GIRL
テレビ番組「ザ・スクープ」を
スクープする。

第9回 予想もしない方向に

今回は「あのくさ、こればい!」のご主人こと
鳥越俊太郎さんにうかがった話をお送りしますっ。


↑こんな感じのダンディ系の
鳥越さんが東京糸井重里事務所(鼠穴)に
いらしたのは去年の12月はじめのことでした。

そのときのインタビューの様子が、
1月29日(土)の23:30からの
テレビ朝日系の「ザ・スクープ」で放送されます!
他にもほぼ日関係者の筆者のかたへのインタビューなど
出るかもしれないので、楽しみにしててくださいね。
それでは、インタビューをどうぞ。



----糸井重里との対談の感想をおねがいします。

ぼくは最初に「糸井さん」っていう
提案をきいたとき、まあ正直「なあに?」と。
「今さら何で糸井さんなの?」
というのがあったわけね。
ぼくらにとってみれば80年代からかなあ、
糸井さんっていうのはほんとに一世を風靡した
時代の寵児であったわけだから、
まああなたたちはよく知らないかもしれないですが、
ぼくらから見ればコピーライター、
さまざまなキャッチコピーを作って
一時代をリードしたひと、
そういうイメージが非常に強いわけですよ。
その後は時代とともにやっぱり
多少忘れさられていくところがありますよね?
時代が移り変わりますから。
当然今も同じような仕事を
されているとは思っていたけれども、
インターネットのホームページをやっておられる、
なんてことは、知らなかったんですよ。
だからディレクターから言われた時に正直
「え?何で今ごろ糸井さんなの?」
と、はっきりそう言ったんです。
そうしたら、
「いやあ、そうでもないんですよ、その糸井さんは
 今いちばん時代の先端で新しいんですよ」
と言われて、何?と。
それで半信半疑で行ったの、正直に言って。
行ってみればしかし、わかるだろうと思って。

ぼくは糸井さんはテレビなどでは
お見受けしていたけれど、会ったことはなかったので、
個人的に人間的な興味があったということも
あるんですけど、まあ同じような世界というか、
ちょっと違うけれど同じような
マスメディアの世界なんだろうから。
おもしろい話ができるかもしれないなあという、
半分期待しながら、でも半分はよくわかんない、
そういう感じで行ったわけですね。
で、もちろん、行く直前にホームページを
パソコンでディレクターにこんなのですよ、
と見せられてはいましたけどね。
それも詳しいことを聞いているわけではありません。
じゃあ、行って直接話を伺おう、と。
だから、正直に言うとそんなに
期待をしていた訳でもないし、
すごい興味を持っていた訳でもないですね。

----対談の途中で質問の方向を変えたりしたのですか?

基本的にインタビューっていうのは
事前に結果がわかってるインタビューっていうのは
おもしろくないわけですよね? 
こういう質問してこういう答えがかえってくるだろう、
着地点はこうだろうというインタビューは
基本的にぼくはあまりやりたくない。
ぼくは質問項目を事前に
あんまりたくさんつくったりしないんです。
そういうふうにしなければいけないときはあります。
非常に短時間でテレビでこことここを使いたいから
こういう質問をしてください、
そういうのはあるんです。
でも、今回の人物解体新書という企画は、
そういうことよりも、
ぼくと誰かの間で何が起きるか、
そういう一種の化学変化みたいなものの機会が
あるわけですよね。
単にぼくがインタビュアーで
ディレクターがこれとこれとこれっと言って
決められたものを順番にきいていくだけだったら、
それはぼくじゃなくてもいい。
だからインタビューっていうのはやっぱり、
こういう比喩がふさわしいかどうか知りませんけれども、
ジャズのインプロビゼーション、つまりアドリブですね、
ピアノを弾き出した時に、テーマのメロデイはある、
テーマの音はある。だけど弾き出したときに
どんどんどんどん行っちゃって
弾き手のノリでどんどん変わっていってしまう。
そういうのがやる側から言ってみると
インタビューのおもしろみなんですよ。

それで言うと糸井さんとの話も
どんどん何か予想もしない方向に
行っちゃったという気がしますね。
結果としてそのなかから
ぼくがほぼ日に書くというような
……ぼく予想もしてなかったからね、
こんなことは。ほんとうに。
零コンマ、いや、ゼロですよ、
まったく予想してなかった。
でもインタビューの中から出てきたわけで。
ただ糸井さんはひょっとしたら何かそういうたくらみを
持っていたのかもしれないけれど(笑)、
ぼくには全然なかったから、
最初言われたときにもなんか今ひとつ
ピンとこなかったんですけれど、
いろいろ話をしているうちに、
「糸井さんの考えていることってああそうか」と。
単なるお遊びでもないし、
単なるビジネスでもない。かなり深いなと。
相当深く今の状況、インターネットというメディアと
人間の営みというのについて考えてるなあ、
インタビューをしているうちにそれが伝わってきて、
私の心が騒いだわけですよ。
ぼくがインターネットを
多少やってたということもあるんだけども、
じゃあちょっとやってみようかという、
軽い気持ちでね。最初はね。

----どういう点できいてて「深い」と思ったんですか?

そうね、やっぱりインターネットの
ホームページっていろんな人が
いろいろやってるわけじゃない、
ホームページっていうのはどこでも。
いろんなかたちがあって、
例の東芝のケースみたいに
何百万件のアクセスがあったとかいうのもあるし、
実に沢山あるんだけれど、
もちろんそこにはビジネスの絡んでるのもあるし
絡んでないのもある。
やっぱりぼくがいちばんおもしろいなと思ったのは、
「ほぼ日」からはお金が発生していないわけですよね?
それでいてやっぱりみんながそこに集まってくる。
執筆するということで
加わってくるひともそうですし、
そこにアクセスをしてくる、
遊びにくるひとたちもそうですね。

世の中って基本的には
ビジネスでなりたっているじゃないですか。
売ると買う、という。
その「売ると買う」がないわけです。
今このホームページには。
何も関係してない、それでいて、
ちょっとしたそのへんのお遊びのレベルではなくて
多くのひとが関わってくる。
その魅力、惹きつける力ね、
そこんところをある程度糸井さんが見抜き、
人間の本性みたいなものを見据えた上で
この仕掛けをしてるんだろうなと感じたんです。
そこらへんの読みはなかなか深いなあと思いましたね。
これはわれわれ日本人が
インターネットという新しいメディアに対して
どのようなスタンスをとっていくのかということや
今後インターネットがどう展開していくのか
ちゃんとそれなりに考えてやっているんだろうな、と。
他にないわけですよ、こういう形のものは。
だからやっぱりこれだけの数のひとたちが
集まって来るのだろうな、と。
こういう形で今後はとてつもなく
大きくなっていくと思いますね、規模が。
こういうことはぼくはあまり知らなかったので、
こりゃあ、すごいや、そう思ったんですね。

インタビューのなかで
糸井さんも言ってたけど、
ビジネスを考えてないわけでもない。
でも今はやらない、と。
そのへんの我慢強さがやっぱりあって、
基本的には持ち出しじゃないですか? 現在はね。
それを金にしてないというところがね、
ここがなかなか……これ、ぼく金がからんでたら
やらなかったと思いますね。
だって例えばぼく原稿書いてギャラもらうと、
すごく何かこれしなくちゃいけないっていう
義務感が出て来るよね、
自分の本当に思ってることとか
書きたいこととかを書かないかもしれない。
やっぱり「お仕事だから」っていう感じに。
でもぼくが今「ほぼ日」に書いているのは
一番自分の好きなものだし、
糸井さんやあなたたちのやっていることに、
「すげえおもしろいことやってるな」
という気持ちで乗ってるものだから、
自分の好きなことを書かせてもらう。
だから誰かにこうしなければいけないと
いうようなこともない。
ただ、事実の間違いとかの様々なご指摘については
まちがってることもしょっちゅうあると思うから
それについてはきちっと対応したいと思うけれど、
でも自分で自己規制するというのはないわけですね。
その辺のところはやっぱり「ほぼ日」の醍醐味ですよね。

(つづく)

2000-01-25-TUE

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