糸井さん、ブランドってどう作るんでしょう? "SAISON CHIENOWA"(セゾンチエノワ)チームのみなさん、糸井重里に話を聞きにくる。

ほぼ日刊イトイ新聞

糸井さん、ブランドってどう作るんでしょう? "SAISON CHIENOWA"(セゾンチエノワ)チームのみなさん、糸井重里に話を聞きにくる。

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第4話 おもしろい仕事はどう作るか。 2016-08-25

第4話 おもしろい仕事はどう作るか。 2016-08-25

チエノワ廣田
いま、”セゾンチエノワ”をやりながら
「どうすればおもしろい仕事を作れるのか」
ということが、
とても気になっているんです。

おもしろい仕事をつくるための、
方程式があるわけではないと思うんです。
かといって、自分たちにできないからと
外のおもしろそうな人にお願いするのも、
限界がある気がするんです。

それでぼくらは”セゾンチエノワ”という
「もう、社員みんなでおもしろくなろうよ」
「場づくりから一緒にはじめようよ」
という自社メディアをはじめたんですね。
そしてここから、いろいろな
「おもしろい仕事」を生んでいけたらと
思っているんですけど‥‥。

「おもしろい仕事」って、
どうやったら作れるんでしょう?
糸井
うーん‥‥そうですね。
個人的には、外注するとかしないとか、
ほんとうはどっちでもいいと思います。

むしろぼくは、もっと前段階の
「そもそもおもしろい必要があるんでしょうか?」
ということのほうが気になります。
いまおっしゃった、その仕事は、
ほんとうにおもしろい必要があるんでしょうか。

チエノワ廣田
社員のみんなに、
ずいぶんヒアリングをしたんです。

すると、アンケートで働きやすい会社と出てたり、
表面上はみんなが
「うちは働きやすい」と言っています。
でも、よくよく聞くと
「もっとおもしろいことを
やりたいと思ってるけどできてないんだ」
とか、
「さらにやりがいのある仕事をやりたい」
といった、不満の声もあったんです。

だからそこで
「じゃあ、そこをやりましょうよ」と。

それでいま、みんながおもしろがってできる仕事を
増やそうとしているところなんですね。
糸井
そうですか‥‥。
ただ、ぼく自身の感覚ではありますが、
そうやっておもしろい仕事を増やそうとしても、
結果につながりにくい気が
どうしてもしてしまいますね。
「おもしろいことが商売になる」と
はっきりしているケースでは、
おもしろくないとやっていけないから
おもしろくなるように頑張りますけど、
今回のこの場合はもしかしたら、
おもしろくなくてもいい‥‥かもしれない?
チエノワ廣田
あ‥‥それはどういう?
糸井
ぼくらの「ほぼ日刊イトイ新聞」は、
「おもしろくないとお客さんにそっぽを向かれてしまう」
立場にいるんです。
だから、おもしろくしようとするんです。
そういう切実な理由があるから、やろうとしています。
実際にはぼくらにも未熟な部分が
とてもたくさんありますけど、
とはいえ、そこなんですよ。

ただ、そういう理由の
「おもしろさを増やさなきゃ」はわかるし、
必要だと思うんですけど、
「もっとおもしろい仕事がやりたい」
と言ってるときの
「おもしろい」っていうのは、
言ってる人が暇つぶししたいだけかも?
チエノワ廣田
あ‥‥。
糸井
明石家さんまさんが、若い頃に
松之助師匠に言われたというセリフがあるんです。
さんまさんが掃除をしていたら、
松之助師匠が後ろを通って、
「おもろいか?」って言ったそうです。
そのときさんまさんは
「おもろないです」って答えた。
すると松之助師匠から、
「いや、おもろうするんや」と返されたと。
その掃除をおもしろくするのは、
若いさんまさん自身ができることなわけです。
そういうことを松之助師匠は言ったわけで。
チエノワ廣田
ああ‥‥。
糸井
いまおっしゃった質問は、
「やりがいを持つには」とか、
「おもしろくない会社をどうするか」とか、
会社側がいい仕組みを思いつけば
解決すると思われているように聞こえたんですが、
ぼくはそれは、別の問題かもしれない、と思います。
それぞれがほんとうにおもしろくしたいなら、
個人個人が、おもしろくすればいい。
そこはひとりひとりが勝手にすべきこと。
会社がどうやっても完成しないんじゃないかな。

チエノワ廣田
‥‥なるほどです。
ついつい「なんでも制度で解決できる」みたいに
考えてしまっていたような気がします。
たしかに頑張って制度を変えて、
変わったところもありますけど、
「変わってないな」もやっぱりありますから。
糸井
きっと、どこの会社も、
さんざん似たようなことをしてきてるんですよね。
そして、そういうときに
理論が引っ張っていくことはないと思うんです。

たとえば、
「わたしは事実婚という考え方を認めさせたい」
と思って、
事実婚をするわけじゃないですよね。
好きだから一緒にいるんです。
事情があって、ハンコを捺してもらえないから
事実婚、なんですよ。
法律が変わるのは、あとからです。
「それは結婚してるのと同じようなものだから、
財産分与はこうしようじゃないか」
みたいに、あとからなる。

理論の方から
「わたしたち、事実婚って考え方、
ぜったい大事だと思うんですよね」
という理由で事実婚をするわけじゃない。
チエノワ廣田
ですが、「みんながもやもやしている」ところで、
制度に後押ししてほしいというのもありませんか?
糸井
うーん‥‥それもそうかもしれないけど、
「でも、わかるでしょ?」
「そこは自分がやるしかないでしょ?」
ということじゃないでしょうか。
チエノワ廣田
たしかに、そうですね‥‥。
糸井
あと、その部分については、
「まだまだ稼ぎが足りないんじゃない?」
ということかなと思います。

たぶん、ものすごく稼いでたら、
どう働いてても全然オッケーですよね。
まっとうなやりかたで、仕事の量もちょうどよく、
「うちの会社は1人当たり3億ずつ稼いでます」
みたいな会社だったら、
きっとみんな、おもしろくないとか
言わないと思いますよ。
「おっ、久しぶり。元気してる?」くらいで、
全然オッケーですよね。

チエノワ廣田
そうですね。それは爽やかですね。
糸井
もちろん、経営側の視点で考えると
すごく大変なんだけど、
たとえば、とにかく全員の収入を2倍にできたら、
いろんなことが変わりますよね。
働く人それぞれの意識を実際に変えていくのは、
そういうことなんじゃないでしょうか。

(つづきます)