読みかえす
「今日のダーリン」
2004/03/13
毎日更新中!
糸井重里(darling)の書いている
「今日のダーリン」のなかから、
今週は、3つを、もういちどおとどけ!
見逃したというかた、ぜひ読んでみてね。


3月7日

【アキ・カウリスマキ監督って、いいわ】

「ひさしぶりに
 レンタルビデオ屋に行ったカミさんが、
 アキ・カウリスマキ監督
 の新作を借りてきたので、そいつを観た。
 『過去のない男』
 というタイトルだった。
 あいかわらずの味で、
 ひと盛りあがりもしないのに、
 退屈せぬまま、最後まで観てしまった。

 このフィンランドの監督は、
 我が家では人気の人だ。
 夫婦とも、
 ほぼ全作品を観ている監督なんて、
 他にはひとりも
 いないのではないだろうか。
 最初に、なにげなく借りてきた
 『マッチ工場の少女』という作品が
 なんだか気に入っちゃって、
 そのとき以来、
 次々に追いかけ続けている。
 DVDのボックスセットまで
 持っているくらいだから、
 大ファンと思われてもかまわない。

 この監督の作る映画には、
 あんまりセリフがない。
 いい男もいい女も出てこない。
 晴れた空も、美しい海も、
 おしゃれな街も、なんにも。
 『ここだ!』と言いたくなるような
 感動のポイントもない。
 なのに、ずうっと目を離せないのだ。
 ハリウッド式の大作に
 なれてしまった目には、
 こんな映画ばかり作っていて、
 お客は入るのだろうかと
 心配になったりもするだろう。
 しかし、心配はないらしい。
 ある人の説では、
 彼は自分で映画館を経営しているので、
 上映場所には困らないのだ、
 ということだ。
 『ほぼ日』も、
 そのマネをしてはじめたのだった。
 いま、『アキ・カウリスマキ』で
 検索していたら、
 『あぁ哀愁のバルト海
  カウリスマキ監督の世界へ』という
 過去の旅行商品が見つかった。
 日本でのカウリスマキファンって、
 多いんだよねー。

 ぼくは、小津安二郎とか
 岩松了とかに共通するなにかを、
 このフィンランドの監督に
 感じているみたいです」


3月10日

【「嫌い」は「好き」のはじまり?】

「『嫌いかも』と思うときって、
 怪しいんです、自分の心が。
 人にはいろんなつきあいがありますが、
 最初から好きだと思って
 つきあいがはじまるなんてこと
 ばかりじゃないんですよね。

 テレビの画面に
 『クレージー・ケン・バンド』
 が映ってて、
 それを目にして、そう思ったんです。
 『クレイジー・ケン・バンドって、
  いいよー』という声が
 あちこちから聞こえてきた時期に、
 亀戸だったかの
 市民会館みたいなところでやった
 コンサートに行ったことがあるんです。
 そのときには、
 『おもしろいとは思うけど、嫌いかも』
 と、思ったんです。
 でも、自主制作みたいな
 CDを買ってあったので、
 それを聴いてみたら
 『あ、いいかも』と思うようになって、
 結局、いいんですよ、ほんとにいいんだ。

 18歳のころ、
 横尾忠則さんのポスターを見たときには、
 あんまり嫌な感じで、
 吐きそうになりました。
 なのに、夜中にまた見に行った、
 なんて出会いでした。

 矢野顕子のデビュー当時の
 渋谷公会堂でのコンサートも、
 『嫌いかも』と、は
 っきり思いましたっけ。
 それが、一方的には、最初の出会いです。

 外すんですよね、自分の心って。
 ほんとうにまっすぐ見たり
 味わったりできないことがある。
 素直に判断できることもあるんだけれど、
 そうでないことも、
 けっこういっぱいあるんです」


3月12日

【いま、自信を持っていない人へ】

「『darlingの自信のなかった
  時代のことを教えて』
 というようなメールをもらいます。
 それを書いている人は、
 自信がないのだそうです。
 むろん、ぼくも
 自信ない若い人でしたとも。
 いまだって自信なんかねぇよ、と、
 言いたい気持ちもあるのですが、
 それはそれでウソですね。
 いまは、自信ってものを
 意識したことないものねー。
 う〜む、なんでそのあたりが
 変わったんだろう?
 考えたことなかったなぁ。

 で、考えてみた。
 わかった。

 『自信ないとかあるとか、
  言ってられない』
 そういう経験をしているうちに、
 自分が変わったんです。
 自信ある、とか、自信ない、とか、
 ほんとに、
 どうでもいいことなんですよね。
 いい結果がだせたら、
 自信なかったとしてもオッケーだし、
 いくら自信があっても、
 結果がだせなきゃ稼げない。
 たぶん、自信も、
 ないよりあったほうが
 力を発揮できるとは思うのですよ。
 でも、意味ないんです、自信なんて。

 若いときには、結果を求められるような
 機会そのものを得られないから、
 自信ないだのあるだの、
 心配したり生意気になったり、
 余計なことに
 気持ちを使っちゃうんですよ。
 『機会』を逃さないで、
 体当たりでぶつかる。
 とにかく、
 何度でもくじ引きに参加する。
 自信の前に、
 機会をたくさんつくることですね。
 よろしいでしょうか、こんなお答えで」

2004-03-13-SAT


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