糸井重里(darling)が毎日書く
「今日のダーリン」というコラムは、
実はすでに、5年半以上も、毎日毎日、
「ほぼ日」に掲載されつづけているんです。
このコーナーは、その週に書かれた
「今日のダーリン」から、数日ぶんを、
忙しくて読めなかった方や、
もういちど読みたいと思っている方に、
再び、ご紹介するためにあるんですよ。
それでは、今週の3日ぶんを、どうぞ。
最近の「ほぼ日」から生まれた本、
『言いまつがい』と『オトナ語の謎』に
触れている文章を、おとどけいたします。
【まつがえるという快感】
「そのうちまた
怒る人もでてくるのかもしれないけれど、
『ほぼ日』で『言いまつがい』の
連載がはじまってから、乗組員たちの間で
『まちがい』のことを
『まつがい』と言うことが流行した。
そして、
『言いまつがい』の単行本が出てからは、
読者にまでその流行は伝染してきたようで、
言いまつがいのことを書いたメールには、
『部長のまつがいっぷりには‥‥』とか、
ふつうに『まつがい』ということばが
使われている。
『まつがい』とは『まちがい』の
まちがったカタチである、
ということは知っていながら、
遊んでいるわけだ。
この遊びの渦中にいる人なら
わかると思うのだけれど、
この『まつがい』ということばを
使うのって、
ちょっと気持ちがいいのだ。
たとえて言うなら、
ドロンコ遊びの快感、かもしれない。
汚しちゃいけない汚しちゃいけないと、
さんざん言われているこどもたちが、
泥だらけになって遊ぶのは、
なんとも解放された心持ちだろう。
『言いまつがい』と、
わざわざまちがった言い方をするのが
気持ちいいのも、日々、何かと
『まちがっちゃいけない
まちがっちゃいけない』と、
不自由な生活をしているから
なのかもしれない。
男は外に出たら七人の敵がいる、
というけれど、
そんなに敵に囲まれていたら、
ほんとうの力を発揮できないよなぁ。
親しい人たちの間でなら、
何をまちがってもいいと思うし、
うんこちんちんでもおならぷーでも、
言って大丈夫だよ。
(ただし、言いすぎないようにね)
『まつがいだって、ことばなんだ』
ということだ。
たまにはガキにもどって、
ドロンコ遊びをしましょうや」
【2月は、頭のなかが忙しい時期】
「いま現在の仕事をしながら、
この先のことをいろいろ考えています。
2月というのは、頭のなかが忙しい時期です。
おそらく、もうじき冬が終わるので、
そのすぐあとにくる春や夏、
さらにそのあとの
秋のことを準備したいからです。
いま考えてタネをまきはじめたら、
いろんな時期に、
いろんな場所で芽が出はじめて、
あちこちに花が咲いたり、
実がなったりする予定です。
なかには失敗もあるんでしょうねぇ、
つらいけど。
『ほぼ日』でやることには、
自慢じゃないけれど、
きちんとした事業計画がありません。
いつごろにいくらくらいの利益がでるか、
わからないような仕事ばかりを
思いついてしまいますので、
しょうがないんです。
ただ、
『おおよそ、
まるまる失敗するとどうなるか?』
ということだけは、計算しておきます。
リスクについての
覚悟だけ先にしておくわけです。
そのあとで、流れのなかから
ビジネスとして
何がどうできるかということを、
一所懸命に考えていきます。
たとえば、去年の
『智慧の実を食べよう』
のイベントなどについては、
あれで赤字をださなかったんですよ。
つまり、『講演』は
かなり予算をかけてやっても
エンターテインメント事業として
成功する可能性がある、とも言えますよね。
だから、『今年も、やれる』んです。
むろん、その準備もはじまっています」
【オトナ語を、使える人と使えない人】
「会社のエライ人をやっている
知りあいから、わざわざ
オトナ語を使った
メールがくるようになった。
これまでは、
ふつうの会話調だったはずなのに、
『オトナ語の謎。』を読んで、
影響を受けたらしい。
もともとおそらく
『勝手知ったる』日常語でしょうから、
とても流ちょうに使いこなしていて、
くやしいくらいです。
世の中の社会人には、
オトナ語を、使おうと思えば使える人と、
使おうと思っても
うまく使えない人がいるようです。
ぼく自身は、うまく使えないタイプなので、
オトナ語の取材を受けていても、
『たとえば、どんな?』とか訊ねられても、
すぐ詰まってしまって、
例が思いつかないのです。
いまだに、
『スキームって、なんだっけ?』などと、
小声で隣の人に
質問したりしていますからね。
『言いまつがい』のほうだったら、
おばあちゃん子だったし、
落語好きだから、体験的に、
けっこうたくさん
身に付いているんですがね。
『オトナ語、社員に憶えろとか
使えとか言うつもりはありませんが、
相手が使っていることばを
理解しないわけにはいかないので、
防衛的に知っておけ、
という方針でのぞむつもりです。
そういう意味では、
この本は参考書として売れますよ』
というようなご意見も聞けて、
うれしいかぎりです。
オトナ語を、
防衛的に知っておけ、新人諸君よ!
『言いまつがい』も、
教養として、ついでにな!」 |
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