社会で指揮をとっている社長たちから、じかに学ぶ連載。
第3弾はCulture Convenience Club の増田宗昭さんが登場!
Culture Convenience Club は、TSUTAYA事業の、
おおもとを担う会社、というと、わかりやすいかもしれません。



メモをしては忘れる、
という暮らしをしていると、
「そんなこと言ったっけ?」
ということもあるんですか?

もう、しょっちゅうです。

じゃあ
「おまえ、いいこと言うじゃないか」
「いや、増田さんが言ったんですよ」
ということは、よくあるでしょう?

それもしょっちゅうです。

いろいろきくでしょう?
きいてなるほどと思うことを
人にしゃべるわけだけど、
ぼくはそれを教えてくれたやつにまで
説教しますから……。
「それ、ぼくが言ったんですよ」
ということ、よくあるんです。
過去は消えるから。

……それ、
本人はおもしろいだろうけど、
まわりは、たいへんだね(笑)。

ぼくは「ロジックはあとで考える」みたいに、
すぐには理解されないようなアイデアを
思い浮かぶことがよくあるんです。

増田さんはおそらく
膨大な情報を整理したり
すりぬけたりして
理解の領域を超えた企画に
たどりつくんですよね。

どちらにしても
「すぐに説明できるようなことを
 考えついたのでは自慢はできない」
というアイデアですからね。

はい。
ただ、極端な話、
ぼくにも理解の領域がありますから、
ぼくがわからない企画を持ってくると、
ぼくは否決する権限を持っているので
そのアイデアを殺す可能性があるんです。

ただ、そこを部下がわかっていて、
ぼくの理解の領域にぶちこめたら、
その企画は実現するというわけです。

「比喩」のところで
納得できる企画ならいいんですよね。
ちがうことを言っているかもしれなくても、
そこのところで納得できれば、
社員の企画にもゴーサインを出せる。

そうです。
TSUTAYAをはじめた時から、
ぼくはいずれは店舗は
三〇〇〇店を超えると確信していました。

情報を共有し合う社会には
かならずTSUTAYAが必要になる、
という単純なメッセージがあったのですが、
そんなことをいわれても
ふつうはわからないわけです。

「ビデオの本質は
 メディアだから本と一緒でしょう」
ということも、
もちろんまだ数店舗のころには
よくわからないわけで……

だからこちらとしては、
フランチャイズのオーナーさんには、
はじめにはそんなに
概念的なことを言うべきではないんです。

だから、
わかっていただけないときには
「もうかりまっせ!」と。

「……もうかるのか!」それがあって、
ようやく、オーナーさんは
実行できるじゃない。

増田さんの「もうかる」の意味は
「人が欲しがることをやります」ですからね。
はい。

その人にとっての
いちばんわかりやすいメッセージは
「もうかります」なんです。

実際に店舗をやってうまくいくと、
オーナーさんの理解の領域は
確実に広がるんですよね。

いきなり
「TSUTAYAは
 情報流通革命の拠点だ!」
とおっしゃったりするわけで……

「フルマラソンを
 走れるようになった素人」
みたいになるんだ。

増田さんは原点は宗教家ですけど、
やっていることは教育者なんですね。
まあ、決めつけるつもりは
ぜんぜんないですけど。

(笑)人に教えるのは
好きですよ、ぼくは。
いま、教わっているおもしろさを
ぼくは、感じてるわけです(笑)。

増田さんは教えながら
「ここは自分でもわかってなかった」
と考えるから、
またおもしろくなるわけですよね?

そうです。
増田さん、
社長にしかなれない人ですね……
これ、社員でこういう人がいたら、
この人を制御する人が
必要になるわけでしょう?(笑)
いや、だけど、
金は稼ぐからいいんじゃないですか?
この人を雇える社長がいたら
おもしろいでしょうね……
あ、そうか、でもいま、
社員たちがそれをやっているわけか!
そうなのよ。
社員の集団が、
増田さんっていう人を
いちばんはたらく社員として使ってるんだ。
はい。
ぼくの書いたメモをもとに
ぼくをマネジメントしてるやつがいるんです。

「これを書いてください」
と書かせるわけで、
ぼくはだからその書類をワーッと書く。

そういうことを
ずっとやっていることについては、
飽きたりはしないんですか?

ぜんぜん。
やりたいことを
まだぜんぜんやってないですから。

ぼくはうちの会社を
企画会社として世界一にしたいんです。
「あそこに頼めばすごいよ!」と──。

つまり、
外とのつながりで
生きる会社にしたいということですか?

そうです。

このへんでいよいよ、
というところですが、
ディレクTVの試みは
まさに外の会社とのつながりの
事業だったわけですが……
率直にいって、なにがいけなかったのですか?

ひとえにぼくの能力じゃないかなぁ。

おぉ! シンプル!

わかりやすいけど、実際にそうですもん。

そこでいう能力というのは、
政治力ということも含めてですか。

いろいろあるんですけど、
まずは「英語ができないこと」。
もしもあのとき、
ぼくが英語をしゃべれていたら、
結果はちがいました。

2005-04-06-WED