第30回 コンビニのような言葉集
こんにちは。ほぼ日スタッフの木村俊介です。
みなさんは、どこかで耳にした言葉に、
影響を受けた経験はありませんか?
友達の言葉、映画の登場人物の言葉、小説の言葉・・・。
自分なりに大事にしている言葉を抱えながら
日々を過ごしていませんか?
そんな大切な言葉のふくまれた書物として
もしかしたら、哲学書を挙げるかたも
いらっしゃるかもしれません。
自分の考えの前提がどこにあるのかがわかったり、
哲学的な発見で従来の価値観がひっくりかえされたり、
哲学の発言には、おもしろい刺激が含まれています。
一般的に広くは読まれていないけれど、
ほんとうは、学者さんよりも、むしろ、
「仕事にいそがしい人」や
「いろいろなことに興味があって、哲学どころじゃない人」
といった方のほうが、哲学書に書かれているような情報を
心の底から欲しているのかもしれません。
直面している問題を解くためのヒントを
切実に求めているでしょうから。
だったら、哲学者たちの印象的な言葉を、
あなたが今読んですぐに使えるように
編纂したいと思いました。
そこでためしに、
一言だけで生き生きしている言葉を、
ふるい哲学者の言葉を中心に、まとめてみました。
インターネットで読むには多少長いけれども、
もしよかったら、お読みください。
誰がその言葉を生みだしたかは、
敢えて記しませんでした。
読んだ人に勉強をしてもらいたいために
編集したわけではないからです。
「わたしの考えたことは、
誰かに勝手に使用されたりマネをされていいんです。
そのうちの誰かが、わたしの考えを超えるといい、
とだけ思っているので、わたしの本には
どこから何を引用したかを記さないことにします。
『何をどこから引用したか』を知る必要があるのは、
自分で考えたがらない学者たちだけだから。
思いきりのいいことをやらない学者は、退化してます」
こう書いたある哲学者に
賛成したいような気持ちで、編集をしたのです。
このコーナーには、
「コンビニ哲学発売中」
というタイトルがつけられています。
コンビニで売っているほとんどのものは、
その場ですぐに消費されていくものばかり・・・。
「すぐに使ってもらえる」なんて、
幸せな商品たちですよね?
そんなように、このページの言葉を
気軽に消費してもらえるとうれしいです。
では、どうぞっ。
50個の言葉をお届けいたします。
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1
「あたらしい騒ぎを発明する人ではなくて、
あたらしい価値を発明する人をめぐって、世界はまわる」
2
「量より質?
・・・いや、量だけが必要なんです。
知性の質は、量の集積に過ぎません。
コンセプトの量と言葉の量とが、質の高さを生む」
3
「人間の考える内容は、
その人の年齢と切り離せない程度の
『いましか考えられない』ものです。
だから貴重なんです」
4
「ひとつのことを体験している最中で、
その体験の中ですでに観察者になっていると、
体験に没頭できずに、消化不良をおこしてしまいます」
5
「あらゆるひとの前にあるものなのに、
まだ名前を持たず、名づけられていないものがあります。
独創性とは、そういうものに名前をつけて、
それを、人に、はじめて見せてあげることです」
6
「天才は、学者のように
過去の天才の著作権を大事にせずに、
天才の作ったものを勝手に盗んで、
自分のために利用して作品をつくりあげます。
そうしてできた作品が、将来また遺産として、
学者に大事にされて保護されてゆく、というわけです」
7
「簡単に書かれていることこそが最大の収穫なのに、
わけのわからない人は、
それを幼稚だと評価したがるんです」
8
「昔のことを理想的だったと語る人は、
当時の自分をもっと高級であったと感じていて、
つまり、いまの自分を不自由だと感じてしまっています。
・・・ただ、ほんとうに充分に経験を積んだ人は、
『現在の幸せは、
愛した場所を離れたからこそ存在する』
とわかっているので、敢えて
かつて愛した故郷に帰ろうとしないものなんです」
9
「誰もが見過ごしてきたものを
あたらしいもののように見られるというのが、
ほんとうに独創性のある人です」
10
「なぜ、他人の役に立つ行動をする人が、
その人本人の役に立つ行動をしている人よりも
『いいひと』だと思われているのでしょうか。
私欲のない人がよしとされているわけですが、
仮にその人が他人のためだけに行動をして、
完全に自分を見失っていても『いいひと』ですか?
自分のためにもなれない人は、善人であるはずがない」
11
「大切なのは、
あるレースのトップを走ることではありません。
それができたとしても、あなたは自分を
いちばん優れた奴隷だと自慢しているだけですから。
もう少し重要なのは、ひとりで歩くことのできる力や、
歩く道を自分で変えることができるという力です」
12
「行動が、人間をつくりあげる。
それぞれの人の行動を見ると、
いままでの自分を一日に何度超えることができたか、
もしくは常に自分を放任してしまったかが
よくわかります。
そうしたあらゆる行為が、
人をかたちづくり続けているのです。
『自分が強いのか弱いのか』
『称賛に値するかどうか』
『自分が他人の評価を恐れなければいけない人間か、
それとも自分自身で光を当てて自分を示せる人間か』
などの自己評価も、
いままでの自分の行動からつくられます」
13
「モノマネが、あらゆる文化の手段です。
人はまず、モノマネをすることによって、
他人の感じ方やものの捉え方を学ぶから。
誰のマネもしていないという絵描きでさえ、
自然のマネをして風景を描かざるをえません」
14
「外にあるものを自分なりに捉えてみないと、
『あれの印象は、こうだった』
とさえ思うことができません。
誰かの書いたものごとを、
個人的な印象を抜きにして
客観的に、そのまんま翻訳しようとするならば、
個人的な印象に従って生き生きと書かれた内容も、
ミイラのように生気を失ったものに
なってしまうでしょう。
・・・書かれたものの真実味や客観性よりも、
『書かれたものごとにこめられた異常な衝動』や、
『書こうとするにいたった個人的な世界の捉え方』
のほうが、読み手にはずっと魅力的に映るのです」
15
「わたしがこれからやりたいことは、
世の中に存在しているものから
最高の内容を見つけ出すことではありません。
すでにある以上の内容をしぼり出すことでもない。
ほんとうにやりたいことは、
ものをふつうに見ることができるように、
『内容を切りつめること』なんです。
芸術や経験をを、
薄めてしまいたいわけではありません。
芸術やわたしたち自身の経験を、シンプルに、
もっと確かに実在感のあるものにしたいだけなのです」
16
「多くの人は、教養を求めるかわりに、
服従するべき指導者を求めてしまいがちです。
あなたがかつて信じた人を集めて反省すると、
あなたが自分をどう信じているか、わかります」
17
「絵を描いたり、考えを言葉に残すことは、
それに触れたあとの人たちに、
考えを理解してもらえるという
よろこびを生みます」
18
「こいつの意見を広めることは危険だという言葉が、
いろいろな場面でよく使われるけれど、
その意見を聞いたぐらいで行動を変える人は、
もともと、そういう意見を欲していた人だけです」
19
「飛躍によって見いだされたものが、あとで
正しく実り豊かな発見であると証明される。
天才的な探究者は、
予感のようなものに導かれるのです。
天才とは、充分な根拠もないままに、
あることの可能性を感じ取れるからこそ優れています。
つまり、ごくわずかな材料しかない時点で、
近い将来に自分の証明可能であろうことを予測できる。
必要な材料は、あとで探せばいい。
・・・したがって、材料の完全性を求めるためだけに
細かい材料や実験結果を集めているのは
ムダなことが多いのです。集めている本人が、
それが何のためか、わかってないでしょうから」
20
「考えることを『気持ちいい』と感じるとしたら、
考えることに向いている。考え続けられるからです」
21
「もっともよく学んだ人を、
教師にしかできないような教育なら、悲しい。
それなら、永久に教師を作り出す機関にすぎないから」
22
「ウソをつく必要のない人間が、
ウソをつかないと自慢したがるのです。
『矛盾することができない』ということは、
ひとつの無能力の証明であって、
正しさの証明ではありません」
23
「何かを考える時には、
自分の求めているものを、
すでに幻想だとか直感だとかによって
持っていなければいけません。
そのあとで反省してみて、はじめて、
求めているものの存在を証明できるのです」
24
「自分で言葉を見つける途中にいる人ほど、
急いで、完成度の高い言葉を借りたがります。
つまり、自分の言葉の熟す時期を待たず、
すでに完成されている言葉を信頼して、
ひとりの作家のすべての発言を読みつくそうとする。
すると、長い間その作家の考えだけを吸収するので、
いろいろ学ぶのではあるが、その結果、
自分自身の言葉を放棄することになってしまいます。
・・・自分の絵筆を持たないままの
ある党派に所属するだけの人は、こうして作られます」
25
「誰かにほめられているうちは、
まだ、あなたは他人の道の上に立っています」
26
「難しいことばかりを書きたがる人は、
自分が行き詰まっていることに対する怒りを、
他人にも味わせたいというだけでしょう」
27
「どんなにフェアであるつもりでも、
人間はそれぞれの寓話という糸で世界をつむいでます。
距離を誇張し、色をあまりにも厚くぬりすぎ、
輝くものをより本当らしいとみなし、そのうえ、
敵を持ちたがり、恐怖によって動機を立ててきたという
太古からの傾向を持って生まれたわたしたちですから」
28
「どの師匠もひとりしか弟子を持ちません。
その弟子はいつか別個の師匠になるから、
どうしても、師匠に対する裏切り者になります」
29
「興奮のない悩みは、ほんとうに苦しいです。
と言うのも、興奮の度合いの強いある激情は、
それがどんなものであれ、ある幸せを含むからです」
30
「意志を持たないと、
本人でさえ、自分がどんな人だかをわかりません。
『こういうことをしたいんだ』という欲望が出て、
はじめて、現在のその人がどのような器の人か、わかる」
31
「元気な人間にとって、
リスクのない世界は耐えられません」
32
「一生懸命に何かをすることは、ムダじゃない。
あなたは、今日のうちに高く山をよじのぼるか、
明日にもっと高くのぼれるように
身体を鍛えているか、の、どちらかなのですから」
33
「最初は、有名になることを求めたり、
恐怖から脱すするための行動であったとしても、
行動そのものが美しいものであれば、
行動の成功とともに動機が清らかになり、
その後の行動の美しさも、更に成熟してゆきます」
34 「人間がほんとうに科学的だったら、
科学がなくても合理的に論理的に行動するでしょう。
だから、人間は科学的な存在ではない。
・・・安心して、不合理に身を任せていいかも?」
35
「正しいことと美しいこととは、別のものです。
・・・わたしたちは、『ほんとうのこと』だけに
身を囲まれすぎて没落しないように、
芸術を持っているのです」
36
「将来には、もしかしたら
『あ、自分の力を過信してたな』
という結果に終わるかもしれないけれども、
いまは、あなたが責任を取る必要のある人は
自分しかいないわけだから、
好きなように動けばいいのではないでしょうか」
37
「客観的であることや、静かにものを眺めることが
いちばん最高だと思っている人の知性は、不十分です」
38
「人は、自信のない弱さを冷静に判断するので、
『おのれの弱さ』で破滅することは少ないです。
自分の強みだと思っているものに、
破滅の種子があるのです」
39
「果実を大事にするか、種子を大事にするかで、
ある人が消費者なのか創作者なのかを判定できます」
40
「成功は、成功したいという意欲の中に、
すでに含まれています」
41
「創造とは、趣味の伝達です」
42
「謙譲で、まじめで、好意的で、自制的な人をいいと思う?
・・・でもその人は、理想的な奴隷ではないでしょうか」
43
「昔の人の言葉から影響を受けているからといって、
『あいつは、あの思想家に依存している』
とは言えません。
依存とは、小さいものが
大きいものにぶらさがることですから。
豊かな思想家は、
ほかの素晴らしい人たちの本の中から
もっとも偉大なものを聞きだして、
変化させることができるのです」
44
「人間は、後継者を持つことで教育されます。
子どもや自分の作品や弟子が生まれたあとで、
はじめて、人生に方針というものが与えられます」
45
「常にひとつの人格に
結びつけられてしまうことは不自由です。
人が衣服をとりかえるように、
人格にも、清潔に保つための着替えが要ります」
46
「創造とは、選んで、
選んだものを仕上げることです」
47
「ひとは誰でも、じぶんの思想を
完全に言葉にすることはできません。
・・・そして、多くのひとは、
じぶんがいかに富んでいるかを知りません」
48
「あらゆるものにじぶんを献身するのは、
いいことではなくてむしろ怠慢のあらわれです。
それは、博愛の仮面をかぶった誘惑ですから」
49
「目的とは、行動の途中で思い浮かんだり、
ある行動をやりおえてはじめて
『あ、こういう目的だったんだ』とわかるものだから、
最初から目的を持っている人はいません」
50
「偶然と偶然のぶつかりあいが創作活動です。
運のいい人が、いいものを作るんです」
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今日は実験的なかたちで
50個の言葉を紹介いたしました。
もし「おもしろい」ということであれば、
この形式で、たくさんの言葉を
取り上げるかもしれませんよー。
(ですから、よかった場合「よかった」と
postman@1101.com
宛てにメールをいただけるとうれしいですっ♪)
それでは、またこのコーナーでお会いしましょう!!
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