ロック・ジャパニーズ
の作り方。


#6 スタッフ末端まで気持ちを行き渡らせる。


【今回の内容】
9月2日の「ロック・ジャパニーズ」が
どのようなチームによってプロデュースされるかを
ステージプロデューサー&舞台監督の話を通して、
伺っているところです。

今回は、イベント運営にとても大切な、
「イベントスタッフ全員、末端まで、
 どのように志気をいきわたらせるか」
について、これまでの経験をもとに、
喋っていただきましたよ!



----コンサートの内容については、いつも、
  プロデューサーさんや舞台監督さんから、
  ヤザワさんに提案をしていく形なんですか?


プロデューサー
「基本的には、何らかのかたちを作ってみて、
 こんな感じで作っていますと、こちらから
 ヤザワさんに投げかけて、そこでお互いに
 『いや、もっと違う考えがあるんじゃないか』
 みたいなキャッチボールはありますけど。
 ボス(ヤザワさん)からも、
 たくさんアイデアが出てきます。
 そこはやはり、実際に板(ステージ)に
 立っているかたの感性がありますから」
 
 
舞台監督
「われわれは、ステージの右も左も
 わかっているわけじゃないですか。
 ここからこの大きさの何を釣れるか、
 そういう物理的なことも含めて。
 でも、逆に言うと、ステージの現実を
 知っているという固定観念があって
 こうしたほうが、流れがスムーズだとか、
 このほうが速く動けるとか、
 このステージに適しているよねとか、
 そう思っちゃったりするんです。
 そこをボスは、このほうがいいよ、って、
 観客の立場に立ってものを言いますから。
 とにかく、ボスからのアイデアは多いです。
 多すぎて、次々に出されるから、
 たぶん、はじめて聞いた人は、
 何を言っているかわからないと思いますけど」


----え?(笑) それ、聞きたいです。


舞台監督
「おととしのコンサートの時、
 誰かがぼくの携帯番号を教えたもんだから、
 会場の仕込みをやってる最中に、
 10回くらい電話がかかってくるのよ。
 プルルルル。
 ・・・ボスから。
 『さっき言ったあれだけどさあ、
  こうしてああしてこうしてよ、よろしく』
 ガチャ。
 ・・・ぼくら、それ聞いてしばらく悩むの。
 ボスがこう言ってた、うーん、ああだこうだ。
 そう言ってると、また、プルルルルって。
 『さっきの、右から左って言ったけどさあ、
  あれ、左から上へおろすのは、どお?
  じゃあ、よろしく』
 ガチャ。
 それでまたぼくら、滑った転んだ、ワーッて。
 はじめて聞いた人は、絶対に何を言ってるか
 わからない会話だと思いますよ」


----電話の最後の「よろしく」がすごい(笑)。


舞台監督
「思いついたらポーンとおっしゃるのが、
 ボスのいいところですよ。
 そのかわり、3分後に訂正することもありますけど」

 
----動きがすごく早そうですもん。
  ところで、ツアースタッフの人数って、
  だいたいどのくらいなんですか?


舞台監督
「ツアーでまわるのは、約30人くらいですね。
 大きなアリーナツアーとかの時は、プラス30人。
 大きさによって、トランスポートも変わりますよね。
 トラックが50台になるとか。
 横浜国際競技場クラスだったら、
 100人200人になっちゃいますから。
 でも、メインクルーはだいたい30人くらい」


----そこにイベント会社のバイトさんとか、
  とにかく、すごい数が入るわけですよね。

  
舞台監督
「そこまで含めると、ほんとうに
 何倍、何十倍というか、かなり多くなりますね」
 
 
----そこまで関わる人間が多くなった時、
  スタッフの末端まで意識を行き渡らせるのは、
  どういうふうに、されているのですか。


舞台監督
「それこそ、イベント会社のバイトの子も含めると、
 そこまですべてに直に言って聞かせることは、
 できないわけですよ。
 ・・・しかし、われわれが
 この10年にやってきたことは、
 その子たちを雇う側の
 イベンターさんやプロモーターさんには、
 わかっているわけですよ。
 たとえば、ぼくに関しての情報なら、
 『アイツはこわいぞ』と。
 何かチョンボをしたら、イベンターさんが
 ぶん殴られるぞっていうのを、
 よくわかっているわけです(笑)」
 

----(笑)きっと、わからざるを得ないですよね。
  「わからないと俺がヤバイ」っていうか・・・。


舞台監督
「(笑)そうしたら、イベンターさんは、
 アルバイト会社で集めた子たちに言いますよね。
 『オマエらよく聞け。ヤザワのスタッフはこわいぞ。
  ちゃんと仕事をしないと、絶対に、次から仕事を
  もらえなくなるから、ちゃんとしてくれよ』
 そういうかたちで、末端まで気持ちが行き渡ります」


----(笑)はい・・・行き渡ります。


舞台監督
「ある時、金髪で長い毛の彼がいたんですけど、
 『うちのツアーにはふさわしくないから、
  帰らせてイイよ』って、ぼくが言ったんです。
 そいつ、いま、音響屋にいまして、今だに
 『ぼく、帰らされたんですあの時』って言いますけど。
 ぼくはそれを、パフォーマンスとして
 既成事実を作るために言ったんじゃないんです。
 アルバイトだからって、手を抜いて、
 ヘヘエってやってるのは、本当にだめだから。
 ちゃんとやれ、って。
 そういうことが浸透しているから、
 ヤザワチームがくるとか、
 ヤザワのコンサートのバイトだっていうことがわかると、
 彼らも自然に緊張してきますよね。
 それの積み重ねだと思います。

 実際に、この重いものを
 いい加減に持って運んでいて、
 もし落ちたら、人がひとり死ぬとか、
 倒しちゃったら向こう側の人が死んじゃうとか、
 そういうようなことが、舞台にはたくさんあるんです。
 それこそ、いいかげんにやってるヤツがいると、
 ソイツだけじゃなくて、みんなの身が危険で。
 だから末端のスタッフ、現地のみのスタッフも含めて、
 それはヤザワのコンサートだっていうことになると、
 みなさん緊張してくれていると思いますよね。
 どこの地方のツアーでも、ぼくら、
 『なあなあ』にはしてこなかったつもりですから。
 そのことは、わかってくれていると思います」
 

----9月2日のトリビュートコンサートについて、
  ひとこと、いただけますでしょうか。


プロデューサー
「ヤザワさんの楽曲対して、
 これだけのメンバーが集まったのがスゴイなと、
 アルバムを聞いてみて、まず思いました。
 それぞれが、どうしてこれだけ
 違うイメージでつくれるんだろう?
 ということも含めて。
 
 楽しさが全面に出るといいなあと思っています。
 コンサート当日はどうテンションを落とさないか、
 それをやろうと考えています。
 アーティストが舞台に立てば、
 それはその人の世界で盛り上がると思いますので、
 ひとりのアーティストともうひとりのあいだを、
 どうつめていくか、というか。
 
 せっかくこのチームで舞台やるわけですから、
 寄せ集めのチームでやるのではないので、
 ワントライして、一枚のアルバムが
 3時間のステージに集約されて、
 『このライブに、参加してみたかったなあ』
 っていうアーティストが増えてくれると、
 いいなあと思いますね。
 もしそう思ってくれる人がいたら、
 もっとまた違う次元のイベントを
 考えていけるかもしれませんから」
 

(※プロデューサーさんと舞台監督さんのお話は、
  ここまでで、いったんおわりにいたします。
  次回は別の人が登場。おたのしみに!)

2001-08-10-FRI

YAZAWA
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