昔の日本の食卓は、汗かく食卓だったのですね。
エアコンはない。
夏は暑くて、ならば冬は寒いから汗をかかないか?
というと、寒い食卓で熱々の料理をつつくと汗が滲んだ。
冬空の下、屋台のラーメンを一杯食べると
体が火照って水を飲みたくなったものです。
水をおいしく感じさせる、
化学調味料というものに無防備だった時代は
そういう時代だったと納得します。
翻って今の日本。
汗をかく食卓は少なくなった。
水をガブガブ飲みながら、
食事をするようなシチュエーションに
年に何回遭遇するかという具合。
過ぎた化学調味料をおいしいと勘違いできる
食事の機会が減った。
それに化学調味料が健康に及ぼす
悪い影響のことがとやかくされて
無化調であるということが
「本当のおいしさ」を意味することのようになった。
かつての食卓の花形が、今や悪者。
とはいえそこまで嫌われなくてもいいんじゃないか‥‥、
と思うこともある。
香港に本店を持つ
フカヒレスープのおいしい中国料理のお店。
無化調ブームの中にあって
「当店は適切に化学調味料を使っております」
とわざわざパンフレットに書いて、
無化調ブームに抵抗しました。
曰く。
化学調味料を使わず調理をした上で、
今のスープほどおいしいものを
提供しようとするならば、
販売価格が2倍、3倍。
場合によっては一桁高くなってしまう。
だから適切に。
素材の持ち味を引き立てる程度に使っていることに、
ご理解ちょうだいしとうございます。
そう理由をつけての決断で、今でもずっと繁盛している。
何においても「過ぎるということ」がいけないことで、
適切な知識と良心をもって使われる
化学調味料とは魔法の調味料。
ボクはそれより、「化学的なものではない」というと
言い訳をしながら、無節操に使われる、
とある調味料こそ過ぎるとコワイ! と思っています。
さて来週。
究極の旨味調味料の話をさせていただきましょう。
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