GIRL
テレビ番組「ザ・スクープ」を
スクープする。

第4回 白土三平であればいいと思うんです

1月29日(土)または2月5日(土)の
23:30からテレビ朝日系列で放送される
「ザ・スクープ」をスクープしています。
 ひきつづき、制作サイドへのインタビューですっ。


(ディレクターの根岸さん)
鈴木 糸井さんがお金で買えることは
やらなくていいって言ってたんですよね。
あたし、ずっとその言葉が気になってて、
そんなこと言ってもお金が絡まないと
ビジネスにならないしなあ、って思ってたんですよ。
でも、お金で買えなくてお金よりもすごいことって
何かなーってまず単純に考えたとき、
ものすごい数のひとに読まれるってことかな、
と思ったんですよ。そしたら今単純に発想したときに
「読まないだろうな」
みたいな世代のひとたちがいますよね、
例えば専業主婦のひととか、
家にパソコンないんじゃないかなあとか。
あとはそれこそ50代くらいのひとで
もうパソコンに触るのやだな、とか。
   
あたしは糸井さんがそういうひとたちを
どうやって開拓していくかに興味があるの、これから。
糸井さん自身もあまり
パソコンが詳しくないっていうひとが、
これからどうやってそういうひとたちを開拓していって、
ほんとの毎日の新聞並みに読まれるものを
もしつくったら、それはたぶん、
長嶋の言ったような新しいひとが出てきても、
糸井さんのやったっていうことは
ものすごく功績として残るんじゃないかなと。
長嶋 何かおれはね、ガロとむすびつけて言うと、
長井さんっていう編集長がいてね、ガロにね。
それで、南伸坊さんが2代目の編集長で、
南さんが編集者時代にあるときから
原稿料がまったく払えない状態になったよね? 
で、原稿料をもう払えませんっていうことを
誌上に発表するわけですよ。そのときからもう
ガロは商業誌としての命がもうないわけだけど、
でもそのそれだからこそ、つまり原稿料を書かないから
自由にやらせてくれっていうところが
まああるわけじゃない? 
それに対して長井さんって編集長が
なかなか大人物だからさ、
「ま、いいじゃないか」って。
なんかおもしろければいいじゃないか、って。
じぶんのおもしろいっていうふうに感じる感覚を
どんどんゆるくしていくわけだよね? 
つまり、じぶんがあまりにもわからないって
いうことをおもしろがったりとか、そういうなんか、
じぶんのなかのおもしろい概念みたいなのを
どんどん取りはずして。結局はいまのサブカルチャーを
背負ってるひとたちってみんなそうだよ。
結局そこで培われたことって大きいよね。
そのときに、じゃあなぜ原稿料ただなのに
書くのかっていうのが問題なんだよ。なぜ?
それは白土三平が描いてたからなんだよ。
根岸 結論はやいですねー。
長嶋 白土三平が『カムイ伝』を描いてる、
その雑誌だったからみんな若手たちは描く。
白土さんだったり水木(しげる)さんが
描いてるから描く、原稿料ただでも。だから、
糸井さんは白土三平であればいいと思うんですよ。
で、白土さんが書いたりしてるからっていうことで、
白土さんのようなひとばっかりじゃないでしょ?って、
それに対する、白土さんを馬鹿にしたような
水木さんが描くわけでしょ? 
で、そんなのどうでもいいっていうような
つげさんとか、つげさんはまあ
水木さんの弟子だったわけだから、で、
そういうひとたちが出てくると、
その3派が、白土ファンとか水木ファンとか
つげファンがいるわけじゃない? 
それがだんだんふくらんでいくでしょ?
そこに描くひとたちも来るわけだから。
   
それでいいんだと思うんですよ、
基本的にはね。鳥越さんが入ってきて、
ジャーナリズムに興味のあるひとが入ってきて、とか。
だけど、いずれ問題になるのは
ガロの行き着いたところで、
経済的な問題っていうのがあるわけですね。
どっかでそれがビジネスみたいになっていかないと、
やっぱりその思いみたいなのがさ、
人間の意識みたいなのが意欲みたいなものが
まあ白土さんが連載をやめて10年くらいすると
経済危機の状況になってきたからね。
そのへんがちょっとほぼ日は、
つまりこれを一生懸命やろうとすればするほど
糸井さん的には経済的には
苦しくなってくるわけでしょ? 
   
どっかでこう……ある種フリーウェアであるって
いうことはね、まあインターネットって
もともとそうですけど、ある種のこう、
刺激なり情報なりをみんなで共有しようよって
いうところからはじまったメディアだと思うから、
そのあたりでどこまでそのへん当初の理想を
行けるのか、っていう。
根岸 ずっとやせがまんって言ってましたよね、じぶんでね。
なんか、あといろいろ話してるなかで、
糸井さんが、経済的にやっていこうと思えば
やっていける道はいくつもある、って。
私たちでも考えればいくつもあるわけですよね。
バナー広告入れれば済む話だ、とか、でも、
「それやりたくないんだよ」
って糸井さん言ってたんですよ。
糸井さんほどのひとがそういうことを
ちょっとうれしそうに言うっていうところが、
とってもうれしかったんですよ。
これわたしのとらえかたが甘いかもしれないけど、
すごいピュアだと思ったんです。
1流のひとって、どっかですごくピュアな
ところを持ってて、そこに賭けたい、って
みんな思うじゃないですか。
だからあとは、なんでみんなノーギャラで
そんなに書いてくれたりするんでしょうかねえ、
みたいな話をしてたときに、
「夢のにおいじゃないっすかねー」
みたいなことを言ってたんですよ、糸井さんが。
「夢のにおいってちょっと!」
みたいなことを思ったんですけどね、
でもそれは半分冗談半分本気みたいなことばで、
やっぱりみんな、じぶんにできないじゃないけど
やってほしいっていう気持ちがどっかにたまってて、
それを糸井さんならやってくれるんじゃないかっていう、
それがまあ夢のにおいということだと思うんですけど。


(つづく)

2000-01-20-THU

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