糸井 |
ぼくは最近、
「学ぼうと思えば犬のくそからでも学べる」
と思っているんですよ。
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青柳 |
ハハハ。
それ、いいですねえ。
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糸井 |
「学ぶって、いったいどういうことなのか」
と考えてまして・・・それでこの、
朝日出版社さんとの共同プロジェクトの
「ほぼ日ブックス」というシリーズを
作ったところもあるんです。
つまり、本と言うと
すごく大事な美術品のように
扱われがちだし、読みにくくても
無理して読むような先入観があるけど、
何かを伝えるとか、読むとか、
学ぶとかいうのは、
ほんとうにそういうものなのかなあ?
という疑問がありまして・・・。
今の人が生きていくために
必要な道具を次々に出していく気持ちで
読みやすくて、しかも大切なことが書かれていて、
読んだ途端に実際に使えるような本を、
作ってみたかったんですよ。
そういう本なら、自分でも読みたいんです。
もちろん、保存するための本ではなくて、
遊んだり、楽しんだり、
使ったりするための本だから、
買ったとたんに読み捨てられても構わない、という。
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青柳 |
それは、おもしろいですね。
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糸井 |
「学ぶ」っていうのは、
「すでにある知識を得ること」じゃなくて、
「学ぶ方法を理解すること」だと思うんですよ。
やっぱり、どこの世界でも
どういう人材がいちばん欲しいかと言うと、
環境が変わっても
そのつどやっていけるヤツだし、
「こういう場所なら、こういうことを俺はしたい」
と、素手で何かを
つかみ取ることのできる人ですよね。
だから、教科書を読んで
何かの知識を得るというよりは、
いまおもしろい仕事を
実際にしている人の横で
その人のやっていることを
見たり聞いたりするほうが、
ものすごく、
「学ぶ」ことになると思うんです。
ぼくはこの本を、そんなようにして
作りたいと考えています。
青柳先生のそばで、多少のムダ話も含めて、
じっくりと会話をしているような本って、
あとあと何かのヒントになるんじゃないか、
とぼくは考えているんですよ。
素晴らしいアイデアなり業績なりを残すのは、
やはり人間ですから、それならいっそ、
現役で何かをしている人の
話し方の個性まで出てしまう本のほうが、
丁稚奉公に近い学び方をできると思うんです。
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青柳 |
いいですねえ。
学び方を学ぶことについては、
エリザベス1世が
おもしろいことを言ってますよ。
彼女は、60歳を超えてから、
12番目か13番目の
外国語の勉強をはじめたんですよ。
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糸井 |
うわ、すげえ。
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青柳 |
すでに10何カ国語は
きちんと習得していたわけです。
だけどもうひとつをやりだした。
それでまわりの重臣たちが
「どうしてそんなにやれるんですか」
と尋ねたらしいんですが、彼女は
「わたしは自分で勉強してきて、
2番目か3番目の外国語を身につけた時から
外国語を学ぶ方法を会得しました。
だから、今からやる言語に関しても、
時間さえあれば、何の苦もなくできるのです」
と・・・。
学ぶ方法を知っている、というのは、
そういうことですよね?
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糸井 |
まったくそうです。
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