#4 前よりもいいステージを見せられる?
【今回の内容】
ライブコンサートって、
どのようにして「商品」としてできあがるの?
それを知りたくて、
ふだん、そうそう話を聞く機会のない
コンサート運営者たちの言葉を伺っています。
前回から、コンサートの演出側への
インタビューをしているところです。
「ロック・ジャパニーズ」というライブに
関わっている方々の談話を通して、
おもしろいイベントを作りあげることとは
何かを、ちょっとでもわかれたらいいな、
というコーナーになっています。
現在、話を伺っているのは、
いわゆる「コンサート演出側」の、
ステージプロデューサーさんと舞台監督さん。
ほかでは聞けない話を、聞いております。
----今日もみなさん、かなりの
資料を持っていらっしゃっていますよね?
このインタビューが終わったあとには
9月2日の「ロック・ジャパニーズ」の
打ち合わせだと伺っていました。
ちょうど、いろいろ考えていらっしゃる
時期だと思うんです。
アーティストとアーティストの入れ替えの
「転換」をどうやるか、にしても、
これだけの質の高いバンドが、こんなに
たくさん集まっているコンサートですから、
どう短時間にするか、
悩んでいらっしゃるだろうと思います。
野外コンサートでは、たくさんのバンドが
一気にやっても、おかしくないですが、
屋内のセットをすばやく変えるって、
ほんとに難しいことだと思いますので。
プロデューサー
「そうですね。
それぞれのアーティストさんが板に立てば、
それはその方たちの世界ですから、
きちっと盛り上がるとは思うんです。
でも、途中の間が変に長くて
水をさしてしまうようなことは、
できないですからねえ。
できるだけ、短めに、と思っています」
----ああ、それがプロなんですね。
常識破りの短時間の転換かもしれない、
と東芝EMIの方からも伺っています。
それぞれに熱狂的なファンを抱えていますから、
お目当てのアーティストの演奏が終わると
だらけてしまう人も出てくるという心配も、
当然、ありそうですし・・・。
舞台監督
「そうですねえ。
アコギを抱えた奥田くんのファンも、
踊りまくっているSadsのファンにも、
みんなに、
『ロックって、いいなあ』
と思ってもらえるとうれしいんですけど」
----ああ、なるほど。
ほかにもいろいろ、緻密な計算を重ねて、
舞台を作られているんでしょうねえ。
期待して、9月2日をお待ちしています。
現在進行形のイベントが、
どのようなチームによって進められているか、
どういう雰囲気で作られているのかを知るために、
例えば、
「みなさんのコンサートスタッフに
新人が入ってきたとしたら、
どういうことを最初に伝えるのか」
について、お話を伺えますでしょうか。
プロデューサー
「口で言うよりも、
ヤザワさんのコンサートチームで
経験を重ねた人たちの動きを見ていると、
新人でも、自然と、
『こうやっていたら、おいていかれるな』
っていうのがわかる雰囲気がありますよね。
原点としては、スタッフのかっこよさ、
裏方のかっこよさを出そうよっていう雰囲気。
『かっこよさ』っていうのは、
ヤザワさんという看板がいて仕事をすることも
もちろんそうですし、
自分がいまの時点でできる
精一杯の力を出していかなければいけない、
ということにもつながりますし。
つまり、ちゃらんぽらんな気持ちがどこかにあって
やっていると、必ずこのチームでは、
のりおくれてしまうんですよね。
ちゃらんぽらんになっているなら、
まわりのスタッフにはそれが伝わりますし
自分でもわかる時もあるでしょうし、
とにかく、ぼくは
かっこよく仕事をしてもらうっていうのが、
いちばんだと思っています」
----それは、どんな仕事をするにも、大事ですよね。
「ちゃらんぽらんじゃない気持ち」、って。
プロデューサー
「スタンスとしては、
ほかのアーティストと仕事をする時も
これは変わらないことなんです。
つまり、ちゃらんぽらんにやらない。
でも、ヤザワさんの場合には、
余計に気が抜けないというか、
本人が会場に入ってくる時になれば、
みんなもう、自然にボスを
待ち受ける気持ちになっていますからね。
いつ来てもいいぜ、っていう気持ちで、
舞台のほうも、コントロールタワーのほうも、
『本人が楽屋に来たから、
そろそろ用意しようかな』
みたいな気持ちは、ありません。
その時の、会場の空気張り方っていうのが、
やっぱりいいし、すばらしいんですよ」
----一般にいる人がヤザワさんを「こわい」というのと
また違う、近づいても感じる緊張感があるんですね。
舞台監督
「そうですね。
あ、でもぼくも、最初は
ボスを、こわいと感じてました。
何を言われるかわからないなっていう気持ちはあった。
でも、そうじゃなくて、いい仕事をすれば
ほめてくれて、職人にはそれがうれしいんですね。
いい仕事をさせてくれるだけの緊張感を
ぼくたちに負わせてくれるんですよ。
ほかのタレントのかたの舞台をやる時って、
緊張感を持たせてくれない人も、いますからねえ。
『やりたくない、アタシ』
『なんでだよ』
『カレーが辛いから』
・・・ぶっ殺すぞてめえ!みたいな」
----(笑)あははは。
舞台監督
「『やりたくねえなら帰れこの野郎!』なんて、
ぼくら、平気でタレントに言いますからね(笑)」
----(笑)怖え。
舞台監督
「でもボスは毎回毎回ぼくらに
『どお、うまく行ってんの? うまくやろうな!』
って、すごくエネルギーを与えてくれるんですよね。
だからそれにこたえなきゃいけない。
こたえるとオッケーをくれる。
そのくりかえしですよね」
プロデューサー
「エネルギーをもらうっていうことについては、
お客さんもそう感じていると思いますよね。
ヤザワさんのツアーでしたら、一年間
一生懸命仕事をして、その一回の瞬間、
タオルを投げるこの瞬間だぜっていうところを
待っていらっしゃるわけですから。
お客さんがうれしそうな顔をして
ボスを見ているのを眺めていると、
がんばらなきゃいけないなあって思いますし、
がんばるぞって思います。
お客さんはふだんボスに会えるわけじゃないし、
いつもはレコードを聴いて、どうしてこうして、
写真を並べて、本を読んで、気持ちを高ぶらせて、
『ライブが来たぜ』っていうか。
チケットをとれた瞬間から、
その人たちのコンサートははじまっているから、
指折り数えてその日を待っている気持ちを、
大切にしたいなあと思います」
----そうやって、何万人の人の期待を
背中に感じながら、コンサートスタッフのかたは
仕事をされているんですよねえ。
プロデューサー
「いちばん不安なのは、どの仕事もそうなんですけど、
『前回やったツアーよりも上にいけるかどうか』
という点なんですよ。
もちろん、いつの時点でも
グレードの高いものを目指しているとは思います。
でも、本番を迎えるまでは、紙の上の話ですから。
期待と不安というか・・・。
不安のほうが、大きいかもしれないです。
準備の時点では
それぞれ枝だったいろいろなものに
葉っぱをつけていくっていうかたちで
ツアー初日を迎えるわけですよね。
ゲネプロっていって、
実際のあかりを出してみたり、
セットを組んで
『こういう見え方をするんじゃない』
みたいにしているのも、やっぱりまだ、
絵だけの世界ですから・・・。
『どうなるかなあ?』
って、いつも気になっています。
セットだけの話でも、
演出だけの話でもなくて、
全体のスタンスとして、
去年より勝てるかなあ?って思います。
ああやっぱり今年もよかった、去年に勝った、
って思っておわりたいわけじゃないですか。
それは自分の中の判断基準なんですけど、
いかに勝てるか、
いかに去年よりもいいものを
お客さんに見せられるか、を大切にしたいんです」
(つづく)
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