朝比奈 |
日本建築は、使う素材を空間と
切り離して考えたらいかん。
人は、庭から入ってくる。
庭から縁側に入ってくるんや。
光かて、そうや。
日本の光は、縁側に入ってきて、
障子を通して家の中に入ってくる。
外も中も上も下も
一体なんですよ。
西洋建築は、ガラス窓や
コンクリートの塀で
中は中、庭は庭、遮断されとる。
日本建築はそうやない。曖昧や。
軒を通して風や光が入ってくる。
曖昧な空間、いわゆる境目。
日本建築は、全体のなかで
境目をどう出すかが鍵です。
そやから、ぼくがいちばん
大事にするのは「ひさし」なんや。
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ほぼ日 |
ひさし。
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朝比奈 |
人が入ってくるのは玄関。
それをいざなうのはひさしやん?
ひさしのない玄関、これは
どうかと思うわ。
ひさしがなかったら、
つばめも巣をつくれないでしょう。
いつも思うのは、ひさしの高さ、長さ、材料。
大事やなと思う。
ひさしがかっこいい家は違うと思うわ。
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ほぼ日 |
ふむ‥‥。
境目にひさしのような空間があると
余裕が感じられますね。
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朝比奈 |
そやねん。
なんでも余裕って大事やな。
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ほぼ日 |
そうですね。
木の手入れも、
余裕がないとできないですね。
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朝比奈 |
ああ、そらできへん、できへん。
どうでもええとこは、ぼくもある程度
どうでもええと思うけど。
余裕なかったらいつでも、
「ああ、もうええわ、どうでもええわ」
すぐになるやん。なあ?
どんなときも、余裕もたなあかん。
「もうちょっと、もうちょっと」という
余裕をもつ。
それが大事やとぼくは思う。
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ほぼ日 |
その「余裕」は、
三角屋さんの広い敷地に、
これだけの材料がある
ということにもヒントがあると思います。
ここまで素材があれば、要望に対しても
「では、これでいきましょうか」
という提案ができる。
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朝比奈 |
そうでないと、やっていかれへん。
あんな、すぐできるで。
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ほぼ日 |
三角屋さんは、やろうと思ったら、すぐできる。
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朝比奈 |
すぐできる。いやいや、
注文くれたら
すぐできる(笑)。
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ほぼ日 |
これだけ材料があるからこそ。
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朝比奈 |
あるから、すぐできる。
そらそやで。
ぼく‥‥何も値段は‥‥いや‥‥、
値段ってね、思ったことないよ。
儲かることはしたいけどもやね(笑)。
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ほぼ日 |
値段について、思ったことないんですか。
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朝比奈 |
思ったことない。
うちの建物に感動してくれたらええ。
2千万かかるとこも、
2百万でやったりすることかて、ある。
たとえば施主が、これから伸びようとする
若い子やったりするとね。
これからがんばってくれたらいい話やから。
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ほぼ日 |
‥‥そうなんですか。
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朝比奈 |
逆に言えば、こんだけここにある
材料みたいなもん、
ぼくはタダやと思うねん。
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ほぼ日 |
いやいや、そんなことないです。
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朝比奈 |
いや、ほんまに。
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ほぼ日 |
さきほどから、しばらく
朝比奈さんの動きを見させていただきましたが、
木を乾かして、お手入れして、並べ替えて、
見て回って、声聞いて‥‥、
もともとの原料費もかかっていますし、
そんな何年にもわたる手入れは、とんでもない、
素材はタダじゃないです。
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朝比奈 |
そんなん、なんでもあらへん。
こういう素材は適材適所で、
還元したらええと思ってる。
お金は出してくれる人がいたらそらいいけど、
要は、それを「どこに置いとくか」という
ことやと思うねん。
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ほぼ日 |
置いておく場所の問題。
つまり‥‥値段というより
どう置くか、の問題。
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朝比奈 |
そうや。 |
(つづきます)
2012-09-21-FRI
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