ロック・ジャパニーズ
の作り方。


#3 ヤザワの看板。


今回からの数回は、『ロック・ジャパニーズ』での
ステージプロデューサー(演出家)さんと
舞台監督さんのおふたりに伺ったお話を掲載します。
ふだんから、ヤザワさんのコンサートといえば
このかたたちチームが、バシッと作っているんです。
さっそく、おふたりの話をどうぞ!


----東芝EMIで、ヤザワさんの今回の
  トリビュートアルバム制作についてうかがったら、
  「ヤザワ組」っていう、
  聞き捨てならない言葉が出てきまして・・・。

  ヤザワさんのコンサートスタッフが、
  「ヤザワ組」って、呼ばれているんですよね?
  「ヤザワさんのコンサートスタッフは、他と違う!」
  「・・・気持ちというか気合いが入ってるんですよ。
   あの方たちは仕事としてやってるってゆうより、
   『これ生き甲斐』みたいなイイ仕事をしますね」
  って、みなさんが、妙に
  うれしそうに教えてくれるんですよね。

  「日本有数のコンサートスタッフだ」って。
  ぼくも、それを聞いていてうれしくてうれしくて。
  ・・・だって、もう、
  「ヤザワ組」っていう呼ばれかたからして、
  興奮せざるをえないじゃないですか!

  ヤザワさんのライブといえば独特で、
  タオルが飛んだり、ステージでモノが爆発したり、
  エーちゃんがハーレーを乗りまわしたり。
  とにかく、観てると、気合いが入りまくってる、
  っていうか、発散させてくれるっていうか。

  そのかたたちが、
  今回の『ロック・ジャパニーズ』の舞台を
  現在、作っている最中だと聞きまして、
  「ヤザワさんをやらせれば、世界一ですよあそこは」
  って言われるコンサートスタッフのかたが、
  どういう気持ちで仕事をしているのかを、
  ぜひ、伺いたいなあと思いました。


舞台監督
「(笑)世界一っていうのは、誰が言ったの?」
 ・・・言いすぎかもしれないけど」
 

プロデューサー
「まあ、うちのチームは、スタッフ全員が、
 『俺たちにヤザワをやらせれば一番だぜ』
 って、たぶん内心では思っているんでしょうけど、
 外に行った時に、そういう言い方をする
 チームではないんですよ。
 だから、いまそうおっしゃられると、
 ちょっと気恥ずかしいところがあるの(笑)。
 
 チームの中ではフラットに仕事をしています。
 ボス(ヤザワさん)のコンサートの場合、
 最終的な演出はボスなので、
 ボスが自分のステージを作りやすいように
 投げかけてあげるのが、自分の仕事だと思ってます。
 ですからボスとスタッフたちとのあいだでは、
 まず、平面で提案を投げかけあって、
 話しあいをしますよね?」
 

---おたがいに言いあえる立場なんですね。
 
 
プロデューサー
「そう。
 それを今度は、ステージの上で
 どうやって立体的にしていくのかが、
 監督の仕事になりますよね。
 そこでステージを立体に組み上げると同時に、
 話しあいではフラットだったチームが、
 今度はいい意味でピラミッド的な構造に変わります。
 つまりいわゆるライティング関係だとか特殊効果とか、
 トランスポートも含めて、ぜんぶのスタッフが
 立体的にかみあってくる。
 そこで仕事の区分けが出てくるんです」


----ここをやって、あれがあって、
  全体のステージができあがる、みたいな。


プロデューサー
「多少の入れ替えはありますが、
 いまのクルーになって、12年になっています。
 だから、もっとかゆいところに手が届くような
 いいキャッチボールを、ボスとできたらいいなと
 思っていますけれども。
 
 ヤザワさんのいちばんいいところは
 音楽をやっている姿勢がいいところだと思います。
 ちゃらんぽらんにはしていないというか、
 自分が何をやりたいのか、
 ガッツンこれだぜ、っていうのを持ってるかたで。
 
 そういう方と仕事をしていると、
 こちらもごまかせないというか、
 正面からぶつかっていかないとひずみが出ますよね。
 しかもボスとはフラットに話しあって仕事をできる。

 ステージでのボスの姿を見ていれば、
 ああ、あの言葉にはそういう意味があったんだ、
 ということに気づかされてばかりですから、
 自然に身をひきしめてくださる存在ですね」
 

---なるほど。


舞台監督
「今回の『ロックジャパニーズ』は一日ですが、
 ふだんのツアーですと、
 初日のライブがはじまる時っていうのは、
 やはり興奮しますね。
 ある意味でしあわせを感じるっていうか。
 ツアー初日で、『よしイクぞ』と、
 客電がドーンと落ちた、パーン!音が出た、
 ボスが出てくる、お客さん沸く・・・。
 それは、毎回毎回、鳥肌もんですよねえ」


----その語り口が、すでにイイですよ!


舞台監督
「それを横で見ながら、
 『切れ間なく動いてる、オッケー!』みたいな。
 ツアーは長いですから、その数ヶ月、
 テンションをさげられないんですよ。

 移動も含めて、テンションをさげられない。
 ぼくらチームは、だからツアーのあいだ、
 うちに帰らないんです」
 

----え? ツアーのあいだは、
  漁師が海に出るみたいに、ずっと外なんですか。


舞台監督
「移動日で家に帰る時でも、荷物をとりかえるくらいで、
 泊まるのはどこか違うところだとか。
 うちのスタッフは、みんなそうですね。
 現実に戻される部分をなくすというか、
 ツアーの期間は、ずっとそういう生活です」


----おもしろいですねえそれ。はじめて知りました。
  スタッフのかたの志気は、どう保ってますか。


舞台監督
「ひとことで言うと、志気を保つのは
 『矢沢永吉』っていうことで、ですよ。
 ヤザワさんのライブは、燃えるんです。
 だから一生懸命にやりたいし、
 やらなきゃいけない。

 新人クルーになったとすると、
 『おまえら、矢沢永吉の看板しょってるんだぜ』
 っていうのが、まず第一に頭に入りますよね。
 そのあとに他のクルーから言われるのは、
 『とにかく本人を見てろ。本人を見てりゃあ、
  何をやればいいのかわかるから』です。

 音響にしても照明にしても、何でもそうで、
 ボスを見つづけていると、
 看板の大きさもわかってくる。
 『俺は、ヤザワさんのステージを
  つくっているんだなあ・・・』って」


(つづく)

2001-08-06-MON



YAZAWA
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