糸井 | そういえばね、ちょっと前のことですけど テレビ番組の仕事で 京都から東京まで飛行船で移動したんです。 |
安森 | そりゃ、おもしろそうだ。 |
糸井 | そのとき、人間って 「地形」との関係で生活をしてきたんだなあって、 なんとなく、感じたんですよ。 |
安森 | 飛行船のなかから。 |
糸井 | そう、だから 今の筑波の話を聞いてて思ったんですけど、 ある土地に、誰がどんなふうに住んでるかってのは、 長い時間の積み重ねとして、あるんだなって。 |
安森 | うん、うん。 |
糸井 | だからね、人工的に作った都市が 廃墟になっていくってことの「自然さ」なんかも なんだか、わかったんですよ。 |
安森 | だって、おかしいもんね、そんなの。 たとえば、静岡県ひとつとっても |
糸井 | 島なんかも、おもしろいですよね。 たとえば、中央に山脈があったとする。で、その島の北側から南側に その山脈を越えなければ行けないとすると、 地図上の直線距離が「10キロ」しかなくても、 船で、ぐるーっと回るんですよね。 |
安森 | ああ、おもしろいね。 |
糸井 | だからじつは、 東北のなかでも 盛岡と仙台はつながってなかったり‥‥。 |
安森 | うん、そういうことを考える場合、 「距離」に加えて、 「時間」もからんできますよね。 |
糸井 | うん、うん。 |
安森 | たとえば、 東京・名古屋間は「1時間半」でしょ。 |
糸井 | ええ。 |
安森 | ところが、その途中の「松本」に行くには、 黙ってても「2時間半以上」かかる。 |
糸井 | しゃべってても(笑)。 |
安森 | うん、2時間半といったら、 新幹線で大阪まで行けちゃいますからね。 |
糸井 | ええ。 |
安森 | 「距離」に加えて「時間」の軸を考えると 日本の地形って、ずいぶんおかしくなる。 |
糸井 | ダイナミックになりますよね。 ‥‥それじゃ安森さん、「街」については、どう思っていますか、今? |
安森 | ものすごく短期間に変わっていくもの、でしょう。 たとえば、お店が一軒、できるだけで。 |
糸井 | ああ‥‥風景が一変しちゃう。 |
安森 | なんというか、生きものですよ、街って。 |
糸井 | いやあ‥‥なるほど。 |
安森 | このあいだ、博多に「天神ロフト」をつくったんですけど、 あのお店が、買いもの客の流れを 一気に南へ引っ張ってきたと言われてるんですよ。 |
糸井 | ええ、なるほど。 |
安森 | でもね、たとえば仮にですよ、 もっと別の地域に「すごく人の集まるお店」が 一軒でもできちゃったら、 いまの「天神ロフト」の場所は たちまち「街はずれ」になっちゃうかもしれない。 |
糸井 | ははぁ‥‥。 |
安森 | 天神が、少しずつお客さんを引っ張ってきて もう「あっという間」でしょうね。 |
糸井 | そのスピードなんですね。 |
安森 | これからの時代、街の中心部に住んでる人たちが じょじょに、変わってくると思うんですよ。 |
糸井 | ああ、そうですよね。 |
安森 | まず、巨大ショッピングモールが 毎日の日用品がひととおり揃えられるような 中規模の商店街が必要になってくるはず。 |
糸井 | 商売のしかたも、 それに応じて変わっていくんでしょうし。 |
安森 | だから、これからの10年というのは、 中規模の商店街の集まりで、 ひとつの街が成り立っていく時代に なるんじゃないかなって。 |
糸井 | ああ‥‥それについては、 ネット上でも、そうなるだろうと思います。 |
<続きます!> | |
2008-08-12-TUE |