本の勉強。
『Say Hello!』をツールに出版を学ぼう。


■第6回■
  幻冬舎の方法。
見城徹さんの英断。

横里 幻冬舎が、やっぱり去年もメガヒットを
3本くらい出しましたよね、
『キッパリ!』もそうですけど。
で、幻冬舎の広告を、
代理店の担当してる人と
よく飲むんですけど、
その人に、社長の見城徹さんって
どういう仕事してるんですか? って訊くと、
広告を、決済から企画・制作まで
全部担当するのが、
いちばん大きな仕事だというんです。
初速が8千だったりとか
1万いかないような本の
売上をさらにのばすために、
朝日の全面広告を打つっていう
判断から制作まで、
直接社長がするらしいんですよ。
そんなのふつうの出版社は
絶対できないじゃないですか。
それで、全面広告を打つとともに、
そこでいきなりまた5万とか、
ほんと刷るんですよね。
で、それはものすごく責任が問われることだし
お金もかかるし、失敗したら責められますから、
それをぜんぶ考えながら。
柳瀬 トップの判断でやってる。
横里 ええ、やってるらしいんですよね。
ふつうの会社、稟議通って、
グルグル議論して
けっきょくポシャるやり方ですよね。
で、まあ、その代理店さんの人が言うには、
やっぱりそれができるから
あの会社はヒットが出るっていう。
もちろん失敗もいっぱいしてますけど。
糸井 してますよね。
横里 ええ。それはね、さすがだなと思うんですよね。
ふつうの会社、今それがぜんぜんできなくなって、
うちもできてないんですけど(笑)。
あえてそういうときに
それをやっていくっていう。
糸井 でも、そっちのほうが
ぼくはほんとはふつうだと思ってるんですよ。
だから、10チーム、本のチームがあったときに、
1年間通してみんなが
10万円ずつ儲けましたっていう会社って、
利益が100万円ですよね。
柳瀬 そうですね。
糸井 でも、10チームあったときに、
ここは100万円損しました、
ここは1,000万円儲けましたっていうのが
デコボコになってて。
で、1,000万円がひとつあったらOKですよね。
だから、たぶんほんとは、仕事ってそうですよね。
横里 そうですねー。
柳瀬 あの、本ってすごく、
出してみないとわかんないじゃないですか。
だからぼくは糸井さんに
この部数の設定のしかた聞いたときとか、
わりと目からウロコの部分というか、
ま、考えてみりゃ、他のビジネス、
みんなそうだよな、っていう。
目標をまず決めて、
そこにいくタクティクスを
みんなで考えようっていう発想ですよね。
ところが出版って、定価とか仕組みが、
もうほとんど所与の条件のようになってるから、
「1,500円でこのサイズのこの著者だと、
 とりあえず6,000部」っていう
計算になったりする。
幻冬舎さんが数少ない例外ですけど、
どこの出版社もだいたい同じなのは、
まず広告予算がだいたいあらかじめ
決まってる。さあこの本を売ろう、
と思ったときでも、
追加で広告出すっていうのは、
なかなかみんなできないんです。
よっぽどの大ヒットにならない限りは。
たとえば永江朗さんも例に挙げていた
『金持ち父さん貧乏父さん』とか
かつての『五体不満足』のように、
ドライブかかってる瞬間じゃないと
なかなかできなくて。
幻冬舎ぐらいですよね、
それを、意図的にやってるのは。
横里 そうですね、初速でやるのは、
力技ですよね、あそこは。
糸井 あと、売れなかったことも
あり得るって知ってて
やってるんですよね。
柳瀬 なにかをいっぱい売ろう、
いっぱい読ませようってなったときに、
足し算じゃなくて
掛け算をしてかないと、
絶対伸びない瞬間があって(笑)。
でも、うちもそうですけど、出版社、
みんな足し算と引き算だけでやってる。
糸井 なんでそうなるんだろう?

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2005-04-15-FRI


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