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たまたま高校時代に、
数学とかの授業の席が隣だったともだちが、
ちょっとおもしろいやつで、
一緒に数学の授業をきかないで
ゲームをやって遊んでたんです。 |
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その子は……なんていうか、
わたしが作ったものをよろこんでくれる、
わたしにとっての最初のお客さんなんです。
ユーザー第一号なんですよ。 |
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つまり、お笑いの得意なやつに、
笑ってくれるやつがいたように──。 |
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漫画家の話とかとおんなじですね。
ぼくにとってはそれは誰だったんだろうとか、
思いだしながら話をきいていたもの。
少年時代に「相方」が見つかるとか
「読者」が見つかるというのは、
ほんとにすごいことですよね。
ときにはそれが家族だった人もいるだろうし……。 |
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はい。
そいつとは、
やっぱりいまでも年賀状のやりとりは
ずっとありますけど。
人間はやっぱり、
自分のやったことをほめてくれたり
よろこんでくれたりする人がいないと
木にはのぼらないと思うんです。
ですから、
高校時代に彼と出会ったことは、
わたしの人生にすごく影響を
与えているんだと思いますね。 |
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それがぜんぶの
おおもとになっているんだろうなぁ。 |
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当時、マイクロコンピュータという
言葉はもうありましたが、まだ、
個人用のコンピュータはなかったんです。 |
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なんとなくわかった。
ぼくはそのころ、
仕事で海外のロケに行けるように
なっているんですが、ロスとかで、
弾けもしないのに
いいギターを買っているんですね。
「おまえ、日本に持っていったときに
『新品だ』というと税金をとられるぞ!
だからこれが中古だということの証明書を、
いまからオレが書いてやるから、
まぁ、そこで待ってろ……」
思いだすと、そういっていた
現地のギターショップの店員の
たたいていた電卓が、たぶん、
岩田さんがたたいていたものなんじゃないかなぁ。
つまり
「はやいもの好きの
エレクトリックギターのオタクが、
得意そうに持っていた最先端のメカ」
といいますか。 |
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はい。
その電卓はへんな電卓でね、
「=」のキーがないんです。
たとえば一と二を足すときは
「1」を押した後に
「ENTER」のキーを押すんですね。
で、「2」を押して、
最後に「+」を押すんです。
日本語のようなんです。
「1と2を足して、
3と4をかけて、
12を引くと、いくらですか」
というようなかたちで
押していくんですけど、
もう「=」がないだけで、
ふつうの人はさわれないじゃないですか。
「そのさわれないものを
自分は自由に使いこなす」
というのが、おもしろいわけです。 |
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だからまさに糸井さんがおっしゃった
その感じだと思うんです。
そういうものだったんですよ。
その二年後ぐらいに、
アップルコンピュータが出てくるんですね。 |
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アップルコンピュータを
運んで歩いていたというバイトのやつを、
ぼくはそのずいぶんあとに
雇ったおぼえがあるんですが、
バイトに来るのにも
いつもでかいコンピュータを持ってくるんです。
そいつは「これがあればなんでもできる」と
いいはってた(笑)。 |
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ええ。
「コンピュータ=無限の可能性」の時代ですね。 |
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岩田さんはきっと、
一台ずつぜんぶ進化させてったわけでしょう? |
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コンピュータになにができるのかということを、
源流から見ていた
みたいなところがあるんですね。 |
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ですからわたしは
コンピュータへの幻想はすぐになくなりました。
コンピュータが得意なことはなにか、
苦手なことはなにかということは、
まぁいちおう、高校生のときに
ちゃんとわかっていたと思うんですね。 |
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親が「……電卓だろ?」という
機械をいじっていたころからわかっていた? |
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いわば、「スーパー電卓」が
どんどん進化していく姿を、
おもしろがって見ていたんですね。
源流を知っている強みという。 |
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ゲームの世界を、
ファミコンからぜんぶ
ずっと見ていられたのは、
すごいラッキーなことだと思うんです。 |
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そうだろうなぁ。
いまの高校生のときのお話も、
自転車に乗れるようになった
少年の物語みたいですもんね。
きいていてすごくうれしくなるような……
おもしろいなぁ!
岩田さんの仕事の話としては
「技術者どうしでは、
若造がやろうが、
大ベテランがやろうが、
いちばんロジカルにただしくて、
もっといえばエレガントだったりするといい」
というところまでおききしましたっけ。 |
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そして、大学を出て入ったとたんに
先輩がいない職場だから、
自分の判断で仕事をしていたわけです。 |
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ですから会社の「開発」のなかに、
私は先輩がいなかったんです。
わたしは開発の社員第一号なんですね。 |
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うわぁ!
HAL研究所という会社は、
バイトの子を開発第1号にしたんですか? |
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そうです。
正確にいいますと、
HAL研究所というのは、
「そこらのプロ顔負けの能力を持った
バイトの子たちを集めることに、
たまたま成功した会社」なんです。
その物語もちょっとしておきましょうか。 |
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