気仙沼のほぼ日便り

だいぶ寒くなってきた気仙沼ですが、
ほぼ日でも大変お世話になっている、
「金のさんま」の
斉吉商店のおかあさんである貞子さん。

最近では、二子玉川の高島屋で
ばっぱの台所」という催事に立つなど、
ひっぱりだこです。

そんな貞子さんと、前々から決めていた、
「羽田神社に行こう」というお約束を
実行する日がやってきました。
ひさしぶりの貞子さんとお出かけ!
※これまでのお出かけシリーズは
こちらをご覧ください。
魚市場に行った日。
貞子さんとお出かけー浜甚句編ー
貞子さんとお出かけー徳仙丈山編ー
今回もお出かけメンバーは、
貞子さん、
貞子さんの夫であり、斉吉商店の会長、健一さん。
そして斉吉商店のサポートのお仕事をしているほか、
港のスズメさん便りでの投稿もしている、藤野さん。
そしてそれから貞子さんのご飯をよく食べている、
気仙沼ニッティング、リーダーの
そして私の5人です。
行き先は、
気仙沼でも長い歴史がある、羽田神社。

会長のお話だと
「行くのは『お山がけ』以来だなぁ」と
のことでした。
お山がけ、とは、数え年7歳の男の子が、
羽田神社の山のさらに上に登って、
奥にある院にお参りをしてくる、という
通過儀礼のような行事です。

ええと、7歳の時以来……
「約70年ぶりくらいですか」
とすかさず突っ込む藤野さん、さすが!
会長は今日の日をたいへん楽しみにしていたそう。
それはそれは、久しぶりですもんねぇ
などと言いながら、
車は羽田神社のある山に到着しました。

社務所のみなさんにご挨拶をしたのち、
まず、羽田神社の御神輿を見せていただきました。
この御神輿は、毎年旧暦の9月29日にあたる日
(今年は11月12日)に、
この山から海のほうへ担がれていくのだとか。
そうすることで「海と山に守られる」と
言い伝えられているのだそうです。
その昔「神輿を買った」こともある
気仙沼のお祭り男、健一会長は、
御神輿を真剣なまなざしでじっくりと見ていました。

さっそく189段の石段をのぼります。
石段の両脇にある灯籠は、
震災でほぼ倒れてしまったそうです。
ところどころ、傷跡が見て取れました。

ところで、この日を待ちわびていた会長は、
さっきよりもいっそう足取りが軽やかです。
と、いうより早すぎて、
全然追いつけません。
気仙沼の車生活にどっぷりと浸った私にとって、
この石段は大変な試練でした……。

ようやく上りきったところで、
右手に、すばらしい景色。
わあーと、みんなの歓声です。
ここから、大島の亀山、唐桑半島が見えます。
晴れていたので、遠くのほうまで
綺麗な緑が見えました。
気仙沼出身の作家水上不二は、
「海はいのちのみなもと 波はいのちのかがやき 
大島よ 永遠に緑の真珠であれ」
と謳ったそうですが、
この日、ここから見た大島は、
まさに「緑の真珠」にふさわしい、
美しさ、鮮やかさでした。

「お山がけ」の際にのぼっていく坂道は、
さらに上の山頂へと続いています。
女人禁制で、お母さんはついていけないため、
ここで子どもたちの帰りを待ちます。
けっこうな急勾配の斜面、
お母さんは、ドキドキでしょう。
そしてきっと、戻ってきた子どもたちを見て、
「たくましくなった」と感じるのでしょう。
私は自分が親になった気持ちで、
やや妄想にひたりながら、
この、健一会長も、かつてはそうやって
お母さんに見守られながらここを
登っていったんだなぁと
しみじみ思いました。

みんなでお参りをしたあと、
貞子さんが、上を見上げています。
上には何があるかというと……
大きな大きな杉の木。ご神木です。

杉の木には太郎坊、次郎坊と名前がついていました。
はてしない歴史を感じる太い幹は、
神々しくもありました。
すっかり気持ちもリフレッシュしたところで、
羽田神社を移動、
ツツジで有名な徳仙丈山
ちょっと手前で、
おまちかね、お昼ご飯です。
またもや、貞子さん手作りのお弁当を
いただくことになりました。

〜今日のお弁当メニュー〜
・焼き鮭
・ホウレン草とベーコン炒め
・ピーマン炒め
・たまごやき
・おにぎり
・デザートは柿

おいしい、おいしいです!貞子さん!
お皿にとって頂きました。
そしてさらにおかわりしました。
毎回毎回ご飯いただいていいんでしょうか。
おなかいっぱい。ごちそうさまでした。

よく、
「サユミちゃんは、どんな仕事をしているの?」
と聞かれるので、
「いろいろあってなんて言うか難しい……」
と思っているのですが、
気仙沼の人に支えられながら、
ご飯を食べさせてもらったり、
この街のことを伝える仕事をしています、
というのが答えかもと思いました。

帰り足、もう一つ
気仙沼に古くからある羽黒神社にも
立ち寄る事にしました。

境内には「山神」と書かれた石碑があります。
約1200年の歴史があると言われる
この神社の周りには、
これまた歴史を感じさせる
巨木がきれいに並んでいて、
この神社や土地が、
長く住民に親しまれてきたのだと
いうことが分かりました。
気仙沼は海のイメージが強いですが、
その歴史は山から始まったのだということを
たびたび感じることがあります。

夕暮れにさしかかる街を走りながら、
「今日はほんとうに素晴らしい日だ」と
会長が何度もおっしゃっていました。
「素晴らしい日」
私はそんな言葉を
ほとんど使ったことがありませんでしたが、
今日は本当に素晴らしかった。
気仙沼の歴史も、景色も、ご飯も!

これからも、気仙沼で、
そんな一日が過ごせたら良いなと思いました。