ポカスカジャンの脱線マガジン。

ツアー日記

9月23日(木)河口湖

今日でワークショップも3日目、
今回はワークショップ自体3回目ということで、
喰さんも厳しさと楽しさを上手く振り分けしてる。
俺達もとても居心地のいい感じだ。

そして今日の昼の授業は俳句。
3つの季語に対し、1つずつ俳句を考え、
その句を無記名で書き俳句Boxの中にいれ、
それを紙にまとめて貼りだすというもの。

しかも最後は参加者が自分以外の句で、
自分がいいと思うものを天(1位)と二客(2位と3位)で
選び、一番多く指示を得た人が、俳句の達人になれると
いうのだ。しかも景品がスウォッチの時計。
皆、気合いが入っている。

お題の季語は、秋雨、赤とんぼ、秋刀魚の3つ。
こういう事は大の苦手だと思ってた自分なのだが、
何と何と、実は参加者約40人の中で、4、5番を争う程
支持を得てしまった大久保乃武夫。

ではその句を。

(1) 秋雨よ 流しておくれ 俺のウソ  4票

(2) 赤とんぼ 二匹重なり 目を反らし 5票

(3) 匂い立つ 秋刀魚の煙に 踊る猫  3票

1には天が2つで二客が1つ、
2には天が1つで二客が3つ、
3には二客が3つ。
(点に選ばれると2票、二客で1票、票が入るルール。)

自分としては2が好きなのだが、
2を二客に選んでしまった玉井と喰さんは
本気でくやしがっていた。
ハハハ。

ちなみに省吾は二客がたったの1つ。
玉井に至っては1票も指示を得られなかったのだ。
あんなに文章上手なのになぁ。ヘヘ。

すっかり機嫌よくなって夜の酒も進むは進むは。
ところがそんな俺に、いや、俺のケツに、
あの忘れかけていた痛みが走る。
そうだ、俺はマーメイドだったことを忘れていた。
慌てて風呂でおしりをあたためた。
不安で女房に電話した。
自業自得だと彼女は言った。
周りは笑った。
ぐれた。

(PSJ/大久保乃武夫)

P.S.
マーメイドというのは俺がつけた痔の患者の
ニックネームです。どういうことかと申しますと
痔の患者は皆おしりが痛いので、
横座りにしか座れず、その姿がまるで
人魚姫みたいだということです。


グッドマンのワークショップ参加ルポ

今、夜中の3時すぎ。
横では、僕の班の(僕を除く)8人が、
講師の九十九一さんといっしょに山手線ゲームを
やっている。
左隣では、省吾が力尽きて眠っている。
暖炉では火が燃えている。
省吾の手にはちぎったダンボール。
薪がわりにくべていた最中らしい。背中があたたかい。
ていうか暑い。

あ、起きた。

「今朝、河口湖で釣りしたんだけど、
 10分でバスが2匹釣れたヨー」

と、うれしそうだ。どうやら毎日早起きして、
バス釣りに行っているらしい。
しかし僕は釣りに興味がないので、ふーんと聞き流す。
のんちんはアンチ・釣り派だし(おとうさん魚が釣られて
魚の世界に母子家庭を増やすのがイカン、という主張)、
たぶん玉ちゃんは興味ないし、誰にも話せないのであろう。
省吾は話がすすまないので再び暖炉にダンボールを
くべに行った。

さて、今日は各班ごとに、
「嫌われものの虫のキャバレー」
「病気のTVアニメの主人公」
「妖怪のさえない野球チーム」
というエチュードをやり、俳句をつくり、
一竹美術館を見学し、最後に僕らの班がバーを開店した。

幽霊バーである。
9人のメンバーが、幽霊や妖怪に扮して接客をするのだ。
男子の宿泊ロッジのダイニングを使って、
ロウソクのあかりのもと、頭に三角の紙をつけ、
浴衣を右前に着て接客した。
小道具として、近くの廃業したホテルらしき建物から、
『営業中』の看板(割れている)や電灯のカサ(ぼろぼろ)
を持ってきて、インテリアにした。
ドリンクメニューは、

●鬼の厠汁(冷えてます)……ビール
●血の池地獄……トマトジュース
●中国的幽霊奇譚……ウーロンハイ
●死に水……日本酒
●水子汁……カルピスサワー
●霊のしたたり……レモンサワー

などを考えた。さらに
『芋侍油地獄』(ポテトチップ)、
『白骨盛り合わせ』(プリッツ)、
『番町皿うどん』などのフードメニューもある。
『半殺し』というのはどこかの地方でおはぎのことを
さすというので、そのまま使った。さらに、骨渡しのように
おはぎを渡していくという演出も考えた。
メニューはコックリさん方式で選んでもらう。
線香をたき、南無妙法蓮華経などと唱えていると、
なかなかの雰囲気である。
お岩です、お菊です、おつゆです、化け猫です、
さらし首です、貞子です、耳なし芳一です、
キツネツキの女です、などと、かなりいいかげんな
ラインナップではあるが、店員のキャラづくりをした。
ショータイムは『亡くなったお笑い芸人のあの世からの
メッセージ』(おしゃまんべ、とか)だの、
『幽霊ヨーデル』(ユーレイヒ〜〜、と合唱する)だの、
いかにも短時間で考えました、という内容ではあるものの、
それなりにがんばった。

しかし、楽しいはずなのに、
やっぱりどことなく気味が悪い。
借りてきた電灯のカサの下に座った人は、
首が回らなくなったり、片腕がしびれたり、
気分が悪くなって帰ってしまう。
(そのうちの一人は、ポコン、ポコンという奇妙な音だけを
口から吐きながら、ずっと横になっていたのだという。
九十九さんが持っていた、どこかの土産物の魔よけの
ネックレスをつけてあげたら、すぐによくなった……)

さらに、ポラロイドで『心霊写真撮ります』という
いんちきサービスをしたのだが、
その電灯のカサの横で撮ると、
画像がゆがんだり、光がかぶったり、
ひどいときにはぜんぜん撮れないのである。
目玉が飛び出たように写ってしまうこともあり、
だんだん冗談ではすまなくなってきた。
(ほかの場所で撮ると、ちゃんと写るのだ。)
のんちんと玉ちゃんは、ちょこっと遊びにきたものの、

「ここはヤバイ……」

と言い残し、すぐに帰ってしまった。
さらにお岩さんに扮したぼくに、喰さんは意地悪く

「お岩さんを演じると、たたりがあるよ。イヒヒ」

などと耳打ちする。いっそう怖くなってきたので、
お客さんには清めの塩を渡して、
そうそうに閉店することにした。

そうして暖炉のあるホールに戻ってきてひと安心、
こうして原稿を書いている。

明日はちゃんと電灯のカサと看板を返しに行ってこよう。

(グッドマン)

1999-10-01-FRI

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