おいしい店とのつきあい方。

059 食いしん坊的 外食産業との付き合い方。24 スタバとドトール。

人手不足が深刻な今。
最小限の人数でお店を動かし、
働きの大きな部分を
人とのふれあいに費やせるような仕組みを
作ることに成功した会社、お店が生き残る。

それがこれからの店づくりにおいて大切なことなんだ‥‥、
ということをほとんどの人は知っている。
でもどうすればいいのかとなると、
答えはなかなか見えてこないのが現実で、
焦るみんなの憧れの対象がスターバックス。

好調です。

やれ、あんなコーヒーはコーヒーじゃない。
もっとおいしいコーヒーを
もっと手軽な値段で飲ませる店は
たくさん他にあるじゃないか‥‥、という人がいる。

たしかにボク自身、
スターバックスにコーヒーを飲みに行こうと
思う機会はほとんどなくて、
気持ちのいいところでちょっとのんびりしたいなぁ‥‥、
ってときに探してお店に入る。

飲むのもミルクや豆乳、シロップが主役の
アレンジコーヒードリンクで、
そう割り切ればとてもたのしい。
馴染みの店には馴染みのスタッフがいてくれて、
こちらが前向きになりさえすれば
気のきいた会話ととびきりの笑顔で
「ボクはひとりじゃないんだ」と、
ひととき、気持ちが幸せになる。


ドトールコーヒーとスターバックスって
どこが違うんだろうね‥‥、
と先日、業界の人たちと話をしていた席で話題になった。

システムはほとんど同じです。
セルフサービス。
コーヒーが主力商品。
歴史的には1980年サービス開始のドトールの方が
16年も古いことになる。
規模はスターバックスが倍以上。
スタバが業界1位で、
2位がドトールということになる。
そしてどちらも業績好調。
ドトールコーヒーは喫茶店の進化系。
スターバックスはカフェだよね‥‥、
とかいろいろ違いを考えるも、
これといった決め手に欠けた。

ふと、こんなことを思ったのです。

スターバックスは高級クラブ。
おねぇさんの会話をちょっと緊張しながらたのしむ
大人の遊び場で、そこで味わう水割りや
ワインの味を誰も評価しないです済む店。
ちょっと覚悟のいる値段と、お店の仕組みに対する理解。
そして何より、いいお客様であろうと努力をする
前向きさがもてるかどうかが
クラブ遊びが上手か下手かの決め手となる。
スターバックスが見事に
そんな場所じゃないかと思った次第。

一方、ドトールコーヒーはスナックみたいな存在でしょう。
まずお店がスターバックスに比べて小さい。
そこで働いている人は、
お客様に気を使うようでいてのんびりとした自然体。
ひとつの店に何度か通うようになると、
挨拶やありきたりの会話を交わすようになるけれど
それも洗練されたトークというより世間話の範疇で、
お客様は勝手に自分の時間をのんびり過ごす。
そこでは別に、いいお客様になろうと
努力をする必要はなく、
お客様もお店の人もただただ自然にふるまえばいい。

高級クラブでは名刺の交換をします。
お店の人たちは、事あるごとにお客様に電話する。
安否確認をかねたお誘いで、
きれいなオネェさんから電話がかかってくるというコトに
ワクワクしはじめると、
立派なクラブ遊びにハマった人‥‥、ということになる。

スナックでは名刺交換なんて儀式はまずしない。
互いが互いをニックネームで呼び合って、
どこの誰だかわからぬぼんやりとした関係がお店を満たす。
馴染みになると身の上話をし合う過程で、
身分が徐々にあきらかになり
店に対するロイヤリティーと
親密さがましていくのがスナックという場所。

季節商品の導入をきっかけとして
魅力的なプロモーションのお誘いがくるスターバックスは、
お客様との付き合い方も高級クラブな感じがするのが
オモシロイ。
高級クラブとスナックとどちらが好きかは
人によって異なるのでしょう。
どちらも嫌いという人もいれば、
どちらも好きという人もいる。
ボクはどちらも派で、
だからスターバックスもドトールコーヒーも
等しく好きで愛おしい。
そしてどちらの店に愛着を感じるか‥‥、といえば、
ボクが行かなくたって潰れることはないだろうと
確信できるスタバじゃなくて、
ボクが行かなくなると心配してくれるだろうなぁ‥‥、
と思える近所のドトール。

飲食店とは案外そういうものなのかもしれません。

2018-12-20-THU