── |
当事者意識、という言葉が出てきましたが、
それってどうすれば持てるんだろう‥‥
ということについては、どう思われますか?
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篠田 |
うん、この前ね。
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── |
はい。
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篠田 |
「当事者意識」を
とりあえず3つの要素に分解してみたんです。
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── |
おお、なんと!
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篠田 |
いや、私、好きだから、こういうの(笑)。
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── |
はい(笑)、ぜひ聞かせてください。
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篠田 |
ま、そんなにたいしたことでもないんですが‥‥、
まず1つめは「自分で決める」こと。
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── |
たしかに、最近思うのは
「ここで自分が決めないと、誰も決めてくれない」
という場面ばっかりだなあということです。
僕は、そのことに慣れていなかったので、
糸井事務所ではたらきはじめたばかりのころ、
「自分で決める」を引き受けるのに、
けっこう時間がかかったような気がします。
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趙 |
「自分で決める」って、言いかたを変えると
何か難しい課題に突き当たったとき
「どうしよう?」じゃなくて、
「ああしようか、それともこうしようか」
というふうに
前向きにアイディアを出していく、いうことですよね。
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篠田 |
そうそう、そうなんです。
悩んでいて何にも決められずに
半日も経っちゃった‥‥
とかだと、仕事になりませんから。
で、2つめが、
「自分で決めた」ことから生じる「結果」を
良くも悪くも、引き受けること。
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── |
なるほど、引き受ける。
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篠田 |
で、3つめが、
「自分で決めて、その結果を引き受ける」
というプロセスを、
自分ひとりのなかで「閉じず」に
周囲に見える、きちんと開いた状態でやる。
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趙 |
つまり「ごまかさない」ってことですね。
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篠田 |
「約束する」と言い換えても、いいかも。
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── |
「当事者意識」と聞くと
つい「自分が、がんばればいいんだ!」みたいに
内側に入ってしまいそうになりますが‥‥。
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篠田 |
それだと、ダメですよね。
やっぱり、
読者やお客さまに、もっとよろこんでもらったり、
約束したことを守るためには、「ひらく」が必要。
まわりに「ひらいて」さえいれば、
「あ、これ、できないかも」というときにも
はやめに相談に行ったりとか、できると思うんです。
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趙 |
うん、うん。
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篠田 |
反対に、自分の内側に閉じこもっちゃうと
ヤバくなっても相談しない。
で、ひとりで何とかしようとしてズルズルズル‥‥
みたいな仕事の仕方って
本当の意味での「当事者意識」では、ないですから。
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── |
ひらいていくこと、約束すること。
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篠田 |
インターネットというのはバーチャルな場ですけど、
糸井事務所の仕事って、
全員が、お客さんと「直接対面」してるんですよね。
それは、原稿を書く人やデザイナーなど
つくったものを、直接に見てもらえる職種以外にも。
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── |
つまり、管理部門でも。
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篠田 |
はい、読者からのメールは
直接の担当だけでなく、
すべての乗組員に共有されていますから、
1歩先には、読者やお客さまの顔が見えるんです。
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趙 |
逆にいえば、お客さまからも見られてる。
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篠田 |
そう。
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── |
管理部門といえば、
今回は「経理チーム」の募集もありますね。
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篠田 |
そうですね。
たとえば、もし
「今の法規制とか慣行では、こうなんです」
というところに
社内のルールを型通りに「当てはめていく」のが
これまでの一般的な管理部門の姿だったとしたら
糸井事務所の総務や経理や人事は、
もう、いちいちゼロから考えてると言えます。
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── |
ルールありきで考えていないと。
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篠田 |
それを「おもしろい」と思えるってことが
「自分の動機」を大切にすることだし、
その動機に、個々の専門技術を組み合わせて、
今の糸井事務所に
いちばん貢献できるかたちをつくるのが理想です。
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趙 |
やっぱり、会社のルールをつくることの意味って
「乗組員のみんなが
はたらきやすくなるため」じゃないですか。
だから、つくったルールに縛られて
現場の動きが制限されてしまうことになるのは
本末転倒ですよね。
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篠田 |
そうそう、管理部門が
自分たちの仕事をやりやすくするためだけに
ルールをつくる‥‥のではなく、
糸井事務所では
管理部門が「発明」しなきゃならないんです。
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── |
なるほど、なるほど。
ちなみに、冒頭のところで
最近の糸井事務所の「キーワード」のなかに
「企業人と生活者」ってありましたが
これ、僕ら乗組員にも耳新しい言葉だと思いました。
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篠田 |
はい、最近、いろんなミーティングの場で
糸井さんと話していると
よく出てくる言葉だったので挙げました。
つまり「はたらく姿勢」の話なんですけど
「企業人であることと
生活者であることの両方を追求する」
という考えが大事だよねって、話なんです。
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── |
詳しく教えてください。
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篠田 |
ようするに「会社に滅私奉公しろ」か、
「よき家庭人としてがんばれ」か、
どっちかひとつのほうが
一見、まあ、わかりやすいじゃないですか。
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── |
ええ。
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篠田 |
でも、糸井事務所が提供している価値って、
やはり
「ふだんの生活の場面でのうれしさ、よろこび」
ですから、
「家庭人、生活者としての充実」が
仕事のアウトプットに関係するはずなんです。
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── |
なるほど、なるほど。
つまり、ただ単に「プライベートを充実させよう」
みたいな話でもないとういことですね。
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篠田 |
そうですね。
たとえば「虫歯のない会社宣言!」って
あったじゃないですか。
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── |
はい、「乗組員の虫歯をゼロにする」目的で
立ち上げた、珍妙なノリの人気企画です。
ただ、ノリは珍妙でも
大まじめに「ほぼ日、虫歯ゼロ」を追求していて、
読者の関心も高く、
更新のたびに、たくさんの人が読んでくれました。
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篠田 |
あれ、まず「歯が痛いから治療する」というのは
「生活者としての責任」ですよね。
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── |
ええ、なにより自分自身の健康のことですし、
歯が痛くて不機嫌だったら、
家庭の雰囲気にも悪影響を及ぼしてしまうし。
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篠田 |
でも「健康管理」というのは
同時に「企業人としての責任」でもありますよね。
その人の能力が十分に発揮できないことで、
仕事の進捗が遅れたり、
チームのメンバーにも迷惑がかかってしまうから。
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趙 |
だからこそ
「虫歯は放置せずに、きちんと治す」ことが
糸井事務所では
ある意味で「乗組員の責任」でもあるのかなあと。
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篠田 |
ようするに
「企業人としても、家庭人としても
きっちり責任をまっとうしてください」
ということです。
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── |
糸井さんが
「風邪をひいたら、積極的に休んでください。
他の人にうつさない、ということが
風邪をひいた人の責任です」
とよく言っているのと、同じことですね。
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趙 |
その流れで言うと、糸井事務所ではたらく人には
「自己管理」が出来てほしい、
「自分で仕事のリズムをつくれる人」
であってほしいということが、あると思います。
糸井事務所では、乗組員の一人一人が
「企業人と生活者」として
いちばんいいはたらきかたができるように
自分の勤務時間を
できるだけ自由に決められるようにしています。
ややもすると、
どんどん夜型になってしまうタイプの人も
いるかもしれないですが、
周囲とチームを組んで仕事をする以上、
それだと
長く続けることって、できないですから。
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── |
はい。
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篠田 |
‥‥以前ね、某大きな企業ではたらく人と
お話をさせていただいたときに、
「糸井事務所では、
いわゆる大企業的な意味での上司がいないので
自分の動機から、当事者意識でやってる」
と言ったら
「上司が見てないのに
だらけたり、ズルしたりしないんですか」って。
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── |
ああ‥‥でも、それだと「つまんない」ですよね。
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篠田 |
そう、何度も話に出ましたけど、
糸井事務所では
「自分で仕事を生み出していく」のが基本で
それをおもしろがる人の集まりなんです。
そういう人たちの中に混ざるわけだから
「自己」をしっかり「管理」して
意欲的に仕事を見つけられないと厳しいでしょう。
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趙 |
そうならないために、ここでもまた
「周囲にひらいて、約束する」ということが
重要になってくる気がします。
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── |
今回は、3チーム同時の募集ですけれど、
人事担当の趙さんは
どういう人に、仲間になってほしいですか?
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趙 |
そうですね‥‥。
以前、糸井さんと話していたとき
「毎朝、ここへ来るだけで
もっともっと
心も体も健康になれる会社にしたいんだよ」
って、おっしゃってたんです。
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篠田 |
おおー、それはいい会社だ!(笑)
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趙 |
「虫歯をゼロにする運動」なんかは、
すごく具体的な動きですけど、
なんというか‥‥
今よりも、もっと
「ここへ来れば、元気になれる会社」
にしたい。
だから、そういう会社つくりを
いっしょに目指してくださるような人が、
どの職種であっても、理想です。
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── |
篠田さんは、いかがですか?
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篠田 |
やはり、今まで話してきことに関連づけると、
わたしたちにとっても
「ああ、そういうやりかたで
当事者意識をもって、仕事を進めるんだ」
とか、
「あ、そうやって
企業人と家庭人であることのバランスを
取ってるんだ」
という「モデル」になってくださるような人。
そういう人が来てくれたら
ものすごく刺激になるだろうなって思います。
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── |
なるほどー。
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篠田 |
みんな、いいものはすぐ真似しますので(笑)。
「会社の雰囲気に合わせていこう」よりも
できれば、
「自分はこういうふうにやるのがいいと思うので
ぜひ、一緒にやりましょうよ!」
と自然に巻き込んでくれるような人が
加わってくれたら、本望でございます。
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趙 |
そうですね。
「今の糸井事務所ではたらきたい」
じゃなくて、
「この先の糸井事務所を一緒につくっていきたい」
という意識の人に、
手を伸ばしてほしいなと思います。 |
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<おわります> |