GIRL
テレビ番組「ザ・スクープ」を
スクープする。

第6回 どこまで話がふくらむか

1月29日(土)または2月5日(土)の
23:30からテレビ朝日系列で放送される
「ザ・スクープ」をスクープしています。
 ひきつづき、制作サイドへのインタビューですっ。


長嶋 今すごく乗ってるひとたちは
乗ってるなりのことを言うけど、
いまひまなひとたちっているじゃない? 
あのひとは、あのときずいぶんやってたけど、
今どうしてんのかね、
みたいなひとっているじゃない?
そういうひとたちの考えてることっていうのも
ちょっとききたいし、そういうところにも
なんか眠ってるっていうそういう感じで。
今、何を考えているのかな?と思って。
中沢新一さんに会ったんですよ。
6月にね。中沢さんも「どうしてる?」って感じだよね?
どうしてるのかなあと思って電話して、
ユーミンをテーマにした番組で恋愛について
語ってもらったんだけど、すごいこと言うわけよ。
何ていうの、まあ主に癒しの問題とか
彼のオウムのときとかそういうことに関わって
いろいろ失墜したりしてるから。
そのへんのことを、ちゃんとわかって言うんですよ。
なぜ日本人はそういう風になっていったか、とか。
基本的には産業構造とかそういうもので、
ずっと右肩あがりでよりよくなるだろうって、
そういうことの無間地獄みたいなのがあるわけでしょ?
いつもコアのまわりでいつまでもまわっていて
たどり着けないから、というようなことを
ふきだすようにしておっしゃってて、
それでなんかNHKのひとたちに
「今中沢新一はおもしろいよ」
とか言ってたんですけど、やっぱりみんなこう、
ほんとはさ、そういうひとのほうが。
糸井さんだってものすごいいそがしいときに
「ガロの番組やるんですけど」とか言っても
いそがしくて出てくれないわけでしょ?
鈴木 根に持ってるんだ(笑)。
長嶋 要するに忙しいひとは客観的にちょっと
その時代を離れて、っていうのはしてない。
で、井上陽水さんっていうのはそれをすごく、
あのひとも天才的なひとだから、
意図的にじぶんのなかでバランスを置くわけ。
時代との距離とか何か大きなメジャーの流れとかが
来ると必ずそれに対して「ほんと?」っていくの。
「それ、ほんとなの?」って。
まあ対談の名手だと思うんだけど、
普通対談っていうのは、誰かいて、
あなたが何か意見を言ったとすると、
「うん、そうですね」とか言うでしょ? 日本人は。
で、結局それをふくらませたみたいにして言うじゃない。
それはまあおもしろくないわけでしょ? 
で、たとえば根岸がなんか言うとするじゃない。
そうすると井上陽水さんは
「ほんと?」って言うんですよ。
根岸 それじぶんが言われたんじゃないですか、
何でわたしを(笑)。
長嶋 (笑)
「それほんとに思ってるの?」とか言うわけだ。
そうすると「あれ?ほんとかなー?」と
こっちも思うわけじゃない。そういうのを、
なんていうかクリエイティブとは
ちょっと離れるかもしれないけど、
対談の組みあわせみたいなものを
やっぱり含めて、じゃあ糸井さんと
誰を組み合わせたらおもしろいの?みたいなさ。
もうちょっとやっぱりぼくら側も
考えなきゃいけないだろうし。
鈴木 じゃあ誰ですか?
長嶋 糸井さんが対談するというよりも、
糸井さんがこういう対談をプロデュースするとか。
ザ・スクープで言うと室井祐月を出そうとも
思ってたんだけど、例えば室井さんの前に行ったときに
鳥越さんはどういう質問を出しますか?っていうのを
投げ出してもいいと思うんですよ。
室井はこういうひとだよって言ったときに
鳥越さんなりに意味をとらえて、
じゃあこれだけはきいておこうとか、
じゃあ例えば高橋源一郎との夫婦関係はどうなの?
それだけはききたい、とか。
根岸 何でそこを(笑)。
長嶋 そういうのがあるわけでしょ? 
なんか結果が見えるような、
たとえばこのふたりが会ったら
「先日はありがとうございました」とか、
そういうのじゃあおもしろくない、どきどきしない。
え?何なの?とかふたりとも言って、おたがい
「俺ぜんぜん興味ないんだけど」
みたいなところからはじまって、
じゃあどこまで話がふくらむか、みたいな。
根岸 ふくらんだらそれがいちばんおもしろいですよね。
ふくらまなかったらおそろしいですけど(笑)。
長嶋 対談の相手だけじゃなくて、
対談の方法ひとつにしてもいろいろ考えられるでしょ?
つまり今はある時間枠の対談を撮るとしたら、
だいたいその何倍も時間をかけてカメラをまわしてる。
だけど、そこを変えてもいいよね?
例えば12分の対談を撮るにしても、
3時間もかけて凝縮させるというのが
今までのやりかただとしたら、
それを今度は撮影時間もほんとに12分だけで、
12分しかカメラをまわさないでやったらどう?とか。
待ったなしで12分しかない、ってなったら、
今度はしゃべるひとたちも変わってくるよね?
12分しかしゃべれないんだから、ここはこうききたい、
これだけは出しておきたい、そうやって、
いろいろ考えるでしょ? それでテイク1を
やったとしますよ。それでお互い
「もうちょっとよくできる。もう1回やらせてくれ」
ってなったとして、それで何回もやったとしますよね。
仮にそれで今までとおんなじくらい
撮影時間がかかったとしても、
内容とかやる意味は変わってくるよね。
カメラのアングルとかも、おたがいに正面から撮ってみて
テレビの前にいるひととしゃべっているように
そういうのってあなたでも考えられるじゃない。
たとえばあなたがテレビ見てるでしょ?
あ、ここのところで手をこう動かしてるかな、
とか、見たくなったりするじゃない?
相手がどうなっているのかというのを、
ある種自然な流れに向かってつくってきて、
ある形式ができてるわけ。いろいろな番組の。
対談だったら、しゃべるふたりが座っていて
カメラが少し離れたところにいたら、
カメラは斜(はす)から
ふたりの顔を写すことになるわけだよね。
だけれども、それってちょっとおもしろくないね、
ってなったときに、カメラが
それぞれのひとの顔の上に置いてあったらさ、
正面どうしで話してるように見えるでしょ?
そういうのって小津さんとかが
正面の切りかえしとかをするわけでしょ? 
それはカメラに向かってしゃべってるわけよ。
それ不自然だと思うんですけど、見るとさ、
その不自然さなりのおもしろさがある。すごく。

ぼくが対談を見てると
「誰に話しとるんだ」
って感じがするの。つまり対談がきらいなの。
はっきりこう、ディレクターがインタビューで
ききたいことがあるでしょ? 
なるべくカメラに近い立ち位置で
話してくれたほうが、伝わるわけですよ。
じゃあつぎは2カメを斜っかわにしたときに
ふたりがどういうふうにしゃべっているのかな、とか
そういうことにも興味あるんですよ。
そういうのいろんなのを考えたりするのは、
素人のひとのほうがよくわかったりするかもしれない。
「これ変だな」とか、
「何でここでカメラがきりかわるの?」とか。


(つづく)

2000-01-22-SAT

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