さて、話題の高級料理の立ち食いの店。
ボクは好きかというと、好きじゃない。
なぜ好きじゃないかというと、
それは「なんの工夫もない」店だから。
立って食べる蕎麦はおいしい。
立ったまま寿司をつまむというのも粋で、
東京には立ち食いの、
けれど驚くほど高い寿司屋があったりします。
築地直送のネタを使って、
経験豊富な職人が、
見事な手際でうつくしくすばらしい寿司を握ってふるまう。
銀座の老舗で、座って食べれば2万円とか3万円とかは
当たり前にかかってしまうであろう寿司。
それが立って食べるということで
1万円くらいでたのしむコトができる店。
安い理由は、立ち食いのために長居する客がいないこと。
だから回転がいい。
多くのお客様をもてなすことができるようになる。
なによりサービスをしなくていいから、
人手を節約することができる。
自分の地所でやっている。
だから家賃を払わなくていい。
古くからの店を養生しながら使い続けているから
当然、借金なんてないのでしょう。
安く売れる条件を、ほとんどすべて満たしていて、
そして安く売っている。
しかも、立ち食いをたのしめるような工夫をしている。
実は安くしたところで、
行ってみれば所詮ただの立ち食いの店。
疲れるだけで、二度と行きたくないネ‥‥、
と言われればそれでオシマイ。
だから工夫が必要なのです。
そもそも寿司というのは、立って食べるのに適した料理。
ちょうど一口分の料理が一個づつ提供されて、
片手でたのしく食べられる。
ご飯と魚の切り身の組み合わせの、
「刺身定食」を立って食べるのは
なんだか貧しく、粋じゃない。
そしてこの店。
刺身を売らない。
刺身を売れば酒を売らなくちゃいけなくなって、
立ったままで酒を飲むと疲れてしまう。
しかもおいしい寿司に気持ちを集中できなくなるから、
それであえて刺身を売らない。
刺身を売れば、ご飯がついていない分、
たくさんお腹におさまりもする。
酒と合わせて自然と単価があがるのだけど、
それをあえてしないから、だから立ち食いだけど快適で、
また来たいなぁ‥‥、と思うようになるわけです。
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