糸井 サンデルさんは大学で勉強する前から、
経済とか政治といったものに
興味があったんですか?
たとえば、子どものころは
どういうものに興味を持ってたんですか。
サンデル 子どものころはあまり
そういうことは考えてなかったですね(笑)。
子どものころは、夢がふたつありました。
ひとつは、野球選手になりたかった。
「メジャーリーグで二塁手になるんだ」
と思ってました。
糸井 おー、二塁手。いいですねぇー。
ぼくも野球が好きなんです。
サンデル ああ、そうでしたか。
それで、もう少し大きくなると、
新しい夢ができました。
それは、メジャーリーグの監督になること。
糸井 ああ、なるほど。
二塁手から監督って、つながってる気がします。
サンデル そうそう、そうなんです。
糸井 二塁手って、いまのサンデルさんを
よく表してるような気がするなぁ。
サンデル え、そうですか。なぜでしょう。
糸井 軸になる存在なんですよね。
たとえば、ひとつのプレイで3つのアウトを取る、
「トリプルプレー」ってあるでしょう?
野球の記録のなかには、
ひとりのフィールドプレイヤーだけで
3つのアウトをとった例があるんですけど、
それって、二塁手が成立させてるんですよね。
その人がいると、いろんなことが成り立つ。
サンデル 私も?
糸井 そういう位置にいると思ったんです。
政治にも、哲学にも、経済学にも、
ぜんぶのところに影響を及ぼす場所にいて、
自分の重心が変わるごとに、
所属する場所が違ってるように見えたりする。
サンデル 「学者の世界でのトリプルプレー」
っていう感じですか(笑)。
糸井 (笑)
サンデル じつは、ほんとは、私、
セカンドじゃなくて
ショートになりたかったんです。
でも、身体が小さかったんですね。
肩も強くなかった。
肩が強くないと‥‥ショートにはちょっと、ね。
糸井 そうですね。
でも、もしもサンデルさんが肩が強くて
ショートを守るような人だったら、
いまの立場にいるんじゃなくて、
政治家になってたかもね。
サンデル ハハハハハ、そうですね、
いまの糸井さんのお話はとてもしっくりきます。
私の中にある二塁手の役割というのを、
すごく上手に表現していただいたと思います。
糸井 二塁手のお話を聞くまえから、
サンデルさんって、ぼくにとっては
そういう人に見えてたんですよ。
サンデル そうですか(笑)。
糸井 なんというか、二塁手って、
影響を及ぼす範囲が広いっていうのが
共通していますよね。
サンデルさんがいまやってらっしゃることも、
広いじゃないですか、範囲が。
サンデル ああ、そうですね。
糸井 たとえば、似たところだと、
大学教授っていうポジションも
あると思うんですけど、
いまのサンデルさんの範囲から比べたら
やっぱりどうしても、せまいですよね。
サンデル たしかに。
糸井 そういうふうに考えると、
二つ目の夢である監督というのも、
サンデルさんにぴったりですね。
やっぱり、範囲が広い。
サンデル ちなみに、監督になる夢については、
小さく、実現しました。
息子が少年野球チームに入っていて、
その監督を何年間かやってたんです。
糸井 へぇー、そうですか。
見てみたかったなぁ、その野球チーム。
サンデル (笑)
糸井 スタッフの方にうかがいましたけど、
ボストン・レッドソックスの
ファンなんですってね。
サンデル はい。残念ながら、いまは、
あんまり調子よくないんですけど。
糸井 ああ、そういえば、松坂が‥‥。
なんというか‥‥ゴメンね。
一同 (笑)
糸井 オレが謝るようなことじゃないんだけど(笑)。
ほら、去年は1年休んじゃったし。
サンデル いえ、もうじき戻ってきますし、
助けてくれるかもしれませんので。
糸井 あのね、松坂という投手は、高校時代、
ものすごいヒーローだったんですけど、
そのときのチームがすばらしかったんです。
聞いた話ですけど、チームのみんなが、
松坂を勝たせたいと思って試合してたんですって。
そういうふうに思わせる松坂もすごかったし、
まわりのチームメイトたちもすばらしかった。
ぼくは高校時代の彼のことを
とってもよく憶えているんですけど、
そういうことが、レッドソックスでも
起こるといいなぁと思うんです。
サンデル はい、そうなるといいですね。
期待してるんですよ、ほんと。
糸井 はい(笑)。
(つづきます)
2012-07-26-THU