ただいま製作中!ただいま製作中!

2021/10/30 12:47
akiko.kusaoi

「人工島戦記」が
熱気を発する理由

神田ポートビルで開催中の
フェニックスブックスフェア
2日め最初のトークは、
ホーム社の遅塚久美子さん。
今年の出版界最大級の事件といえる
橋本治さんの『人工島戦記』が
できるまでの裏話を聞かせていただきました。

この未完の大著が紙の本で刊行されると
初めて耳にしたとき
「暴挙か?」と思うと同時に、
橋本さんのお通夜の席でお会いした
遅塚さんのお顔を思い起こして
「あの人ならやりかねない」
と思ったそうです。

眠っていた橋本さんの手書き原稿が
本になるまでは、
こちらのトークをあわせて
お読みいただくとして、
トークでは語られなかった
装丁家・川名潤さんによる装丁の意図
(バブルの名残のある1990年代、
架空の市役所が公共事業として
ふんだんな予算を使って市史を作ったら
架空の印刷会社は、フカフカな紙を使って
金箔なんか押しちゃうだろう、という
想定で、それを上品な紙で作った)や、
試行錯誤の末、細かい文字の金箔が
きれいに押せたので、
ナカヤマ紙工株式会社さんが
会社に飾ったというエピソード、
こんなに厚いのに、きれいに開ける
加藤製本さんの技術など、
ふだん耳にすることのない
本造りの裏話を聞くことができました。

そんな話を聞いては、
「まさに血と汗と涙の結晶だからこそ、
本そのものが熱気を発している」と
評していました。

その結晶を実現させた
橋本治さんの精神、
この本にかかわったすべての人の
「人工島同好会」精神ともいうべき
文化祭的なノリ。
それこそが、橋本治さんが
あらゆる作品を通して伝えようとした
「一人で抱え込まないで、
みんなで共有すればいいじゃない」
というメッセージなのではないか
という遅塚さんの言葉に
心から賛同しました。

橋本治さんと一緒に
架空の「都立魔界高校文芸班」の一員として
『恋するももんが』を作ったことで、
「会社員として『枠をはずしていいんだ』
と思えた。はずしたところで私は私。
そう思って、暴挙に挑む自信がついた」
という遅塚さんの言葉は、
多くの人に響く言葉だと思います。
ぜひ中継アーカイブでご覧ください。

このあと3時と6時にも
トークがあります。
お宝本もまだまだたくさんあります。
「ネコのライオン堂」には
追加入荷もありました。
ご来場お待ちしています。