き手が彼らを興奮させて、
 そういう熱気がないときには見出せないものを
 彼らの精神から引き出させてくれるからだ。

 好奇心は虚栄にすぎない。
 ひとが何かを知ろうとするのは、
 多くの場合にはそれをしゃべるためなんだ。
 誰にも話さず、ひとりで楽しむためだけで
 ひとに伝えるという希望もなければ、
 ひとは航海などしないのだろう」

ちょっと偏屈だけど、一応なるほどとは思います。
「あの現場があったからこんな無茶ができた」
とかそういうのって、何かありそうですもんね。
誰かと触れあうことが何かを生むキーなのかな?
新しさっていうのは、場所の新しさなんっすか。
まあこのあたりで放っておきます。また保留です。
新しさの先に何があるのか、みたいなのも
また今度思いうかべることにしますよん。



[今日の2行]
新しいこと言わなくても、わたしの材料配置は新しい。
場所や熱気は、精神から何かを引き出すときがある。
                  (パスカル)

[今日の質問]
配置の新しさだとか場所の新しさだとか
そういうような話になったけれど、だからといって
「この双方向的な現場のインターネットがすごいよ」
と今ぼくは言うつもりは別にあんまりないのです。
興奮するすごさを生むような新しさを知りたいだけで。
新しさよりも素敵さはどこにあるのかが気になるんす。
そのへんで、新しさだとか何かを生むとか
新しさの先に何を想定するのかなどに関して、
みなさんにメールをいただけるとうれしいです。

mail→ postman@1101.com

2000-02-11-FRI

 
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