糸井 |
うれしい気持ちは、ちょっとわかるんです。
いろいろな意味での
価値のあるものを発見したわけですから。
単に、ぼくが前にTBSの番組で
赤城山の埋蔵金を掘ったりしてた時なら、
あれは、最高によくっても、せいぜい
出るのは「金」にすぎないわけです。
正直なところ、
それ以上いかないというつまらなさは、あるんです。
それに、一方で例えば
恐竜の化石を発見したというのも、
「自然物の発見」ですよね。 |
青柳 |
うん、そうですね。 |
糸井 |
アウグストゥスの別荘なら、
両方にかかっていますよねえ。 |
青柳 |
そうなんです。
ですから、見事な彫刻とか、
細工のすばらしいブロンズの壷とか、
それから壁画とかさまざまなものが出てきます。
一応私有地ですから、イタリア政府が
そういった美術品を買い上げるのですが、
その金額は、すごいお金になるでしょうね。
いろいろなものをあわせると、
金鉱以上の価値があるということも、ありえます。 |
糸井 |
発掘する時に、地下水は出ないんですか?
何せ、掘るとなるといちばん悩まされるのが、
地下水の問題ですよね。 |
青柳 |
ずっと火山の堆積物になっていますから、
さいわいなことに、水の心配はないんです。 |
糸井 |
うらやましいなあ。
それそのものが巨大な美術館であり、
博物館であるというところでしょ?
しかも、保存もいいわけですから。 |
青柳 |
そうなんですそうなんです。
ですから、発掘そのものは5年か10年か、
どれだけかかるかわかりませんが、
終わったらそこを
フィールド・ミュージアムにして
そのまま博物館にしようと思っています。 |
糸井 |
そういうことですよね。 |
青柳 |
はい。 |
糸井 |
イタリアに発掘調査に行く時も、
インターネットをつないでいるんですか? |
青柳 |
ええ。
来年から「アウグストゥスの別荘」の発掘を
やる時には、テレビカメラをつけて、
インターネットで日本でもアクセスできるように
したいなあ、と現在考えている最中です。
その下で我々は汗水たらしながら働いている。
常に映像に残していれば、
われわれがどこかから何かを持ってきて
発掘現場に埋めたりしていない証明にもなるわけです。 |
糸井 |
なるほど、それもいいですねえ。 |
青柳 |
大学院の頃から、
留学している時からのイタリアの人脈とか、
あらゆるものをトータルに駆使して、
ぼくは来年からの発掘を、
最後の仕事にしようと思っているんです。
何年かかるかわかりませんが。 |
糸井 |
かっこいいなあ。
遺跡を見つけないままでも
充分におもしろい人生だったでしょうが、
見つけてからが、またワクワクですね。 |
青柳 |
そうなんです(笑)。
もう来年からは大変ですよ。
向こうの学者からは、よく
「現地の学者から嫉妬を買わないようにうまくやれ」
と注意されていますね。 |
糸井 |
嫉妬は当然ありますよねえ。
まずは、馬券当てたみたいに思われますもんね。 |
青柳 |
そうそう。
だから、そういうこともあって、
新しい資料でも何でも、
情報公開性を高めてやろうと思っています。 |
糸井 |
いよいよ堀りはじめるのは、いつですか? |
青柳 |
来年の6月ごろからです。 |
糸井 |
それまでにいろいろ済ませておく? |
青柳 |
なるべく向こうに、のんびりいます。
500平米の宿舎も、今、整備中なんです。 |
糸井 |
何年計画なんですか。 |
青柳 |
いちばん短くても5年はかかりますね。
ちょっと延びると7年ぐらい。
それからあとは、
修復とか何とかで、3年かかるのかな?
(つづきます) |