GIRL
テレビ番組「ザ・スクープ」を
スクープする。

第3回 マイノリティである場を確保する

1月29日(土)または2月5日(土)の
23:30からテレビ朝日系列で放送される
「ザ・スクープ」をスクープしています。
 ひきつづき、制作サイドへのインタビューですっ。


(プロデューサーの長嶋さん)
----- 番組をつくってみた満足度は?
根岸 どうしても伝えたいことだけは
出せたと思ってますけど、
もっといいものがもっとできるはずだって
いうことからいいますと、思っていることの
1000分の1とか100分の1とかしか
伝えられないって言うじゃないですか。
そういうことなんじゃないですかね。

ほぼ日刊イトイ新聞をただインターネット上で
見ているだけではわからないことが、
糸井さんがほんとうのところは
どんなふうな思いがいちばん心の底のところに
あるのかっていうことを、
糸井さんの肉声と表情とか
そのときの空気感を伝えられるってことは
やっぱりテレビだからできることだと
思うんですよ。

それを見てまたほぼ日を見ると
ほぼ日全体像がくっきりとしてくると思うし、
ま、そうなってくれたらいいな、それで、
それが「余計なことをしたな」って
糸井さんに思われなければいいな、
って願うばかりですけどね。
ほぼ日をただ見てるだけのときとは違う
もうひとつの糸井さんっていうものの顔が
見えるような気がわたしはしています。
だってじぶんでつなぎながら
「糸井さんいいこと言うよ」
とか思いながらやってて。
はげましたりとかするし。
長嶋 まあ、でも、ぼく個人的に言えば
インターネットに非常にネガティブな
人間なんですね。
まあ番組はある15分の枠のなかでは
非常にいい出来になったとは思いますよ。
つまり鳥越さんっていうまあ
ぼくとおなじような、
ホームページに対して非常にネガティブな
気持ちを持ってるとか、
その糸井さんと話してるときを見て、
特にやっぱりその、
情報とか表現の質の問題っていうことが
これからすごく大きくなっていくわけじゃない。

つまり、「無駄なおしゃべり」って言ったときに
じゃあ無駄なことと大事なことっていうのはそこで
選別されているわけじゃない。
だけど、彼が糸井さんと話していくことによって
実はむだなことのなかにこれから大事なとことかね、
きらめくようなこととかが、
入っているんだっていうことを
逆にわかっているわけよ。
それはすごくいいことだと思うんでね。
ジャーナリズム、特に彼は新聞記者でもあり、
ジャーナリズムのメジャーの代表選手なわけでしょう。
で、片方は非常にマイノリティなメディアを
一生懸命立ちあげようとしてて、で、
そのメディアの側が、じゃあメジャーと思っている
その報道の質とか表現の質とかを
考えなおしているわけ。
最終的には参加しちゃうわけでしょ? 鳥越さんも。
要するに言ってみれば、
朝日新聞の主筆みたいな感じのひとが
そこに書くわけでしょ? 
   
で、もしかしたらそのことのほうが
一生懸命鳥越さんいまやってるかもしれないわけだよね? 
それはすばらしいことで、それが番組に出たわけだから、
100点とは言わないまでも、まあねらいどおりっていう。
そのへんのこと、特に鳥越さんの糸井さんと
会話するなかでのある推移とかを
もうちょっと時間的余裕があれば
もっと克明に描けて、見るひとも納得感のいくというか、
そういうものにできたと思うけど、
いちおうの成果は上がっているわけという感じで、
テレ朝のプロデューサーなんかも
「OK!」っていう感じだと思うけど(笑)。

ただぼくが個人的に糸井さんに対して、
まあ次の番組のこともあるけど、
もうちょっとこう知りたいのは、
つまりあなたたちいろんなことを
試していると思うんだよね、あそこの場でね。
その試していることのある種のビジョンというか、
たぶんあるんだろうというふうに思っているんだけど、
そのあたりももうちょっと突っ込んで
きいてみたいという感じですよね。
番組ではありますけど、ぼくは個人的にはすごく、
6、7年前に「ガロ」っていう雑誌の
ヒストリーみたいな番組をつくったときに、
そのときに糸井さんに
出演をお願いしてたんですけれど、
そのときに断られて「くそー」とか思ったんだけど(笑)。
根岸 何を吐露してるんですか(笑)。
長嶋 って言うかさ、結局ね、
ああいうのが必要なんですよ。
マイノリティというものがね。
何か文化がメジャーとして定着していくときに、
必ずマイノリティとしてそれを発表する場なり、
マイノリティとして存在していることを
確保しなければいけないわけ。
ところがそれがだんだんこう時代もメジャーになって、
メジャー志向になっていくとさ、そうすると力って
どこかに一元化していくわけでしょ? 方向が。
それがほんとうはおもしろくないっと思うから
いろんなマイノリティが出てくるわけですよね?
そういうのの実験の場とかさ、
ちゃんとそういうマイノリティであることを
確保する場としてね、彼は一生懸命やっていると思う。
   
とりあえずそれが確保されないと、
ほぼ日っていう媒体が明日なくなっちゃうと
そこに書いてきたひとはじぶんたちの意欲とか
そういうものを含めて削がれるでしょ? 
まずその場を確保しなければいけないという
切実感がすごくある。それからいっこ突きぬけて
何をするかっていうのは個々が考える問題で、
そこは糸井さんはある種場を提供しているんだと
思うんですよ。だからあの、もうちょっとすると、
たぶんインターネットの世界にも、
インターネットの世界内のある種の
メジャーとかマイナーとかいうのが、
あるいはもうちょっと言い方をかえると、
パブリックっていうこととプライベートみたいなのが
出てくると思う。今のインターネットが
つまんないって言われているところも
まあ、あのパブリックな意識を持っていない、と。
   
つまり条件がある種削ぎ落とされたり、
ある発表の場に向けて読み手を意識して書くとか
いうことには、まだなってないと思う。
だから多くのホームページが墓場みたいに
なっているのであって、だけどそのなかで
糸井さんみたいに今までパブリックを相手にしてきた、
突出したことばに意識を持っているひとが
現れてこういうことをはじめると、それがだんだん、
ここに書いていくことが公共性を持ちうるというか、
お客さんに対しての
ある種のパブリックになっていくと思う。

もっとすごい、たぶんぼくが思うには、
糸井さんにはもうしわけないけども、
糸井さんじゃないひとがある種
インターネット界のパブリックの
ヘゲモニーみたいなものをつかんでいくと思う。
そういうことの割と試金石みたいなことを
意識的にすごくやってるんじゃないかなと思う。
根岸 なんで糸井さんじゃないひとが
つかんでいくんですか?
長嶋 いや、だからもう、インターネットのなかで育った、
そのメディアのことが身体感覚としてわかっていて、
そこにどういうかたちで表現なり言語を
発することができるかということを、
わかっている人間が。
根岸 技術をいっしょに持ってたりね、
何かやりたいっていったときに
これはこうやってやれば
すぐだっていうスピードも含めてね。
長嶋 ダライ・ラマのつぎのひとみたいにね、
そういうひとがどこかで。
根岸 カルマパ?
長嶋 そういうひとがさ、どっかでやってるんだよ。
それか、そのインターネットからの政治思想とかを
このメディアを通じて
文化革命みたいなのを起こしたりするんだよ。
それもおもしろいでしょ?
鈴木 そういうひとが出てきたほうが
おもしろいかもしれないですね。
長嶋 糸井さんはそういうののパトロンじゃないけど、
そういう場をとりあえず確保しようと
思ってるんじゃないかな。


(つづく)

2000-01-19-WED

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