ロック・ジャパニーズ
の作り方。


#2 他人のクルマを乗りまわせ。


「コンサートって、いかにしてつくられるの?
今年9月2日のライブ『ROCK JAPANESE』に則して
ディレクターからマネージャーから舞台監督から、
さまざまな方の話を聞いてゆくコーナーです。
  
今回は、昨日のつづきです。
「トリビュートアルバムが
 ジャケットやタイトルまで含めて、
 いかに自由度の高い状態で作られたか」
「どのようにライブ実現に至ったか」
などについて、
ヤザワさんのマネージャーTさんと
東芝EMIスタッフのかたに、話を伺っています。

「予想のつかない展開がおもしろかった」
というみなさんの話を聞いていると、
今後ライブ当日まで、どれほど
予想のつかないことが起きるのか、
なんだか、楽しみになってくるのです。



[● ヤンチャに跳ねてくれている]

I(EMI)
「ぼくはディレクターですから、
 どの人がどんなように曲を仕上げてくるかを
 予想しているじゃないですか。
 レコーディングしていておもしろかったのは、
 それが見事に裏切られたところですね。

 少年ナイフなんかパンクで来ると思ったのに
 ディスコだったりして・・・。
 『あるテーマが人に渡される時には、
  違う思いが加わって、違うかたちになるんだな』
 というのが、ほんとおもしろかったです。
 例えば、ひとりの監督が
 作りこむようなCD作品もあると思うけど、
 ポンっとヤザワさんというテーマを
 渡したあとに、予想しないかたちで
 ふくらむCD作品になったから、
 そこがすごくいいなあと感じるんです。
 結局ふくらみすぎて、
 イベントまでやることになったし。
 そういう科学反応みたいなものが、おもしろかった



(Sads)


「IさんのCD企画を聞いて、
 おもしろいと思いました。
 まず、コンセプトがいいなあと。

 有名どころを集めたり、レコード会社として
 呼びやすい人ばかりを集めるという方法もあるけど、
 Iさんの考えたスタート地点は、そういうものとは
 ぜんぜん違うものだと思ったから、
 ぼくは拍手して『がんばってね』と言ってた。
 
 ボスも、聴いて
 『おもしろい』って言ってましたよ。
 『みんながそれぞれの表現をしてるじゃない?
  いろんな表現があっていいと思った』
って。
 別に自分をたてまつって欲しい人でもないから、
 きっと、みんなが精一杯、自分なりの表現で
 ヤンチャに跳ねてくれているのが、
 すごくうれしかったんじゃないかなあ?


 ヤザワも若い時から、
 ロックっていう文化がなじんでいない時から
 やっているわけじゃない。
 だからそれぞれのアーティストの
 ポリシーだとかスピリチュアルなところに
 いちばん拍手を送ったのは、
 ボス(ヤザワさん)だと思いますよ。
 そういうところは、わかる人だから」



[● CDのタイトルとジャケット]


「アルバムのタイトルの『JOYRIDE』って、
 『他人のクルマを勝手に乗り回すヤツら』
 って意味だったっけ?」


I(EMI)
「はい。
 人のクルマを盗んで走ったりするようなのを
 『JOYRIDE』って言うらしいんですけど、
 これは辞書で見つけました。
 ヤザワさんの楽曲で、自由に遊ぶという
 企画のコンセプトにすごく合うような気がして。
 ・・・このアルバムって、ヤザワさんの
 許可を得ていないような感じがありますから



「実際、タイトルだって、
 もう締め切り直前で変化させられない時期に
 『Tさん、こうなりました』
 って来たじゃん!(笑)

 まあ、いいタイトルだから、いいんだけど」


I(EMI)
「(笑)すんません。
 タイトル決まるのは、ギリギリで・・・」


M(EMI)
「さっきIが言っていたみたいに、
 このアルバムって、単なるトリビュートや
 カバーとは違うものだってぼくたちは思っていて、
 『ロック』を題材にしたいと考えていたから、
 すごい必死になって、タイトル悩んだよね


I(EMI)
一万個くらいのタイトル候補を出して、
 三日ぐらい、辞書ひきながら徹夜
してました。

 タイトルははじめ、業界に対する
 アンチテーゼにしようと思っていた
んですよ。
 ぼくら東芝にいて、いわゆるメジャーメーカー
 みたいなところにいるんですけれども、
 よく、一般のアマチュアの子たちが
 『商業化しすぎてる』とか
 メジャーに対して言っているじゃないですか。

 ロックがロックじゃなく聴こえるものが
 いっぱいあって、レコード屋さんの
 『ロック/ポップス』と書いてあるところに
 いっしょくたになって置いてあるけれども、
 どれも『ポップ』じゃねえか、
 ロックなんてないじゃないか・・・。


 そんなよく言われることが、
 ぼくの気持ちのかたすみにも、少しあって、
 そういうところに対する
 アンチテーゼにさせてもらおうっていう。
 
 かといって、こっちこそがロックだよ、
 って言うと押しつけになっちゃって、
 ふだんぼくらが『これはロックです』って
 配っているのとおんなじになってしまうので、
 疑問系でやりたいなあと考えていました。
 『それってロックなの?』みたいな。
 『TIRED OF SPOON?』という案もあったんです。
 スプーンに疲れてないか?って。
 これは、赤ちゃんがスプーンで
 メシを食わされて、もううんざりしてる、
 っていう意味なんですけど、
 それをロックに重ねあわせて、
 『押しつけに嫌な気分になってないか?』
 っていう気持ちで作ったタイトルですけど」



(CDのジャケット)


「そのタイトルも、よかったじゃん。
 ジャケットは、どうしてこういう
 スペースシャトルのジャケットになったの?」


I(EMI)
「これは、ガガデザインというところの
 飯田さんというかたに作ってもらいました。
 前に、ヤザワさんがマイクを
 破壊している作品を作っていただいたんですけど。

 このかたもヤザワさんをすごく好きで、
 非常にロックンロールなオヤジなんですよ。
 今回のアルバムは、デザイナー自身も
 ロックンロールじゃなきゃいけないなと思って
 その方にお願いしたんですけど(笑)。
 飯田さんのセンスでロックンロールを
 表現してください、という漠然とした注文で。

 抜け感があって、爆発的な強さがあって、
 あとはもうお任せします、みたいな・・・。

 当然、すごい悩まれたみたいです。
 締め切りの4日前とかにも
 『・・・浮かばねえな』って言ってて」


----ロックを大事にしている人だから、
  思いつめて、悩まれたんでしょうね(笑)。


I(EMI)
「もう、どうすんのよ?(笑)
 とか思っていたのですが、
 ある夜、飯田さんの事務所に行ったら、
 弾丸が窓に当たって飛び散ったものが、
 マックで加工してあって・・・。
 最終的には宇宙まで行っちゃってるっていう。

 おいおい、宇宙までかい!(笑)
 っていうところで
 それがものすごい夜中だったせいか、
 えらい、楽しかったんですよ。
 それで、そのジャケットに決まったんですけど」


[● これから、いろいろ決まってきます]


「アーティストもそうだけど、
 マネージャー連中って、エーちゃん好きだね」


I(EMI)
「もともと、12月とか1月の
 レコーディングの時点から、
 このメンバーでイベントやれたらスゴいね!
 って、マネージャーのかたたちと
 盛り上がってたんですよ。
 『でも、無理だろうなあ、
  スケジュール的に、これだけの人たちが
  一日に同じ時間に集まることはできないもん』

 とか言ってたんです。
 
 そのまま発売日もとっくにすぎていったんだけど、
 発売後の業界の評判とかを聞いているうちに、
 もう一回、今になって
 『ライブをやったらおもしろいんじゃないか』
 っていう話が、5月半ばになって出て。
 スケジュールも無理矢理もらうっていう
 感じで、話が急に決まったんですよ。
 決まったのって、6月1日ぐらいかも」

----急だ!

I(EMI)
「バタバタとライブ会場に予約入れたりしてたから、
 最近までマネージャーのかたたちに
 『ほんとにやるんですか?』って言われてて。
 それに、決まったとは言っても、
 8アーティストでしょ?
 30分ずつでも4時間ですから、
 どうやってダンドるんだよ、ってことも含めて、
 これからが勝負なんですけど。
 アーティストの転換時間って、
 ふつう15分くらいかけるんですけど、
 『5分でやります。限界への挑戦です』とか、
 舞台監督のかたは言ってますけど(笑)。

 まだほとんどのことが決まっていないですね。
 これから、すごいスピードでいろいろなことが
 作られていくんだと思います」



(少年ナイフ)

----その過程を追えるといいなと思います。
  マネージャーのかたや舞台監督さん、
  それにコンサートスタッフのかたがたといった、
  ふだん音楽誌には載らないけれども、
  とても重要な役割を担っているかたに、
  今後話を伺いたいと思うのですが、
  それは、可能ですか。



「そっちのほうがおもしろいよね。
 アーティストの話もいいけど、
 それとは違うところが
 『ほぼ日』らしくていいんじゃないですか。
 マネージャーさんとか、いっぱい広がって
 コンサートの作り方みたいなのを特集するのは
 ぼくは賛成です」


----マネージャーさんと言っても、
  一般的に考えられている
  「カバン持ち」とは違って、
  アーティスト個人のプロデューサーだと
  思いますから、どういう気持ちで
  このイベントにアーティストを参加させているかを
  伺えたら、おもしろいと思うんです。


I(EMI)
「コンサートスタッフは、
 ヤザワさんのコンサートを手がけている
 かたたちになりますけれども、
 みなさんほんとに気持ちが入っているというか、
 すごくいい仕事をされるんですよ。
 もし、聞けたら、そのかたたちの話も伺うと、
 おもしろいかもしれないですよ」




ここまで伺ったところで、
東芝EMIのかたがたへのインタビューはおわりました。
次は、舞台監督さんの話を伺うのか?
それとも、マネージャーさんたちになるのでしょうか?
コンサートの作りかたがわかるような今後の展開を、
みなさん、楽しみにしていてくださいね。

(つづきます)

2001-07-26-THU



YAZAWA
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