- いま、”セゾンチエノワ”をやりながら
「どうすればおもしろい仕事を作れるのか」
ということが、
とても気になっているんです。
おもしろい仕事をつくるための、
方程式があるわけではないと思うんです。
かといって、自分たちにできないからと
外のおもしろそうな人にお願いするのも、
限界がある気がするんです。
それでぼくらは”セゾンチエノワ”という
「もう、社員みんなでおもしろくなろうよ」
「場づくりから一緒にはじめようよ」
という自社メディアをはじめたんですね。
そしてここから、いろいろな
「おもしろい仕事」を生んでいけたらと
思っているんですけど‥‥。
「おもしろい仕事」って、
どうやったら作れるんでしょう?
- うーん‥‥そうですね。
個人的には、外注するとかしないとか、
ほんとうはどっちでもいいと思います。
むしろぼくは、もっと前段階の
「そもそもおもしろい必要があるんでしょうか?」
ということのほうが気になります。
いまおっしゃった、その仕事は、
ほんとうにおもしろい必要があるんでしょうか。
- 社員のみんなに、
ずいぶんヒアリングをしたんです。
すると、アンケートで働きやすい会社と出てたり、
表面上はみんなが
「うちは働きやすい」と言っています。
でも、よくよく聞くと
「もっとおもしろいことを
やりたいと思ってるけどできてないんだ」
とか、
「さらにやりがいのある仕事をやりたい」
といった、不満の声もあったんです。
だからそこで
「じゃあ、そこをやりましょうよ」と。
それでいま、みんながおもしろがってできる仕事を
増やそうとしているところなんですね。
- そうですか‥‥。
ただ、ぼく自身の感覚ではありますが、
そうやっておもしろい仕事を増やそうとしても、
結果につながりにくい気が
どうしてもしてしまいますね。
「おもしろいことが商売になる」と
はっきりしているケースでは、
おもしろくないとやっていけないから
おもしろくなるように頑張りますけど、
今回のこの場合はもしかしたら、
おもしろくなくてもいい‥‥かもしれない?
- あ‥‥それはどういう?
- ぼくらの「ほぼ日刊イトイ新聞」は、
「おもしろくないとお客さんにそっぽを向かれてしまう」
立場にいるんです。
だから、おもしろくしようとするんです。
そういう切実な理由があるから、やろうとしています。
実際にはぼくらにも未熟な部分が
とてもたくさんありますけど、
とはいえ、そこなんですよ。
ただ、そういう理由の
「おもしろさを増やさなきゃ」はわかるし、
必要だと思うんですけど、
「もっとおもしろい仕事がやりたい」
と言ってるときの
「おもしろい」っていうのは、
言ってる人が暇つぶししたいだけかも?
- あ‥‥。
- 明石家さんまさんが、若い頃に
松之助師匠に言われたというセリフがあるんです。
さんまさんが掃除をしていたら、
松之助師匠が後ろを通って、
「おもろいか?」って言ったそうです。
そのときさんまさんは
「おもろないです」って答えた。
すると松之助師匠から、
「いや、おもろうするんや」と返されたと。
その掃除をおもしろくするのは、
若いさんまさん自身ができることなわけです。
そういうことを松之助師匠は言ったわけで。
- ああ‥‥。
- いまおっしゃった質問は、
「やりがいを持つには」とか、
「おもしろくない会社をどうするか」とか、
会社側がいい仕組みを思いつけば
解決すると思われているように聞こえたんですが、
ぼくはそれは、別の問題かもしれない、と思います。
それぞれがほんとうにおもしろくしたいなら、
個人個人が、おもしろくすればいい。
そこはひとりひとりが勝手にすべきこと。
会社がどうやっても完成しないんじゃないかな。
- ‥‥なるほどです。
ついつい「なんでも制度で解決できる」みたいに
考えてしまっていたような気がします。
たしかに頑張って制度を変えて、
変わったところもありますけど、
「変わってないな」もやっぱりありますから。
- きっと、どこの会社も、
さんざん似たようなことをしてきてるんですよね。
そして、そういうときに
理論が引っ張っていくことはないと思うんです。
たとえば、
「わたしは事実婚という考え方を認めさせたい」
と思って、
事実婚をするわけじゃないですよね。
好きだから一緒にいるんです。
事情があって、ハンコを捺してもらえないから
事実婚、なんですよ。
法律が変わるのは、あとからです。
「それは結婚してるのと同じようなものだから、
財産分与はこうしようじゃないか」
みたいに、あとからなる。
理論の方から
「わたしたち、事実婚って考え方、
ぜったい大事だと思うんですよね」
という理由で事実婚をするわけじゃない。
- ですが、「みんながもやもやしている」ところで、
制度に後押ししてほしいというのもありませんか?
- うーん‥‥それもそうかもしれないけど、
「でも、わかるでしょ?」
「そこは自分がやるしかないでしょ?」
ということじゃないでしょうか。
- たしかに、そうですね‥‥。
- あと、その部分については、
「まだまだ稼ぎが足りないんじゃない?」
ということかなと思います。
たぶん、ものすごく稼いでたら、
どう働いてても全然オッケーですよね。
まっとうなやりかたで、仕事の量もちょうどよく、
「うちの会社は1人当たり3億ずつ稼いでます」
みたいな会社だったら、
きっとみんな、おもしろくないとか
言わないと思いますよ。
「おっ、久しぶり。元気してる?」くらいで、
全然オッケーですよね。
- そうですね。それは爽やかですね。
- もちろん、経営側の視点で考えると
すごく大変なんだけど、
たとえば、とにかく全員の収入を2倍にできたら、
いろんなことが変わりますよね。
働く人それぞれの意識を実際に変えていくのは、
そういうことなんじゃないでしょうか。
(つづきます)