本の勉強。
『Say Hello!』をツールに出版を学ぼう。


■第5回■
  『Say Hello!』に教わったこと。
『Say Hello!』の出版的実験。

ほぼ日 (担当、横から入りました)
横里さん、付箋が気になるんですけど。
私物の『Say Hello!』にびっしりと付箋が。
横里 これは、勉強したところにはりました。
たとえば、寝るかオッパイかの生活に、
“遊び”が加わってきたっていうときに、
ちょっとウロコが落ちるわけです。
というのは、
こないだ、しりあがり寿さんと
ご飯食べてるときに、しりあがりさんが、
呉智英さんに会って、
「人生の目的は、
 金か、名誉か、モテか、ひとつだ。
 ふたつ選んじゃダメだ」って言われて、
しりあがりさんが悩んでたんです。
横里くんはなんだろうね? って。
ぼく、なんだと思いますか? っていったら、
横里くんはモテだね、って言われて、
ショックで(笑)。
永江 え、しりあがりさんに言われたの?
横里 ぼくはモテたくて生きてたんだ、って。
糸井 あー。
永江 ま、しりあがりさんは、
あんまりものを深く考えて‥‥(笑)。
糸井 しりあがりさんはそういうことを言うのは、
好きよ(笑)?
横里 それでちょっとショックを受けてる
自分がいたんですけど、
『Say Hello!』を読んだときに、
“遊ぶ”ってあるな、って思ったんですよね。
お金とか名誉とか、モテ以外の。
そういう意味で教えてもらうのがいっぱいあって。
糸井 ああ、ああ。つまり、
“遊ぶ”って、生物そのものの、
基本形だもんね。
横里 そうなんです、そうなんです。そういうとこに、
いっぱい教えてもらったんですよね。
なんかこう、ケンカが始まって、
社会性を身につけていくってところとか、
そっかー、ケンカもしなきゃな、みたいな。
柳瀬 あははははは。
横里 バカみたいですね、ぼく、なんか(笑)。
糸井 横里編集長が面白いのはね、
遠くに見えることも
自分に引きつけて考えるんですよ。
柳瀬 そう。で、そういう視線をいただいて見ると、
すごい楽しいんですよ、うん(笑)。
永江 ところで‥‥、初版が5万部って、
どういう根拠なんですか?
糸井 たしかに驚かれる数字かもしれないね。
ほぼ日 まず最初に、1,780円って決めたときに、
5万部刷らないと、
どう考えても無理だったんですよ。
横里 だから5万部を刷ろうと。
ほぼ日 で、そこから考えよう、っていって。
残り2万を切ったときに、
そろそろ増刷を考え‥‥。
糸井 紙の手配とかもあるしね。
ほぼ日 紙がものすごい手に入りにくいっていうんで‥‥。
永江 残り2万っていうカウントで、
増刷を考えるっていうのが、すごいよね(笑)。
2千じゃなく(笑)。
柳瀬 そうですよ、2千じゃなく。
ほぼ日 紙が手に入らなくて、
とにかく書店に切らすのは絶対にイヤだと。
手に入んない日を1日でも作るのはイヤだから。
一同 (笑)。
糸井 おお、みんな笑ってますよ。
ほぼ日 あれ? 笑われることだったんですね(笑)。
それで、早めに手を打とうとして、
紙も手に入りにくいし、
何ヶ月待ちになる可能性があるっていう
話を聞いたりしたもんだから。
そんなことはうちは考えなくても、
印刷屋に考えてもらえば
ほんとはいいんですけど(笑)、
いろいろ余計な知識が入ってきて、
早く決めようっていって、じゃあいくつだろう。
そうすると、重版なんだけど、
あまりに初版に手をかけすぎていて、
最初の予算より相当オーバーしている。
だから重版だからといって
すごく安くなるわけではありません!
って、印刷会社が言ってきたわけですよ。
柳瀬 ぐははははは。
ほぼ日 そうすると、やっぱり初版なみに
いっぱい刷らないことには(笑)。
っていうのが、まあ、ひとつ。
柳瀬 あ、なるほど。
ほぼ日 それと、もう1コは、10万売れたところで
次のスタートだろうと考えていて。
そのコンセプトは決めてあるんだから、
だったら10万までは刷っても
いいんじゃないかっていう考え。
と言いながら悩みつつ、
3万も5万も変わんないだろう、みたいな(笑)。
で、もう10万売ることにしようよ、って。
糸井 いいでしょう?(笑)
永江 いやぁー!
すべての出版社がこうだったら‥‥
楽しいですね(笑)。
柳瀬 ははははははは!
糸井 世の中が変わると。いや、ものすごい、
言いわけじゃなくて本気で思ってることは
それなんですよ。つまり、
他とおんなじことしてたんじゃ、
試してみました、って言えないんですよ。
で、単純に言うと、これを、人間だと考えて、
自分ちの息子だとするじゃないですか。
そのときに、この子は野球の才能があるって
いったときに、グローブは買ってあげないけど
上手くなれっていうのは、まずいでしょ。
それとか、大リーグの試合を
見せてあげたいじゃないですか。ね。
こう、いろいろ考えると、つまり、
それだけの素質がある子だって
お父さん言ったんだったら、
そんだけのことはするぞと。
それが、部数なんです(笑)。
永江 ははははははは。
糸井 だから、ま、結局届きませんでした、
っていう結論になるまでには、
まだまだ時間があるわけで。
その、そうなったときに、
今度は次のことをおれたちが
練習しなきゃなんないんですよ。
つまり、ものすごく刷っちゃった分が
こんなにあるんですけどどうしましょう?
って。そのときの練習は、
そのときすればいいと思う。
で、10万までは、引かない(笑)。
永江 あの、筑摩書房が
『金持ち父さん貧乏父さん』を出したときに、
なんか90何万部かいって、
ロバート・キヨサキさんが来日っていって。
で、それで、編集だったか営業だったか
どっちかが、ま、重版無理矢理して、
半端な数を重版にしたのかな?
で、それでなんか、資材部かなんか、
著者来日するから、無理矢理ミリオンセラーって
いうことにしてるだろう? って、
もっとその、慎重な数字に書き直されて。
ま、でも結果的にあれはミリオン越えたんで
あのとき刷ってもよかったんだけど。
ここ10年ぐらいの日本の出版界では、
そういう筑摩のように石橋叩いて重版するのが、
あるべき出版社の姿だよね、
って言われている中に、
初版5万、さらに重版5万、
ボンボンッていうのは、
なんか、爽やかでいい(笑)。
糸井 やっぱり著者来るんだったら、あと3万だったら
3万刷っとこうよ! っていって、
いやー、売れねぇなぁ、
やっぱり売れなかったなぁ、っていうのが、
やっぱりぼくはね、商いだと思うんですよ。
刷っちゃったことが、
自分の足引っ張る理由はまったくないんですよね。
だから、その、戦略として10万っていうのが、
まあ仮にあの城を落とせみたいな
ゲーム性だとしたら、
城に行くまでに何人死人が出ようが、
あの城まで行くと(笑)。
っていって、ダメだったときに、
城まで辿り着くかどうかは、
もしかしたら援軍が来るのかもしれないし、
雷が落ちて、なにかが全滅するのかも
しれないし(笑)。でも、損はしないですよ、
実際にはね。だから、誰かのこう、
中間管理職のお手柄を言うために
部数をどうのこうのするのは、
出版界を痩せさせてるんじゃないかなっていう、
その、ことを言いたいためにやってる(笑)。
横里 でも、それは当たってると思いますね。
みんなやってないですよね、今。
糸井 当たってますよね。やってないですよ。

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2005-04-13-WED


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