読みかえす
「今日のダーリン」
2004/03/20
読んでおかなければ、と思わせるものには、
事実や、仮説が、かならず含まれています。
事実や、仮説の裏側には、発見がある──。

今週の「今日のダーリン」の中から、
発見のあった日のものを、
3日ぶん、おとどけいたしますね。
読みのがした人、もう一度読みたい人は、
ちょっと、読んでみてくださいませ。


3月17日

【春は一度ずつ、ぜんぶちがっていた】

「すっかり日が長くなって、
 桜の枝も、すっかり
 花をつける準備ができているようだ。
 また、春がきたんだなぁと思う。
 この冬に生まれた赤ん坊たちには、
 はじめての春だ。
 これを最後の春として、
 遠くへ旅立つ人もいる。
 一度ずつの、ひとつずつの春を、
 ぼくは憶えてない。
 一度ずつ、ほんとうは、
 ぜんぶちがう春だったはずなのに、
 おんなじ春であるかのように迎え、
 なんのへんてつもない春のように感じ、
 やり過ごしてきた。
 もったいないことだなぁと、
 いまごろになって思う。

 今年も春を迎えられることを、
 うれしさとともに
 忘れないようにしているために、
 何か方法はあるだろうか。
 そうだ。今年なら、憶えている春にできる。
 ぼくは、我が家に秋にやってきた犬と、
 はじめての春を迎えるのだ。
 2004年の春というのは、
 生まれて8カ月の仔犬
 『ブイヨン』との、春なのだ。
 そういう春があったっけ、と、
 たぶん、いつまでも
 憶えていられることだろう。

 ただ、春の桜が咲きはじめると、
 ぼくとブイヨンの行く散歩コースには、
 おびただしい数の花見客がやってくるので
 ぼくらは、いつもの静かな散歩コースを
 追われてしまうことになるようだ。
 ま、それはそれで、思いでかもしれない。

 『ボウリング・フォー・コロンバイン』
 という映画で、アメリカという国は
 過剰に恐怖を煽り立てると、
 監督が説明している場面があった。
 日本だって、そうだ。
 恐怖はニュースとして商品になりやすい。
 しかし、恐怖以外のもののほうが、
 ずっとたっぷり、
 ぼくらの住む場所にはあるはずだと、
 ぼくは思う」


3月18日

【歌謡曲が聞きたいと思った日】

「誰かがどんなふうにか
 研究しているのだろうけれど、
 いつのまにか『歌謡曲』というものが
 なくなってしまって、
 なんだかサミシイ思いをしている。
 『歌謡曲』というものの定義も
 わからないままに、
 こういう言い方をするのも、
 どうかと思うんだけれどね。

 『つんく』という人の仕事のなかには、
 歌謡曲が生きているような気もするし、
 他にも何人か、歌謡曲エッセンスを
 持っている人はいるが、
 まるごと歌謡曲っていう感じの
 曲が聞こえてこない。
 『演歌』というジャンルについては、
 意識的に、残そうとしている人々が
 作り手にも聴き手にもいて、
 変化しながら残っているけど、
 歌謡曲がないんだよなぁ。

 ぼくの持論なんだけれど、
 日本の最後の歌謡曲は、
 『安全地帯』だったと思うのだ。
 玉置浩二が、
 ゴジラが放射能を吐くときみたいに、
 息とともに口から放射する音楽は、
 いやらしくて俗っぽくて美しかった。
 いまでも、歌謡曲成分がほしくなると
 聴くよ、安全地帯。
 日本人にしか作れない、
 歌えない歌だと思うなぁ。
 ある時代の、日本の民族音楽だね。
 あ、先日ちょっと触れた、
 『クレイジーケンバンド』のなかに、
 歌謡曲成分がいい感じで
 残っているとも言えるか!
 そうだ、そうだ」


3月19日

【やりたいことを、やるすごさ】

「主に西武ライオンズにいたことで
 知られていた前田勝宏投手が、
 中国のプロ野球リーグ
 『ゴールデンイーグルス』
 と正式契約を結んだのだそうだ。
 契約額は、
 年間で約16万円なのだという。
 いま、前田投手のお兄さんが
 つくっているサイトにいって
 詳しく知ったのだけれど、
 前田投手は、西武から
 ニューヨークヤンキースに移籍し、
 メジャーにはあがれないまま、
 日本の中日ドラゴンズに戻ってきて、
 その後台湾の興農牛というチームに
 入団し、翌年はイタリア、
 ボローニャのマリナーズというチームに。
 そして、今度は、
 中国で救援投手というわけだ。

 あの球の速い、
 金髪で生意気そうだった前田だよね。
 すごいなぁ、
 こうやってあらためて知ると。
 とにかく、投げたいんだろうなぁ。
 どういうチームに組み入れられても、
 とにかく投げたい。
 そういうことなんでしょうねぇ。

 『ほんとうにやりたいことができたら、
  お金のことなんてどうでもいいんです』
 と、気安く言う若い人もいるけれど、
 元ドラフト2位の投手が、
 年間16万円を
 受け入れるということを知ったら、
 なかなかそういうこと
 言えなくなっちゃうよねぇ。

 いままで、前田という投手のこと、
 よく知らないままだったけれど、
 注目してみたいなぁ。
 イタリアや中国に
 プロ野球リーグがあることすら、
 ぼくは知らなかったくらいだけれど。
 中国にいる野球ファンの方々、今年は、
 ぜひ、その後の前田投手のニュースなどを
 教えてください」

2004-03-20-SAT


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