YAMADA

第19回 
新説! O型は最も新しい血液型?!


今週は、
季節の変わり目でありながら、
飛び石連休の真っただ中でもあったりする上に、
プロ野球もどうなることやらわからない、
全国的に「あいまいな週」ですが、
みなさま、ご機嫌いかがですか。

小生、お恥ずかしながら
「感心力の男」との名を
授かったものとしましては、
毎日みなさんからいただく
「いつもさみしい問題」メールには、
ひたすら感心することしきりなのですが、
そんな中でも特選ものを
ひとつご紹介しましょう。

この一通には驚きましたねえ。
ていねいに、親切に、
学問的見地から
新しい知見をお伝えいただきました。

=
田中宏和様
いつも楽しく拝見いたしております。
この件に関する情報ではなくてすみません。
ただ、血液型の旧い・新しいに関して
疑わしい点がございましたので。

最も新しい血液型は、
おそらくO型です。

変異によって、A抗原や
B抗原をつくれなくなってしまったのが
Oであるようです。
私はこの専門ではないのですが、
かつてデータベースや論文を調べたことがあります。
そのときの経験によると、
O型にする遺伝子には
いくつかのタイプが報告されておりましたが、
いずれも、なんらかの変異によって、
本来は持っていたものが
失われた形跡を残しておりました。

「あった→なくなった」
のだから、なくなった方が新しいはずです。


Oの出現以前は、AとB、
およびABが混在していたものと思われます。
ABがいちばん新しい(旧い)わけではありません。

今ちょっとわからないのは、
普通は「なくなってもかまわない」ものは、
なくなっていく傾向があるはずなんです。
なんでAやBが残っているのか、
個人的には疑問に思っています。

何らかの疾病や寄生虫に強いとか、
なにか理由があるのかもしれません。

それでは、今後の展開を楽しみにしております。
敬具

小西 秋田県立大
(植物の分子生物学が専門
 ちなみに田中様と同じOです)

どうですか、このザ・律儀メール。
盛り込まれた情報の新しさにだけ、
感心している場合ではありません。
たとえ子供はいなくても、
「うちの娘の婿に欲しい」と言いたくなるような、
堅実にして柔和な物腰!
そして、わかりやすい文面!!

と、激賞した上で、
驚きを忘れてはいけませんよね。
えーーーっ!
O型って、一番新しい血液型!?

「第11回 なぜ血液型がO型だと、
 いつもさみしくなるのか?」
で触れましたように、
一般的に言われているのは、
O型が最も古い血液型で、
次にA型、B型ができ、
さらに分化してAB型が生まれたという、
血液型発生のストーリーです。

それが、いただいた説のように、
はじめにA型、B型、AB型が混在していて、
そのうちO型が生まれてきたとなると、
いつもさみしい業界における地動説みたいな
インパクトがありますよ!

第11回のときにも、
「O型は、最も古い血液型だから、
 いつもさみしい」という説を
いくつもご紹介しました。

となると、O型の血としての古さを理由にした、
発生学的だったり、
人類史的だったりする
『いつもさみしい』の説明アプローチは、
どれも難しいってことになりますよね。

で、この血液型発生の順番論というのは、
かなり興味深いものだなあと、
考察欲のスイッチを押されてしまったんです。

まず、血液型別の性格診断というのは、
そうとうこの血の出来順一般論の影響を
受けてるんじゃないか
、と思ったのです。

よくO型の性格で言われる、
「バイタリティ」「大胆」「おおざっぱ」みたいな項目は、
「O型は一番古い血液型だ」ということを解釈し、
「原始的」「野性的」というところから、
意味づけされた性格
のような気がしたんです。


逆に、最も新しいとされているAB型だと、
「合理的」「天才肌」のような点は、
「AB型は最も新しい血液型だ」
ということを解釈して、
「進歩的」「先進的」というところから、
意味づけがなされてる
んじゃないかと。

そう気づきはじめると、
この血液型別の性格診断というのは、
血液型の発生に基づいた、
「人間の思考の癖」から
つくり出されたのかもしれないと思えてきた
んです。

血液型同士の相性でも、
同じようなことが言えそうです。

O型とAB型は、
一番古いものと一番新しいものという、
時間軸の対称関係に置いてみると、
「古いものと新しいものは、
 矛盾するはずだ」という思いこみから、
O型とAB型は相性が悪いという説が生まれた。


A型とB型は、
O型から分化した2つだから、
「もともと一つだったものが、
 分かれたら、それは、
 ふつう対立しあうでしょう」
みたいな、
これも人が考えがちな癖から、
A型とB型は相性が悪いという仮説
生まれたじゃないかと想像できます。

また、O型について言われる、
「リーダーシップ」や「人をまとめる」という性格も、
もともと血液型はO型しかなかったということから、
O型は他の3つの血液型の基礎だから、
全員の共通項をつくり出すという解釈

生まれてきている話なのかもしれません。

とすると、
この血液型発生の順番が狂うと、
血液型ごとの性格の読み取りも
変わってきそうですよね。
いただいたメールにある新説だと、
O型とAB型の出現の順番が真逆なわけでして、
これは血液型診断産業にとっては、
打撃かもしれないなと
心配してしまいました。


ただ、説明に間違いがあっても、
結果は間違わないってことは、
世の中にはたくさんありますしね。
たとえば、
仮に酒に酔うメカニズムに間違いがあったとしても、
人は酒をたくさん飲めば
必ず酔うみたいなことです。

宇多田ヒカルの歌詞のファンだと思っていたら、
全部英語の詩になっても、
やっぱり宇多田ヒカルが好きだったみたいなものですよ。
井上和香の巨乳が好きだとばかり思っていたら、
実は顔が好きなことが発覚し・・・、
青少年の諸君、もういいですよね。
そういうことで、
もろもろご斟酌いただきたく。

そう考えていくと、
その「人間の思考の癖」って、
やっかいな存在かもしれないなと思ったんです。
たとえば、いま、
血液型と性格の解釈に現れてきたような、
人が考えがちな3つぐらいの傾向があるわけです。


1.「新しいものと古いものは対立するはずである」

2.「ひとつのものから分かれて
   生まれた二つは、対立するはずである」
   
3.「古いものより、新しいものは
   常に進歩しているはずである」


「人間の思考の癖」というよりも、
ここ100年、200年ぐらいの
「近代人の思考の癖」と言ったほうが
正しいのかもしれません。

でも、これって、
よくよく世界を見渡してみると、
必ずしもそうとは限らないってことがわかります。
ほら、「プロ野球再編問題」を見てみても、
3つのうち、
あてはまるものと
あてはまらないものがありますよね。

『智慧の実を食べよう2』に登場された
松井孝典先生風に言うなら、
「進化と分化」ということになると思うのですが、
この進化と分化にまつわる偏見って、
現代を生きる人間が全員かかりやすい、
「思考の持病」みたいなところがありますよね。

そんなことで、
今日は、一通のメールから、
えらいたくさん考えこませていただきました。
自分は「いつも考える」AB型だっけ?
いや、O型でした。
まだまだ「いつもさみしい」の境地に到れませぬ。

ではでは!

■件名を「いつもさみしい問題。」にして、
  postman@1101.comまで、
 ぜひ感想をくださいね!
このページを 友だちに知らせる。

2004-09-22-WED
HOME
戻る