人は予約が取れぬお店のコトをスゴイというけれど、
実は、予約をとらぬお店がもっとスゴイ。
飲食店につける序列にもさまざまあって、
例えばこんな序列もある。
1.予約をするだけの価値のない店
2.予約をしなくてもいいお店
3.予約をした方がいいお店
4.予約がなかなかとれないお店
5.予約をとろうとしないお店
香港に一軒。
朝の飲茶がおいしいと
名前が世界中に轟いたお店があった。
評判が評判を呼び、お店がどんどん大きくなって、
それでもときに「満席です」と
お客様を追い返してしまうようなコトがおこってしまう。
予約をとってくれませんか?
と、そうお願いしても、
それはお断りいたします‥‥、と。
お金と名誉を手に入れた人にとって一番悔しいことは、
自分の思い通りにならぬコトがこの世にあること。
お金を積んでも駄目だと無碍に断られること。
何人ものお金持ちが何度も、何度も交渉をして、
あまりにそれがうるさくてお店の人がこう言った。
「予約をお受けすることはできませんが、
朝食時間の1テーブルを買っていただけるのであれば、
お売りすることもできますが」‥‥、と。
さすがにそういえばあきらめるだろう、
と思ったオファーに、
なんと10人近くのお大尽が応じて、
結果、ほとんどいつも「reseved」と
プレートの立つテーブルが
10個近くも出現することになったのですね。
そのうちそれらのテーブルは、
まるで稀少な宝石や
一等地の不動産をもっているような価値を持ち、
使用権が取引されるようにまでなる。
ボクの香港の友人が、
一年間だけそのテーブルを
もっていたことがあったのですね。
「明日の朝、ボクは朝食会があるので、
よければ、そこで朝食をとってみたら?」
と、言われて一度、その店に言ったこともある。
料理は上等。
お茶は最高。
ほどよいサービスと、明るい雰囲気も心地良く、
けれどなによりすばらしいのが、
レストランにはいろうと居並ぶ
何十人もの行列をおしのけ、
お待ちしておりましたと案内されること。
このワガママな贅沢に、君はいったいいくら払ったの?
と聞けば、ロールスロイス一台分くらいかな‥‥、と。
さすがに今、こうしたコストをかけてまで
朝の贅沢を手に入れようという無駄遣いが
流行らぬ時代になったのでしょう‥‥、
その店も予約をとってくれるお店になりはした。
不思議なもので、予約をすればいいんだと思うと
そこの「ありがたみ」が
ちょっと翳って思えるのでしょう。
昔ほどの人気はなくした。
人の気持ちとは複雑なもの。
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