ほぼ日 |
(担当、横から入りました)
横里さん、付箋が気になるんですけど。
私物の『Say Hello!』にびっしりと付箋が。 |
横里 |
これは、勉強したところにはりました。
たとえば、寝るかオッパイかの生活に、
“遊び”が加わってきたっていうときに、
ちょっとウロコが落ちるわけです。
というのは、
こないだ、しりあがり寿さんと
ご飯食べてるときに、しりあがりさんが、
呉智英さんに会って、
「人生の目的は、
金か、名誉か、モテか、ひとつだ。
ふたつ選んじゃダメだ」って言われて、
しりあがりさんが悩んでたんです。
横里くんはなんだろうね? って。
ぼく、なんだと思いますか? っていったら、
横里くんはモテだね、って言われて、
ショックで(笑)。 |
永江 |
え、しりあがりさんに言われたの? |
横里 |
ぼくはモテたくて生きてたんだ、って。 |
糸井 |
あー。 |
永江 |
ま、しりあがりさんは、
あんまりものを深く考えて‥‥(笑)。 |
糸井 |
しりあがりさんはそういうことを言うのは、
好きよ(笑)? |
横里 |
それでちょっとショックを受けてる
自分がいたんですけど、
『Say Hello!』を読んだときに、
“遊ぶ”ってあるな、って思ったんですよね。
お金とか名誉とか、モテ以外の。
そういう意味で教えてもらうのがいっぱいあって。 |
糸井 |
ああ、ああ。つまり、
“遊ぶ”って、生物そのものの、
基本形だもんね。 |
横里 |
そうなんです、そうなんです。そういうとこに、
いっぱい教えてもらったんですよね。
なんかこう、ケンカが始まって、
社会性を身につけていくってところとか、
そっかー、ケンカもしなきゃな、みたいな。 |
柳瀬 |
あははははは。 |
横里 |
バカみたいですね、ぼく、なんか(笑)。 |
糸井 |
横里編集長が面白いのはね、
遠くに見えることも
自分に引きつけて考えるんですよ。 |
柳瀬 |
そう。で、そういう視線をいただいて見ると、
すごい楽しいんですよ、うん(笑)。 |
永江 |
ところで‥‥、初版が5万部って、
どういう根拠なんですか? |
糸井 |
たしかに驚かれる数字かもしれないね。 |
ほぼ日 |
まず最初に、1,780円って決めたときに、
5万部刷らないと、
どう考えても無理だったんですよ。 |
横里 |
だから5万部を刷ろうと。 |
ほぼ日 |
で、そこから考えよう、っていって。
残り2万を切ったときに、
そろそろ増刷を考え‥‥。 |
糸井 |
紙の手配とかもあるしね。 |
ほぼ日 |
紙がものすごい手に入りにくいっていうんで‥‥。 |
永江 |
残り2万っていうカウントで、
増刷を考えるっていうのが、すごいよね(笑)。
2千じゃなく(笑)。 |
柳瀬 |
そうですよ、2千じゃなく。 |
ほぼ日 |
紙が手に入らなくて、
とにかく書店に切らすのは絶対にイヤだと。
手に入んない日を1日でも作るのはイヤだから。 |
一同 |
(笑)。 |
糸井 |
おお、みんな笑ってますよ。 |
ほぼ日 |
あれ? 笑われることだったんですね(笑)。
それで、早めに手を打とうとして、
紙も手に入りにくいし、
何ヶ月待ちになる可能性があるっていう
話を聞いたりしたもんだから。
そんなことはうちは考えなくても、
印刷屋に考えてもらえば
ほんとはいいんですけど(笑)、
いろいろ余計な知識が入ってきて、
早く決めようっていって、じゃあいくつだろう。
そうすると、重版なんだけど、
あまりに初版に手をかけすぎていて、
最初の予算より相当オーバーしている。
だから重版だからといって
すごく安くなるわけではありません!
って、印刷会社が言ってきたわけですよ。 |
柳瀬 |
ぐははははは。 |
ほぼ日 |
そうすると、やっぱり初版なみに
いっぱい刷らないことには(笑)。
っていうのが、まあ、ひとつ。 |
柳瀬 |
あ、なるほど。 |
ほぼ日 |
それと、もう1コは、10万売れたところで
次のスタートだろうと考えていて。
そのコンセプトは決めてあるんだから、
だったら10万までは刷っても
いいんじゃないかっていう考え。
と言いながら悩みつつ、
3万も5万も変わんないだろう、みたいな(笑)。
で、もう10万売ることにしようよ、って。 |
糸井 |
いいでしょう?(笑) |
永江 |
いやぁー!
すべての出版社がこうだったら‥‥
楽しいですね(笑)。 |
柳瀬 |
ははははははは! |
糸井 |
世の中が変わると。いや、ものすごい、
言いわけじゃなくて本気で思ってることは
それなんですよ。つまり、
他とおんなじことしてたんじゃ、
試してみました、って言えないんですよ。
で、単純に言うと、これを、人間だと考えて、
自分ちの息子だとするじゃないですか。
そのときに、この子は野球の才能があるって
いったときに、グローブは買ってあげないけど
上手くなれっていうのは、まずいでしょ。
それとか、大リーグの試合を
見せてあげたいじゃないですか。ね。
こう、いろいろ考えると、つまり、
それだけの素質がある子だって
お父さん言ったんだったら、
そんだけのことはするぞと。
それが、部数なんです(笑)。 |
永江 |
ははははははは。 |
糸井 |
だから、ま、結局届きませんでした、
っていう結論になるまでには、
まだまだ時間があるわけで。
その、そうなったときに、
今度は次のことをおれたちが
練習しなきゃなんないんですよ。
つまり、ものすごく刷っちゃった分が
こんなにあるんですけどどうしましょう?
って。そのときの練習は、
そのときすればいいと思う。
で、10万までは、引かない(笑)。 |
永江 |
あの、筑摩書房が
『金持ち父さん貧乏父さん』を出したときに、
なんか90何万部かいって、
ロバート・キヨサキさんが来日っていって。
で、それで、編集だったか営業だったか
どっちかが、ま、重版無理矢理して、
半端な数を重版にしたのかな?
で、それでなんか、資材部かなんか、
著者来日するから、無理矢理ミリオンセラーって
いうことにしてるだろう? って、
もっとその、慎重な数字に書き直されて。
ま、でも結果的にあれはミリオン越えたんで
あのとき刷ってもよかったんだけど。
ここ10年ぐらいの日本の出版界では、
そういう筑摩のように石橋叩いて重版するのが、
あるべき出版社の姿だよね、
って言われている中に、
初版5万、さらに重版5万、
ボンボンッていうのは、
なんか、爽やかでいい(笑)。 |
糸井 |
やっぱり著者来るんだったら、あと3万だったら
3万刷っとこうよ! っていって、
いやー、売れねぇなぁ、
やっぱり売れなかったなぁ、っていうのが、
やっぱりぼくはね、商いだと思うんですよ。
刷っちゃったことが、
自分の足引っ張る理由はまったくないんですよね。
だから、その、戦略として10万っていうのが、
まあ仮にあの城を落とせみたいな
ゲーム性だとしたら、
城に行くまでに何人死人が出ようが、
あの城まで行くと(笑)。
っていって、ダメだったときに、
城まで辿り着くかどうかは、
もしかしたら援軍が来るのかもしれないし、
雷が落ちて、なにかが全滅するのかも
しれないし(笑)。でも、損はしないですよ、
実際にはね。だから、誰かのこう、
中間管理職のお手柄を言うために
部数をどうのこうのするのは、
出版界を痩せさせてるんじゃないかなっていう、
その、ことを言いたいためにやってる(笑)。 |
横里 |
でも、それは当たってると思いますね。
みんなやってないですよね、今。 |
糸井 |
当たってますよね。やってないですよ。 |