GIRL
テレビ番組「ザ・スクープ」を
スクープする。

第10回 28歳

鼠穴こと糸井重里事務所に11月中旬に
頻繁に出入りをしてくれていたのが、
ディレクターの根岸さんというかたでした。




根岸さんは制作会社「テレコムスタッフ」入社5年目。
AD、企画、ミニ番組のディレクターなどを経ています。
昨年、20代の女性の転職を追う番組を
構成し取材してまとめたのが、
ドキュメンタリー番組にディレクターとして
関わったはじめてのもののようです。
ドキュメンタリー番組をやりたいという方向は
制作スタッフとしてのそれまでの経験から
浮かんできた、と言います。
そのあたりをうかがってみました。
以下は根岸さんの談話です。


[どうしたらおもしろくなれるのか]

自分がひとにしか興味がないというのがわかったので、
ひとの持っているエネルギーみたいなのが出るような
ドキュメンタリーがいいかなあ、と思っていて。
 
自分のこととかにはあんまり興味ないんです。
どうせたいした人間じゃないとか思ってるから。
だから社会のことしか興味がなくて、でも
かと言ってがつがつのドキュメンタリーを
やりたいわけでもないし・・・。
別に『何かをやりたい』というのでもなくて、
毎日もあんまりおもしろくないですよ、
生きてることもそんなにね。だから、
どうしたらおもしろくなれるかなあとか、
何をどう考えたらもっとおもしろいんだろう?
とか思うぐらいなんです。
『何がおもしろいのか』
『今はどういう時代なのか』
そういうようなことを考えつづけたくて、
そのためにこの職業を選んだんですけど。
 
実際に番組をつくってみると、
例えば取材前の予想とは
ぜんぜん違っていたみたいなことがあって
自分がどんどん壊れていく快感みたいなのがあるから、
それでやめられなくなって
今もこうやってつづいけているという状態です。

すべてを出していくよさがほぼ日にあるとしたら、
テレビ、特に15分という短い番組には、
ほんとに削ぎ落として削ぎ落としていくことで
何かそこで見えるものというのが・・・
糸井さんの言葉でいうのならそれこそ
『情報の水子』っていうんでしょうけれども、
想いの怨念のようなものがいっぱいあるんですよ。
どれくらいそれを含ませていけるかという難しさがある。
まだ駆け出しディレクターの力不足というのも手伝って、
そこがもどかしいところではあるけれども、
削ぎ落としていくことで生まれていく
力みたいなものはあると思います。
そう信じないとやってられないです。
全部出しちゃえばどうなるんだろうと思いますね。


[28歳という年齢]

私は実際にまだ28歳なわけで、
まだ具体的なことは見えっこないんです。
だから思っていることを出すために
つくるというのではなくて、
何かまだわからないから
投影しているようなところがあって。
何かをやることで出てくるという
気がするので、テーマは何でもいいんです。

28って半端な年なんですよね。
木村さんは22歳ですか?
いい時期ですよね。22歳とかだと、
例えば会社や上司に対しても
「あんなのは間違っているよ」
と批判を言っていてもまだ許されますよね。
だけど私の年くらいになってくると、
文句を言う側じゃなくて
何かをやらなきゃいけない側になってくる。
そこで何かをやることに対して
もうついていけないと思ったら転職してしまうし。
おもしろいと思うことをやりたいんですけれど
そこで同時にはじめて責任が出てくるんですよ。
責任のなかで何かを生み出さなければいけないときに
それに負けて転職していくひともいる。
だから28という年齢って微妙というか、
たたかっていかなくちゃいけないというか、
あんまりいい時期じゃないと思っているんですよ、
自分自身では。

糸井さんのホームページを見ているひとが
閉塞感みたいなのを感じているっていうのも、
やはり、やりたいことがやれていないというのは
結局自分の問題でしかないというところもあるんです。
責任みたいなことにおしつぶされないで
でも自分のいいと思う道を曲げていかないで
あきらめないでやっていきたいという気持ちが強いですね。
28歳になっていると、この社会がだめだとか
まちがっているとか思いながらも、
でもその社会の一員にもなっていて
何もしてこなかったんじゃないかという思いもあるんです。
そんなことを思わなければ楽なんだけども、思うんです。
勢いだけで行けなくもなってくるし、
いいものをつくれって言われてくるし、
そういう立場なんですね。

やっぱり40代からの年齢が一番おもしろいですよ。
実力もあって技術もあって、
「何やってもいいや」
と思っているひとに話をきくのが一番おもしろい。
私の今の時期は「やれればいいや」って思ってるだけで、
機会だけは逃さないでやりまっせ、というか。
友達とかとこういうことを話していると、
みんなも潜在的にそうやって思ってると感じるし、
思っていないひとのほうが少ないから、
それがはげみですね。

おもしろいものをつくりたいんです。テレビでも
「今おもしろい番組ない」って言うのは簡単ですよね。
でもおもしろいものつくりたいんです。
「みんなちゃんとやってるんですよ」っていうのは
そんなの何の足しにもなんないよって思いませんか? 
自分に対してもそう思います。
質のいいものを作れないんだったら
そんなの何の足しにもならないと思うし、
仕事してるひとってこういうのを
みんな思っているんじゃないかなと思います。


(次回は根岸さんとdarlingの対談になります)

2000-01-26-WED

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