読みかえす
「今日のダーリン」
2003/11/08
「なんか、生煮えの料理みたいだけど、
 こういうふうな、
 あきらかに未完成なんだけど、
 言い切ってみたい、
 というようなことを書くと、
 なんだか気持ちはいいです」
という感想を、darling自らが漏らしている、
このごろの「今日のダーリン」です。
このところ、書き方を変えているせいか、
変だけど、実は前から思っていたことが
話題になっていて、感想は増えていますよ。
今週掲載ぶんから、3日ぶんを、どうぞ!


11月4日

【うまいマグロになりたい】

「天然という建前で売られていた
 蓄養のマグロを見破った人がいて、
 大きなニュースがひとつできた。
 断言はできないけれど、
 たぶん、誰が食べてみても
 味のちがいはわかるのでは
 ないだろうかと思う。
 蓄養というのは、狭いところで
 エサをやって育てるわけだから、
 マグロの摂取した栄養としては
 問題ないくらいなのだ。
 しかし、そのマグロを
 『あんまりうまくない』と
 食べる人間の側は感じてしまうのだ。
 天然のマグロは、
 もっとエサをとるために
 苦労しているはずだ。
 止まったら死ぬというほど
 泳ぎまくるマグロが、自分の足で
 (いや、ヒレでというべきかな)
 稼いだエサを
 食べると「うまいマグロ」になる。
 
 不思議なものだなぁ。
 永田農法みたいなことが、
 大海でも行われているわけだ。

 人間を食べものじゃないから、
 『うまい人間』になるというのも
 ヘンだけれど、
 『味のある人間』になら、
 なってみたいものだ。
 エサをとるのに必死になって、
 自分の持ってる能力を
 ぜんぶ使って生きると、
 たぶん、『うまいマグロ』のような、
 『味のある人間』になるんだろうなぁ。
 
 持っている手足、
 胴体、内臓のすべて、頭、
 ぜんぶを使うようにして
 生きるということを、
 いまみたいな豊かな時代に、
 やりぬくってことは、
 たぶん相当に『不自然』に
 見えることなんだろうなぁ。
 女子バレーボールの選手たちを
 見ながら、書きました。
 いま、これがいちばんおもしろい」


11月6日

【必要なものは、必要悪】

「暴論に決まっているんだろうけれど、
 ふと、思ったんですよ。
 世の中には、必要とされるものと、
 必要ないとされるものとが
 ありますよね。
 ある人にとって必要でも、
 ある人にとって不必要
 ということもあるけれど、
 必要度の高いものほど、なんか‥‥
 『わるい』んじゃないかと。

 空気とか、太陽とか、
 水とかそういうものについては、
 誰でも必要だけれど、
 『わるい』ってことはないか‥‥?
 でも、ほんとうはそういうものも
 『わるい』と言いたいくらいの気持ち。

 逆にですね、
 ぜんぜん役に立たないものとか、
 あってもしょうがないものは
 『いい』んです。

 『純わるい』も
 『純いい』もないと思うので、
 何に比べたら、これはわるい、
 というような計り方しか
 できないんだけれど。
 こどもたちの三輪車に比べると、
 自転車はわるい。
 それに数倍して電車はわるい。
 電車に負けずに自動車はわるい。
 しかし、三輪車は、フーセンよりわるい。
 
 とにかく、必要とされちゃったら、
 それはもうわるい。
 必要なものは、
 ぜんぶ必要悪なんじゃないか。
 そんな気がするんです。

 今日は、ばくぜんとした、
 しょうもないことを
 書いてみたくて、書きました」


11月7日

【ものすごく目立つ人】

「この『今日のダーリン』を
 書く形式を変えたら、
 なんだか書く内容も
 変わってきているようだ。
 なんとなく、へんなことを
 書きたい気分になるらしい。
 それはそれでいいかと、
 飽きるまではこのスタイルで。

 信号待ちのタクシー。
 後部座席の窓から、公園を見ていた。
 ベンチに、あからさまに
 目立つ人が腰かけていたので、
 珍しくて、よくよく見てしまった。
 そしたら、そのあからさまに目立つ人が、
 こっちを見た。
 タクシーに乗っているぼくと、
 目が合った。
 そんな気がしただけなのかも
 知れないけれど。

 ちょっと『しまった!』と思った。
 怒って睨みつけているようで、
 少し怖かった。
 
 ものすごく目立つ人というのは、
 たいていは、ものすごく
 (自分を見る人を)見ている。
 
 こんど実験してみようと
 思ったのだけれど、
 街の、ものすごく目立たない人を、
 タクシーの後部座席から
 よく見てみるのだ。
 そういう場合、その
 『ものすごく目立たない人』は、
 『オレを見ているな!』と
 気付くのだろうか?
 たぶん、タクシーの後部座席から
 自分を見ている人など
 いないと思っているのではないか。

 今日も街のどこかに、
 ものすごく目立つ人が歩いていて、
 『みんなが自分を見ているんじゃないか』
 と、周囲に注意をはらっている。
 同じ街を、
 『絶対に誰も自分を見てやしない』
 ということさえ思うこともなく、
 歩いている人がいる。
 いろんな人がいるのよねー‥‥、と」

2003-11-08-SAT


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