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無人島に一冊だけ本を持って行くとしたら、なにを選ぶか。
さすがに悩むが、
やっぱり『味覚極楽』(子母澤寛・中公文庫)だと思う。
若いころから何度も読みかえしているのに、
ぜんぜん飽きないので。

新聞記者だった頃の著者が、
各界の著名人から食について聞き書きした読み物。
語り手の「子爵」「伯爵」「男爵夫人」などという
肩書きがたまらない。
彫刻家、高村光雲の話に出てくる
維新前後の江戸の夜鳴きそばなんか、
食べてみたくてみたくて泣きそうだ。

このうどんの回の語り手は、鎌倉の円覚寺管長。
お寺の「うどんに生醤油」もうまそうで、
もちろんやってみたが、
こちらは作家自身のうどんの食べ方として出てくる。
ほほえましいような細かいこだわりが書かれているが、
適当にまねてみた。

【材料】
・うどん
・豚肉
・大根
・昆布

昆布、醤油、酒、みりんでつけつゆを作る。
昆布は千切りにして入れっぱなし。
お湯に豚肉を入れ、うどんを入れ、煮る。
大根千切りは、ネギがわりの薬味のつもりだったけど、
あまり効果はなく、ネギがほしかった。

釜揚げうどんのように食べる。普通にうまい。
久しぶりにゆでて売っているうどん、
いわゆる玉うどんを食べた。
このごろ買うのは乾麺か冷凍うどんばかりになっていたが、
自分にとってのうどんはやっぱりこれだ。大事にしよう。

豚肉が残ったゆで汁につゆを入れ、
粉末かつおだしと大根を足して
さっと煮たお椀がうまかった。

2009-11-12-THU
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