滞在一日目の夜、
石巻2.0のメンバー小泉さんに教えていただいた
「CRUISER」というお店で夕食をいただきました。
「魚介のサラダがうまいです!」と伺っていたので
早速注文します。
「CRUISER」は、
角田永吉さんという67歳のマスターが
一人で営むお店。
出てくるお料理は、どれもとっても美味しい。
他のお客さまがいらっしゃらなくなったところで
マスターが私たちの席に
お話をしにきてくれました。
仙台のホテルでコックとして修行をし
故郷石巻でお店をひらいたのだとか。
船、そして海が大好きなんだなということが
お店の内装やマスターのたたずまいから
ひしひしと伝わってきます。
漁港である石巻がとても栄えていて
街が人で溢れていた時代のこと。
石巻にはいった船の漁労長さんが
「ここにいるお客さんの分、
全部払わせてけろ。」と言って
ふところに入っている現金の束を
どさっと置いていった話や
マグロ漁で石巻に入った船頭さんが
静岡県の焼津までタクシーを飛ばした話など
豪快な漁師さんたちの活気が
目の前に満ちてくるようなエピソードが
次々飛びだしてきます。
ジャズが流れる店内、美味しいお料理。
石巻に来たら、ぜひまた寄りたいお店でした。
石巻滞在2日目は、快晴。
コンテナを利用したカフェ「ICHI」さんで
「金華卵」のゆで卵など
ほっこりする朝食をいただき、
あらためて石巻2.0のオフィスに伺いました。
「昨日の晩は、石巻を楽しんでいただけましたか?」
と実行委員長のお一人である松村豪太さんが
話しかけてくださいました。
震災後、復興バーのマスターもつとめる松村さんが
教えてくれた石巻のトリビア。
「石巻は、人口あたりのスナックの割合が
日本で一番高いんですよ。」
確かに、小さな路地に入ると
スナックの看板がずらりとありましたありました。
今回は、お邪魔できませんでしたが
松村さんいわく「ストロングスタイルのスナック」に
次回石巻訪問の際にはぜひ立ち寄ってみたいです。
松村さんは、震災前から
総合型複合地域スポーツクラブのNPO職員として
ドイツのスポーツクラブを参考に
野球、サッカーなど
限定されたスポーツだけをやるのではなく
小さい頃から多種目のスポーツを
子どもたちに体験してもらえるような活動に従事されていました。
そのかたわら、地元石巻で
「石巻ふるさと復興協議会 事務局長」をつとめられ
活気あるまちづくりをしていくために
活動をされてきたおひとりでした。
地方都市特有の空洞化が進み、
石巻駅を中心とする商店街は
シャッターが降りたままの店が増え続けていた。
ねむりゆく街を
なんとかしたいと思っていたところに起きた
東日本大震災。
その中心商店街で震災後、
一番早くお店をあけたのは
松村さんも関わっていらっしゃる叔父さんが経営している
スポーツショップだったそうです。
震災翌日にお店をあけたというのは、
やはりすごいことですよね。
現在、石巻2.0のプロジェクトに
関わってくれているメンバーは全部で100人ほど。
その中でコアメンバーが20名ほどで、
石巻在中のスタッフは5名。
クライアントさんが石巻にいたからというご縁で
「石巻工房」を立ち上げられることになった
建築家の芦沢さんをはじめ、
残りの方々は東京から石巻に通い続けているそうです。
「距離は関係ないと思っています。
今は、スカイプやSNSを使って
どこにいても頻繁にやりとりができますから」
とさらっとおっしゃった
松村さんのひとことが印象的でした。
でもその一方で、
石巻2.0のオフィス(石巻工房も併設)は
いつも人でにぎわっている。
IRORI石巻という名でオープンなスペースとして
使用されているためか、
1日目も2日目も、いつも人があつまって
小さなミーティングがそこここで行われていました。
ふと、糸井重里が
「気仙沼のほぼ日」をつくると決めた時のことを
思い出しました。
とにかく最初に「場所」をつくろう。
人が集まれることによって、
生まれるうねりはやはり大きくひろがっていくのだなぁということを石巻でも深く実感しました。
そして、もうひとつ
松村さんにお会いして強く感じたこと。
震災後、新しく活動しているように見えている人たちは
元々の問題意識が
しっかりあった方々なのではないかということでした。
「障壁のない
オープンなまちをつくりたいです」
とおっしゃる松村さん。
新しいまちづくりのため、
いま一番欲しいものはなんですか、と
質問してみました。
「人員です」
すくっと答えがかえってきました。
震災後、さまざまなジャンルの人々が石巻にあつまり
専門スキルは充実してきている。
今欲しいのは、実際にアイディアを動かしてくれる
若手の人員ですと。
問題には、
今すぐに解決できる問題と
長期的に解決しなければならない問題の
2種類があるとよくいいます。
その両方をいったりきたりしながらも、
次の課題が具体的に見えている。
そのことがつよくわたしたちの心に響きました。
あたらしいまちづくりへの第一歩として
石巻出身のウェブディレクターの
古山隆幸さんが中心となり、
5月からは「イトナブ」という試みが始まるそうです。
春の選抜高校野球大会、
阿部翔人主将の宣誓でも話題となった
石巻工業高等学校と連携し
IT技術の基礎から応用を学生たちに学習してもらい
ソフトウェアやアプリの開発などを
行っていく予定なのだとか。
まずは、被災地観光アプリの開発から
着手をはじめるそうです。
それから、個人的にとてもいいなと思ったのは
商店街のIT相談窓口を設けるということ。
商店主の方々がみずから発信できる機会が増えたり、
世代を超えた人の交流ができる。
とにかく石巻2.0のメンバーが集う「場所」は
会話が絶えない。
すてきなご縁ができたことを嬉しく思いながら
「また来ます!」と石巻を後にしました。