けれど5年ほど前からでしょうか。
全国にチェーンを作った
会社の業績が悪くなってきはじめる。
外食産業全体に対して厳しい経済環境。
でもすべての飲食店の営業内容が悪いかというと
決してそんなことはなく、
けれど大手チェーンだけはなかなかお客様を集めることが
出来なくなりはじめてきたのです。
そうなることはわかっていました。
飲食店というのは人が働き、
人と人とがふれあうことで
初めて売上を作ることができる産業。
人が働くということは、
どんなにシステムを作っても
そこに誤差が生まれるということ。
誤差のない調理を目指せば、
冷凍食品や調理済みの食品を電子レンジで温め、
提供することが一番簡単。
でもそれはコンビニエンスストアが得意とすることで、
飲食店のすることじゃない。
誤差をなるべく出さぬようにするには、
組織のトップが丁寧に営業現場を訪ねてチェック。
チェックするだけじゃなく、
現場の人に語りかけたり、
働きかけたりしなくちゃいけない。
だから大きなチェーンになるのがむつかしい。
この弱点をなんとか克服しようと生まれたのが
フランチャイズというシステム。
商売のやり方や料理の作り方を教えて上げる。
代わりに現場に行って、働いている人の面倒を見て‥‥、
というのがフランチャイズというシステムで、
全国チェーンのほとんどがそのやり方で、
誤差をひたすら小さくするよう努力した。
ただそれも、ハンバーガーとかドーナツだとか、
日本にもともとなかった料理であれば機能する工夫。
けれど料理というのは
そもそも地域の文化に根ざしたものなのですネ。
小さい国土とはいわれるけれど、
ずっと長らく日本は異なる独自の文化を持った
地域の集合体だった。
だから料理の味付けや、
好みが地域でまるで違って当然なのです。
だとしても、チェーン店である以上、
味は全国共通でなくてはやっぱり具合が悪い。
飲食店の全国チェーン化は
どう考えてもどこかに無理のある話。
飲食店は地域のビジネス。
全国チェーンを目指すのでなく、
「地域一番企業」を目指すコトがいいんですよ‥‥、
と、経営方針を変更するよう勧めるコトで、
外食産業がちょっとでも健全な方向に向かっていくよう、
お手伝いをしたこともある。
けれど、この「地域」という言葉が厄介なのです。
街が地域という単位なのか。
一つの県が地域なのか。
人によっては関東地方。九州全部が地域という。
中には日本全国がひとつの地域という人までいて、
結局、これだという飲食店を成功させる
新たなプログラムを考えだすには至らなかった。
ボクの頭のなかにはこういう図式がありました。
日本全国、場所を選ばずできる商売=チェーン。
経営者の個性と努力で、
お客様から愛される商売=個店。
ボクは後者が大好きで、
けれど後者は数店単位でしかお店を出せない、
まさに生業。
企業になるのがむつかしいんだ‥‥、と、
ずっとそういうふうに思っていたのです。
そんなところに博多うどんの本を書いてみませんか‥‥、
と、話があって、それで博多に何度も行った。
ボクはすぐに書けると思った。
博多うどんを経営する人の個性と努力。
そしてそれを愛する地域のお客様。
個性的だからこそ、他の地域にでていけない、
生業的なお店ばかりの話を書こう‥‥、
と思ってそれで現地に行った。
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