051 超えてはならない一線のこと。その22
「食べ過ぎ」のボーダーライン。

「過ぎる」を考えながら、
食品のちょっとズルイ世界を考えるところまで
来ちゃいました。
添加物‥‥、とかって聞くと、
なんだか体に悪いものって敬遠したくなってしまう。
けれど本当に体に悪いコトは食べ過ぎだったり、
偏食だったりするのでしょうけど、そういう食べ方。
つまり「極端な食べ方」というのは、
その線引きがむつかしい。
だからなかなか改めることができないのです。



昔、体重が煩悩の数を超えてしまったことがあります。
108キロまでは
自分の体重に関心を持っていたのだけれど、
言い換えるなら0.1トン。
1キロ、2キロの増減は誤差じゃないのと、
そう思ったら安心できて食べることに
歯止めがかからなくなったのですね。

どんどん太った。

太り過ぎるとやはり体のいろんなところが変調をきたして、
それでボクは病院に行きました。
まだ若かった頃のコトです。
だから、今すぐにどうこうということはない。
病名を敢えてつけるような症状はないと先生は言う。

そう言われてボクは調子にのっちゃいます。

「ということは、病気ではないんですね。
 このままでいいということですね」

と、言うボクに、先生はピシャリと一言。

「太っているというコトそのものが、
 もう健全な状態ではないんですよ」

と。
そしてこれから一週間分の、
あなたが食べたものを記録してきなさい‥‥、と言う。



自主申告というコトですから、
まぁ、適当に書いておけばいいやと思って、
それぞれの食事を若干控えめに書類にし、
1週間後に先生のところに持っていく。
過少申告というやつです。

それを見た先生。
なるほどといいながら書類を1枚、ボクに手渡す。

「おいしそうなモノを、
 まぁよく食べる人のブログを発見したんですよね」

って、言いながら手渡されたそれはなんと、
ボクがこの一週間食べたものの
あるがままのリストだったのです。
そしてそれを読むと本当によく食べている。
やっぱりこれは食べ過ぎだなぁ‥‥、と思って先生に、
どうすればいいですか? って聞いてみる。

簡単なコト。
口の中に食べるものを入れたら、まず手を置く。
お箸もナイフもフォークも、そしてスプーンも置いて、
口の中の物がなくなるまで絶対次の料理を口に運ばない。
だからなるべく、ハンバーガーとかサンドイッチとか、
手づかみで食べることができるものは口にしない。
蕎麦や、うどん、ラーメンは
必要以上のものが口にはいってしまうことがあるから、
それもなるべく食べぬよう。
あなたは満腹を感じる以上に食べる「早食い」。
ユックリ食べれば、
食べる量は自然に減って痩せますよ‥‥、って。

それ、出来ますか? って聞かれたので、
「むつかしいかもしれません」って答えたら、
「ならば死ぬしかありません」と即答されて、
それでボクはユックリ食べることをした。


痩せました。
本当に痩せた。
0.1トンあった体重が
半年かけて80キロ台まで自然におちて、
体が小さくなっただけじゃなく
胃袋までもが小さくなったような気がした。
そうすればいいということがわかっているのに、
今ではそれを実践できていないというのがちと情けない。

反省です。

そしてそのとき、ユックリ食べるために
大切ないくつかのことを知ることになる。
ひとつは、1人で食べるより2人以上で食べると
食べる速度は遅くなる。
特におしゃべりがたのしい人たちと囲む食卓では、
料理がおいしく感じると同時に、
お腹がすぐに満たされる。
そしてもう1つ。
歯ごたえのない、
なめらかでくちどけの良いモノを食べると過ぎてしまう。
何度も噛んでくうちにどんどんお腹が満ちてく。
だから噛まずに体の中に入っていくようなものは
太る料理でもある。

さて、そんな
「くちどけの良い」ものが世の中には溢れてる。
さて、過ぎた口どけを来週の話題にしようと思います。


サカキシンイチロウさん
書き下ろしの書籍が刊行されました

『博多うどんはなぜ関門海峡を越えなかったのか
 半径1時間30分のビジネスモデル』

発行年月:2015.12
出版社:ぴあ
サイズ:19cm/205p
ISBN:978-4-8356-2869-1
著者:サカキシンイチロウ
価格:1,296円(税込)
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「世界中のうまいものが東京には集まっているのに、
 どうして博多うどんのお店が東京にはないんだろう?
 いや、あることにはあるけど、少し違うのだ、
 私は博多で食べた、あのままの味が食べたいのだ。」

福岡一のソウルフードでありながら、
なぜか全国的には無名であり、
東京進出もしない博多うどん。
その魅力に取りつかれたサカキシンイチロウさんが、
理由を探るべく福岡に飛び、
「牧のうどん」「ウエスト」「かろのうろん」
「うどん平」「因幡うどん」などを食べ歩き、
なおかつ「牧のうどん」の工場に密着。
博多うどんの素晴らしさ、
東京出店をせずに福岡にとどまる理由、
そして、これまでの1000店以上の新規開店を
手がけてきた知識を総動員して
博多うどん東京進出シミュレーションを敢行!
その結末とは?
グルメ本でもあり、ビジネス本でもある
一冊となりました。






2016-03-17-THU



     
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN